2021年11月07日
- 韓国経済ニュース時評中国経済ニュース時評
韓国では、コロナ感染者が急増して社会問題になっているだけでない。
ディーゼル車に不可欠な尿素水の原料の尿素が、中国からの輸入が止まって大騒ぎである。
間もなく、バスの運行にも支障が出るという事態に発展している。
日本では、こういう問題は起こっていない。尿素水の原料であるアンモニアの8割を国産で賄っている結果だ。
韓国紙『東亞日報』(11月6日付)は、「路線バス、尿素水品薄で来週から運行に支障」と題する記事を掲載した。
ディーゼル車両の運行に必要な尿素水の品薄現象で、直ちに来週初めから一部の地域では「庶民の足」であるバス運行に支障を来たすものとみられる。
宅配などの物流業界でも、来週からは運休する貨物車が登場するものと予想している。
尿素水事態は物流大乱を超え、建設現場や農家、廃棄物回収などへと広がり、日常生活全般を脅かすだろうという危機感も高まっている。
(1)「東亜(トンア)日報が5日、全国バス運送事業組合連合会の全国路線バスの尿素水の在庫現状を入手して分析した結果、全国4万5024台の路線バス(市内外の農漁村高速バス)のうち34.8%に必要な尿素水の在庫は、年末になれば底を打つ。
京畿道(キョンギド)と全羅北道(チョンラブクド)は5日基準で、在庫が3日分しか残っていないバス会社もあり、直ちにバスの運行に支障を来たすものと見られる。
特に、農漁村、僻地に投入される農漁村バスの尿素水使用の割合は77.2%で大きく、バスが唯一の公共交通手段である地域では、市民の足が奪われる恐れもあるという懸念が出ている」
地方での尿素水不足が深刻である。農漁村ではバスが唯一の公共交通手段だけに、尿素水不足に見舞われれば即、運行中止の危機に見舞われる。
(2)「トラック運転手らは、尿素水を1リットルでも多く手に入れようと必死になっており、ガソリンスタンド周辺では、各貨物車が尿素水を入れるため、長蛇の列を作り、周辺道路では激しい交通混雑が起きている。
特に宅配車や小型貨物車を運行する個人事業者は、「直ちに仕事ができない」と焦っている状況だ。
大統領府は5日、尿素水需給の安定に向け、大統領府内の関連秘書官室が共同で参加するタスクフォース(TF)を立ち上げ、同日から一日非常点検体制で運営していくことにした。
安日煥(アン・イルファン)経済首席がTFチーム長で、政策室および国家安保室秘書官らがチーム員として参加する。
産業通商資源部は素材・部品・装備(素部装)需給対応支援センターを通じ、尿素輸入業界の輸入契約の現状と具体的な遅れの理由に関する資料を収集し、中国に改善事項を要請する予定だ」
トラック運転手らは、尿素水がなければディーゼル車を動かせず死活問題になる。
ガソリンスタンド周辺は、尿素水を入れるために大渋滞に陥っているという。
政府も対策に動き出しているが、妙案はあるわけでない。
輸入先が中国であるだけに、顔色をうかがっているとメディアは批判している。
『朝鮮日報』(11月5日付)は、「韓国で尿素水品薄騒動、中国の顔色ばかりうかがう政府」と題する記事を掲載した。
(3)「中国の輸出規制に端を発する尿素水の品薄現象で混乱が拡大している。
尿素水の原料である尿素の97%を中国産に依存しているため、中国が尿素輸出を中断したことで、ディーゼル乗用車133万台、貨物車55万台の計216万台が走れなくなる危機に直面したのだ。
混乱が長期化すれば、宅配、貨物トラックだけでなく、消防車、救急車まで運転できなくなり、物流と公共セーフティーネット全体がまひしかねない懸念が高まっている」
尿素水不足は、9月15日に中国が突然、尿素の輸出を禁止したことで発生した。
中国国内の石炭不足で尿素生産が急減し、価格が高騰したため、輸出を規制し価格安定を図ったものだ。
措置を受け、中国国内では尿素価格が安定に向かったが、韓国が打撃を受けることになった。
韓国のネットは、日本の半導体素材輸出手続き規制強化で、あれだけの「反日運動」を行った。
中国の尿素輸出禁止に対しては、「反中運動」をしないで、ただ「困った,困った」の連発である。余りにも対応が異なるという政府批判も出ている。
(4)「10リットルが9000~1万ウォンだった韓国の尿素水販売価格は最近10万ウォンを超えた。
尿素水10リットルで乗用車なら8000~1万キロを走ることができるが、大型トラックは300~400キロしか走れないため、供給不足による価格高騰が深刻化している。
地方自治体も対応に追われている。
