文在寅大統領の「岩盤支持層」が見事に崩壊 そのワケは“ふてぶてしい嘘”の数々
12/8(火) 6:00配信
デイリー新潮
検事総長の更迭に失敗
嘘も見透かされ始めた文大統領
文在寅大統領にとって12月第1週は最も衝撃的な週だったかもしれない。推進した政策がことごとく失敗しながらも40%を維持してきた「岩盤支持層」がついに崩壊したのだ。
【写真】有名アスリートの「反日行動」 話題を呼んだ“姿”とは
検事総長と法務部長官の暗闘については、実質的に文政権の批判が展開されている
韓国世論調査機関「リアルメーター」が発表した11月30日から12月2日の世論調査によると、文大統領支持率は37・4%で「韓国ギャラップ」も39%になるなど、就任以来、初めて40%を下回った。
その原因の1つは、検察トップの人事を巡る混乱にある。
親文在寅派の秋美愛(チュ・ミエ)法務部長官が尹錫悦(ユン・ソギョル)検事総長の職務を停止する処分を下すと、尹錫悦総長は、不当だとして裁判所に仮処分を申請、裁判所は申請を受け入れ、尹総長は職務に復帰した。
日本では尹総長と彼を巡る事件はあまり知られていないが、尹総長は、文在寅大統領の弾劾が取り沙汰されるほど大きな権力不正を掘り起こした人物である。
文大統領の最側近である「タマネギ男」こと曺国(チョ・グク)元法務部長官や大統領府高官の職権乱用などを捜査し起訴したのだ。
尹総長が、文在寅政府が推進する“脱原子力”政策に絡む大統領府と行政部公務員の不正の捜査に乗り出すと、秋法務部長官は検事総長を排除した。
一方、裁判所が職務停止処分は不当だと判決を下すと、尹総長は次期大統領候補の支持率調査で1位に浮上したのだ。
自分たちに目障りな人物を排除しようとしたはずが、逆にオウンゴールを決めた格好となった文在寅大統領。
大統領という強大な権限を持っていながら、検事総長の人事で失敗した大統領の支持率暴落は当然の結果だ。
しかし、強固と見られた岩盤支持層が崩壊したきっかけは、文大統領の政策失敗や無能ではなく、大統領のふてぶてしい嘘の数々だった。
「文在寅に裏切りを感じた」
反文勢力の「親北勢力の国会掌握を力を合わせて阻止しよう」というスローガンが描かれている
誰かに助けられたら恩返しの努力をするのが世の常だが、文在寅大統領の場合はそうではないらしい。
文在寅大統領は、当時の野党「共に民主党」の代表だった2016年1月、総選挙を前に、政界で“キングメーカー”と呼ばれた金鍾仁(キム・ジョンイン)氏を迎え入れて大きな注目を浴びた。
金氏の選挙戦略と全国で続けた選挙遊説は「共に民主党」に勝利をもたらしたのだが、その金氏は現在、保守野党「国民の力」で、文大統領を激しく批判する側に回っている。
4年前には想像すらできないことだ。
金氏は保守野党への入党を決めた今年3月、回顧録を出版し「文大統領の嘘が自分の心を変えるようになった契機」と述べている。
金氏は回顧録で、2016年1月の総選挙前に文大統領が自身を3度も訪れ「危機に陥った党を助けてほしい」と入党を勧誘。
金氏は断ったが文大統領の「金氏が民主党の比例代表国会議員になれるようにする」と夜遅くまで頼んだ提案を受け入れて入党を決めたという。
金氏は、総選挙の勝利を文大統領にもたらしたが、党内の文在寅シンパからいじめに等しい冷遇と圧迫を受けた。
「約束は必ず守る」と言った当の文大統領は知らない素振りでいじめを放置し、金氏は離党を決断。
金氏は、「文在寅に裏切りを感じた。基本的な人間性に問題がある」「(大統領として)3年間まともにやったことは一つもなく、国を経営する能力もないことを露わにした政権は審判を受けて当然だ」と批判している。
