衆院選投開票 朝毎「信頼回復になお課題」 「公約実現へ働き抜け」産経
2021/11/3 09:00井伊 重之
衆院選投開票をめぐる主な社説
【産経】
・安定勢力で成果を挙げよ/対中抑止に本腰を入れる時だ
【朝日】
・真価問われる「丁寧な政治」
【毎日】
・首相は謙虚な政権運営を
【読売】
・緊張感持ち政権の安定を図れ/難局乗り切る実行力が必要だ
【日経】
・政権は民意踏まえ課題を前に進めよ
【東京】
・民意の覚醒が変化促す(いずれも1日付)
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第49回衆院選は自民党が単独で絶対安定多数を獲得し、公明党との連立で岸田文雄首相が引き続き政権を担うことになった。
事前の予想を覆して自民党が善戦した一方、共産党との「閣外協力」を含めて有権者に政権交代を訴えた立憲民主党は議席を大きく減らした。
政権の批判票は、野党共闘と一線を画した日本維新の会に集まった。
今回の総選挙は、衆院解散から投開票までが17日間と戦後最短となった。
与野党とも分配政策に重点を置き、分配の原資となる成長の具体的な道筋をめぐる政策論争は深まらなかった。
産経は「岸田首相や自民党は選挙結果を真摯(しんし)に受け止めねばならない」と解散時よりも議席を減らした結果を踏まえつつ、「同時に政策遂行で足踏みしてはならないのはもちろんだ。
来年夏には参院選がある。公約実現へ働き抜くべきである」と政権運営に注文を付けた。
読売は「長期政権の緩みに反省を求め、緊張感のある政治を期待したい。
それが今回示された民意であろう」と論考した。
そのうえで「来夏には参院選が行われる。短命政権が繰り返されることがないよう、政治の安定を図るのが首相の最大の責務である」として政策課題に取り組むことを求めた。
これに対し、毎日は「就任から1カ月足らずの首相には実績がなく、『安倍・菅政治』を変えられるかが焦点だった。
安倍晋三政権からの9年間では、政治に対する国民の信頼が損なわれる事態が相次いだ」と指摘したうえで、「小手先の対応だけでは失われた政治への信頼が取り戻せないことを、首相は重く受け止めなければならない」と強調した。
朝日も「9年近く続いた安倍・菅政治の弊害に正面から向き合い、政治への信頼を回復する。
議論する国会を取り戻し、野党との建設的な対話を通じて、直面する内外の諸課題への処方箋を探る」
などを課題として挙げ、「首相が掲げる『丁寧で寛容な政治』の真価が問われるのは、これからである」と訴えた。
一方、産経は、大きく議席を減らした立民について「共産などと選挙協力した立民は振るわなかった。
基本政策の異なる共産との『閣外協力』路線は、政権への道をかえって閉ざす点にも気づくべきである」と釘(くぎ)を刺した。
どんなに自民党批判を展開しても、それだけで政権を担う能力を示したことにはならない。
読売も「政権批判票の受け皿とならなかったことを、野党第1党として深刻に受け止めねばなるまい」と批判したうえで、
「共産との協力には、民間労組の一部からも反発を招いた」
「参院選に向けて、共闘の路線を見直し、政権担当能力を示していくことが課題となろう」と論じた。
さらに毎日も「政治の現状に対する国民の不満が高まっているにもかかわらず、民意を受け止めきれなかった」と難じ、
「立憲は、共産との選挙協力の戦術を含め検証を迫られる」と強調した。
今後の課題として、新型コロナ対策と経済再生を挙げた
日経は「コロナ禍で困窮している人たちや企業への支援は重要だが、一律給付のようなばらまき政策は効果が不明だし、厳しい財政状況を考えればとるべき選択肢ではない」としたうえで、「経済成長と財政再建を果たしていく中長期のビジョンを打ち出すことが肝要だ」と主張した。
今回の総選挙では、消費税減税や所得税減税などばらまき政策がいつになく目立ったのも特徴だった。
だが、それらの公約が必ずしも投票行動を左右したわけではなく、「改革」を訴えた維新や国民民主党が一定の支持を獲得した。
与野党とももっと責任感を持って政策を論じ合う必要がある。(井伊重之)