ソウル市は最近管内の消防署に尿素水を使う非出動車両の運行を中止するよう命じ、ソウル地域のガソリンスタンドには尿素水の優先供給を求めた。
緊急状況で最も早く動かなければならない消防車、救急車まで止まりかねない状況に直面した格好だ」
韓国国内での尿素水価格は、10倍にも跳ね上がっている。
価格急騰は、品不足を反映しているので消防車や救急車まで、止まりかねないという深刻な事態である。
韓国が尿素・マグネシウム・希土類など必須原材料の需給難に直面しているのは、中国に対する輸入依存度が高すぎるためだ、と指摘されている。
希土類を原料とする永久磁石は86.2%、水酸化リチウムは83.5%を中国に頼っている。
韓国貿易協会が国内輸入品1万2586品目を分析したところ、中国の比率が80%以上の品目は1850品目に達したという。
米国(503品目)、日本(438品目)、ドイツ(121品目)、イタリア(108品目)を大幅に上回った。
以上は,『朝鮮日報』(11月6日付)が報じた。
文政権は、「脱日本」を掲げて気勢を上げた。
これでは、「脱中国」も叫ばなければならない状態である。
こういう尿素水問題が起って初めて、日本の方がはるかに実損のない方法であったかを知ったであろう。
日本は、輸出禁止でなく「輸出手続き規制」であった。
現実に、韓国の必要とする半導体3素材は全量、輸出していたのだ。
韓国経済は「ウォン安&株安」のダブルパンチ
8月31日、規格財政部が来年の国家債務は約101兆円と、初の100兆円を突破する見通しだと発表した。国内総生産(GDP)に対する国家債務比率は50.2%でこちらも初めて50%を越え、2017年に約62兆円であった国家債務は文在寅政権発足後5年間で約39兆円も増加した。韓国銀行は8月26日の金融通貨委員会(以下、委員会)で政策金利を2年9か月ぶりに変更。コロナ禍でアジア主要国初の利上げに踏み切った。続けて10月12日の委員会では金利は据え置きとしたものの、インフレ高進や家計債務の拡大に対処するため、同委員会は11月の追加利上げまでも示唆している。
米国では財の消費が鈍化しているが、欧州と新興国の財貨消費回復傾向は昨年ペントアップ需要(景気後退期に購買活動を一時的に控えていた消費者の需要が、景気回復期に一気に表面化する現象)と経済活動再開以降の景気回復を考慮すれば当分続く可能性が高い。韓国の輸出も今年第四四半期には前年同期比15%前後、来年も7%前後を記録すると分析しているが、韓国経済がそのような回復シナリオに乗るかどうかはいまだ不透明だ。
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そもそも、今回のウォン安は総額33兆円の負債を抱える中国不動産大手『恒大集団』の資金繰りに対する不安や、中国の電力不足による工場稼働中断が影響している。10月12日には国際原油価格が2014年11月以降初めて1バレル80ドル台を記録したことも大きな要因となっている。これら問題は韓国で対処できるものではなく、当該国家でも改善が難しい。
今年初めに825兆ウォン台にまで高騰したサムスングループ株の時価総額は680兆ウォン台にまで下落、外国人投資家による売り攻勢も強まっている。外国投資家による売却は、2008年の世界的金融危機よりも強まっており、売り越しはサムスン電子に集中しているという。これについて未来アセット証券は「今年初めから世界景気がピークアウトしたという見方が出始めた。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/88416?imp=0
天然ガスや石炭、原油などエネルギー価格の上昇で世界的にインフレ懸念が高まっている。外国為替市場では米金利の上昇観測を背景にウォンが売りこまれる場面がみられる。アジア通貨市場の中でも、円と並んで米ドルに対するウォンの為替レートの下落幅は大きい。その状況下、韓国の中央銀行である韓国銀行は、11月の追加利上げの可能性に加えて、為替介入を行う考えを示している。
それは、ウォン安に対する韓国銀行の危機感の高まりを意味する。ウォン安が輸入物価を上昇させインフレが一段と進行し、韓国の経済にマイナスの影響が及ぶとの懸念がある。それに加えて、韓国経済が慢性的なドル不足を抱えてきたことも、韓国銀行がウォン安への危機感を強める要因と言える。本来、家計の債務残高が増加する中で韓国銀行は慎重に金融政策を運営したいが、韓国銀行にとって、そのゆとりはなくなりつつある。
米中経済の減速懸念が高まる中、韓国は物価が上昇すると同時に、景気が減速するという経済環境を迎えている。