自分たちだけが「正義」というプロパガンダ
文大統領が愛する北からの返事は「開城団地の爆破」という苛烈なものだった
文在寅大統領がついた嘘をきっかけにたもとをわかったのは、何も政治家だけではない。
韓国の有名な政治評論家で作家の陳重権(チン・ジュングォン)氏もその1人だ。
彼は李明博(イ・ミョンバク)・朴槿恵(パク・クネ)政権当時、政府や保守与党を批判する先頭に立っていた。
文在寅シンパの政治家や有名人と協調し、なかでも曺国前法務部長官とは親密だった。
そんな陳重権氏も最近は、自身のフェイスブックに文在寅政権と政権与党を批判する意見を一日も欠かさず掲載し、多数のメディアがこれを引用する事態となっている。
昨年12月まで、“文在寅大統領の国政運営を支持する、文在寅政権は絶対に失敗してはならない”など、熱烈な文在寅支持者だった陳氏が完全に距離をおいた理由も、文大統領一派のあやまちを認めず、自分たちだけが正義と叫ぶ“嘘”だった。
民主主義を叫び朴前大統領を糾弾していたころの文氏
今年1月、陳氏は、長年親交した曺国前法務部長官の態度に異議申し立てをした。
曺国前長官は文在寅政府が目論む“検察改革”に取り組んだが、その検察の捜査に、"私は正義、検察は悪"という態度で臨んでいると陳氏には映ったのだ。
陳氏は曺国前長官を「学生時代に民主主義運動を行った自分たちが崇高な改革と革命をしていると錯覚している」と痛烈に批判。
さらに、陳氏は今年5月に疑惑が浮上した正義記憶連帯と尹美香(ユン・ミヒャン)・共に民主党国会議員の慰安婦寄付金の流用事件にも言及。
各種疑惑に対する証拠と証言が続出しているにもかかわらず、尹美香氏が「保守野党と土着倭寇たちがこれまで私たちの正義である慰安婦支援活動を傷つけようとしている」と釈明を繰り返していることを非難した。
陳氏は「尹美香氏は国会議員になるため、慰安婦運動を隣国(日本)への憎悪を煽り立てる退行的民族主義扇動に悪用した」とも主張。
文在寅大統領の政治支持基盤の1つだった慰安婦団体は、ある者にとっては政治家になり、金儲けをする踏み台に過ぎなかったという疑念が増幅したわけだ。
陳氏は、文在寅政府と政権与党が「嘘で支持層を集めている」とまで“口撃”するのだった。
次期大統領選挙には出馬しないと宣言したが
文在寅大統領は盧武鉉(ノ・ムヒョン)政府の青瓦台(大統領府)秘書官に就任した2003年、「将来、政治を志すつもりはない」と記者会見で述べたが、9年後の2012年に国会議員総選挙に出馬して当選し、国会に乗り込んだ。
2012年の大統領選挙で朴槿恵候補に敗れると、記者会見で次期大統領選挙には出馬しないと宣言したが、その5年後の大統領選に再挑戦して当選した。
文大統領は、“崔順実ゲート事件”に関連し、朴槿恵前大統領が密かに大手企業のオーナーらを大統領府に呼んで崔順実氏の財団に資金を支援するよう要請した行為を“政経癒着”と非難した。
しかし、2018年9月、サムスンやLG、現代自動車、SKといった4大企業オーナーを平壤に同行させて北朝鮮への投資と支援を強要、11月23日にも大統領の側近である李仁栄(イ・インヨン)統一部長官が4大企業の役員を集めて南北経済協力を模索するなど、北朝鮮への経済的支援を促している。
数え切れない嘘で、岩のように堅い支持層からそっぽを向かれ始めた文大統領。
彼の性格を冷静に見つめれば、例えば、朴槿恵政府の時に結ばれた慰安婦合意を破棄した理由も明白である。
韓永(ハン・ヨン)
韓日関係、韓国政治·時事専門ライター
週刊新潮WEB取材班
2020年12月8日 掲載
12/8(火) 6:00配信
デイリー新潮
検事総長の更迭に失敗
嘘も見透かされ始めた文大統領
文在寅大統領にとって12月第1週は最も衝撃的な週だったかもしれない。推進した政策がことごとく失敗しながらも40%を維持してきた「岩盤支持層」がついに崩壊したのだ。
【写真】有名アスリートの「反日行動」 話題を呼んだ“姿”とは
検事総長と法務部長官の暗闘については、実質的に文政権の批判が展開されている
韓国世論調査機関「リアルメーター」が発表した11月30日から12月2日の世論調査によると、文大統領支持率は37・4%で「韓国ギャラップ」も39%になるなど、就任以来、初めて40%を下回った。
その原因の1つは、検察トップの人事を巡る混乱にある。
親文在寅派の秋美愛(チュ・ミエ)法務部長官が尹錫悦(ユン・ソギョル)検事総長の職務を停止する処分を下すと、尹錫悦総長は、不当だとして裁判所に仮処分を申請、裁判所は申請を受け入れ、尹総長は職務に復帰した。
日本では尹総長と彼を巡る事件はあまり知られていないが、尹総長は、文在寅大統領の弾劾が取り沙汰されるほど大きな権力不正を掘り起こした人物である。
文大統領の最側近である「タマネギ男」こと曺国(チョ・グク)元法務部長官や大統領府高官の職権乱用などを捜査し起訴したのだ。
尹総長が、文在寅政府が推進する“脱原子力”政策に絡む大統領府と行政部公務員の不正の捜査に乗り出すと、秋法務部長官は検事総長を排除した。
一方、裁判所が職務停止処分は不当だと判決を下すと、尹総長は次期大統領候補の支持率調査で1位に浮上したのだ。
自分たちに目障りな人物を排除しようとしたはずが、逆にオウンゴールを決めた格好となった文在寅大統領。
大統領という強大な権限を持っていながら、検事総長の人事で失敗した大統領の支持率暴落は当然の結果だ。
しかし、強固と見られた岩盤支持層が崩壊したきっかけは、文大統領の政策失敗や無能ではなく、大統領のふてぶてしい嘘の数々だった。
「文在寅に裏切りを感じた」
反文勢力の「親北勢力の国会掌握を力を合わせて阻止しよう」というスローガンが描かれている
誰かに助けられたら恩返しの努力をするのが世の常だが、文在寅大統領の場合はそうではないらしい。
文在寅大統領は、当時の野党「共に民主党」の代表だった2016年1月、総選挙を前に、政界で“キングメーカー”と呼ばれた金鍾仁(キム・ジョンイン)氏を迎え入れて大きな注目を浴びた。
金氏の選挙戦略と全国で続けた選挙遊説は「共に民主党」に勝利をもたらしたのだが、その金氏は現在、保守野党「国民の力」で、文大統領を激しく批判する側に回っている。
4年前には想像すらできないことだ。
金氏は保守野党への入党を決めた今年3月、回顧録を出版し「文大統領の嘘が自分の心を変えるようになった契機」と述べている。
金氏は回顧録で、2016年1月の総選挙前に文大統領が自身を3度も訪れ「危機に陥った党を助けてほしい」と入党を勧誘。
金氏は断ったが文大統領の「金氏が民主党の比例代表国会議員になれるようにする」と夜遅くまで頼んだ提案を受け入れて入党を決めたという。
金氏は、総選挙の勝利を文大統領にもたらしたが、党内の文在寅シンパからいじめに等しい冷遇と圧迫を受けた。
「約束は必ず守る」と言った当の文大統領は知らない素振りでいじめを放置し、金氏は離党を決断。
金氏は、「文在寅に裏切りを感じた。基本的な人間性に問題がある」「(大統領として)3年間まともにやったことは一つもなく、国を経営する能力もないことを露わにした政権は審判を受けて当然だ」と批判している。
自分たちだけが「正義」というプロパガンダ
文大統領が愛する北からの返事は「開城団地の爆破」という苛烈なものだった
文在寅大統領がついた嘘をきっかけにたもとをわかったのは、何も政治家だけではない。
韓国の有名な政治評論家で作家の陳重権(チン・ジュングォン)氏もその1人だ。
彼は李明博(イ・ミョンバク)・朴槿恵(パク・クネ)政権当時、政府や保守与党を批判する先頭に立っていた。
文在寅シンパの政治家や有名人と協調し、なかでも曺国前法務部長官とは親密だった。
そんな陳重権氏も最近は、自身のフェイスブックに文在寅政権と政権与党を批判する意見を一日も欠かさず掲載し、多数のメディアがこれを引用する事態となっている。
昨年12月まで、“文在寅大統領の国政運営を支持する、文在寅政権は絶対に失敗してはならない”など、熱烈な文在寅支持者だった陳氏が完全に距離をおいた理由も、文大統領一派のあやまちを認めず、自分たちだけが正義と叫ぶ“嘘”だった。
民主主義を叫び朴前大統領を糾弾していたころの文氏
今年1月、陳氏は、長年親交した曺国前法務部長官の態度に異議申し立てをした。
曺国前長官は文在寅政府が目論む“検察改革”に取り組んだが、その検察の捜査に、"私は正義、検察は悪"という態度で臨んでいると陳氏には映ったのだ。
陳氏は曺国前長官を「学生時代に民主主義運動を行った自分たちが崇高な改革と革命をしていると錯覚している」と痛烈に批判。
さらに、陳氏は今年5月に疑惑が浮上した正義記憶連帯と尹美香(ユン・ミヒャン)・共に民主党国会議員の慰安婦寄付金の流用事件にも言及。
各種疑惑に対する証拠と証言が続出しているにもかかわらず、尹美香氏が「保守野党と土着倭寇たちがこれまで私たちの正義である慰安婦支援活動を傷つけようとしている」と釈明を繰り返していることを非難した。
陳氏は「尹美香氏は国会議員になるため、慰安婦運動を隣国(日本)への憎悪を煽り立てる退行的民族主義扇動に悪用した」とも主張。
文在寅大統領の政治支持基盤の1つだった慰安婦団体は、ある者にとっては政治家になり、金儲けをする踏み台に過ぎなかったという疑念が増幅したわけだ。
陳氏は、文在寅政府と政権与党が「嘘で支持層を集めている」とまで“口撃”するのだった。
次期大統領選挙には出馬しないと宣言したが
文在寅大統領は盧武鉉(ノ・ムヒョン)政府の青瓦台(大統領府)秘書官に就任した2003年、「将来、政治を志すつもりはない」と記者会見で述べたが、9年後の2012年に国会議員総選挙に出馬して当選し、国会に乗り込んだ。
2012年の大統領選挙で朴槿恵候補に敗れると、記者会見で次期大統領選挙には出馬しないと宣言したが、その5年後の大統領選に再挑戦して当選した。
文大統領は、“崔順実ゲート事件”に関連し、朴槿恵前大統領が密かに大手企業のオーナーらを大統領府に呼んで崔順実氏の財団に資金を支援するよう要請した行為を“政経癒着”と非難した。
しかし、2018年9月、サムスンやLG、現代自動車、SKといった4大企業オーナーを平壤に同行させて北朝鮮への投資と支援を強要、11月23日にも大統領の側近である李仁栄(イ・インヨン)統一部長官が4大企業の役員を集めて南北経済協力を模索するなど、北朝鮮への経済的支援を促している。
数え切れない嘘で、岩のように堅い支持層からそっぽを向かれ始めた文大統領。
彼の性格を冷静に見つめれば、例えば、朴槿恵政府の時に結ばれた慰安婦合意を破棄した理由も明白である。
韓永(ハン・ヨン)
韓日関係、韓国政治·時事専門ライター
週刊新潮WEB取材班
2020年12月8日 掲載