ICUROK!!

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父の代わりです

2022年12月31日 15時51分05秒 | 映画

恒例の映画10選といいつつ結果がこれで良いのか!?
というわけで、今年はあまりにも時間がないので開き直ってサクッといきます!

『トップガン マーヴェリック』
絶対に面白い映画を見せるからな!という制作陣の気概を感じる堂々のオープニングからキメ画尽くしで駆け抜ける131分。サブスク配信サービスが充実している昨今、やはり映画は映画館の大きいスクリーン&大音響で観てこそだと改めておもわせる大傑作。
ヴァル・キルマーのあの形での出演におトムと一緒に涙し、ルースターの「父の代わりです」で感極まり、最後のトニー・スコットに捧げる文言でハンカチが涙と鼻水まみれでグショグショになってしまった。文句なしの今年ベスト映画である。

『トップガン マーヴェリック』
なので、二回目観に行ったわけなのだが、二回目は既に冒頭から涙を流し始める情緒不安定っぷり。
実はトップガンって個人的に一作目はまったく思い入れがなく、映画としてそこまで面白くないとすらおもっていたのだが、本作により一作目の価値が爆上がりしてるのが凄いのよ。例えばドクター・スリープなんかもそうなんだけど、過去の作品の価値を更に押し上げる作品って中々作れるものではないとおもう。作品の細部まで目を凝らしながらスクリーンにひれ伏す二度目の鑑賞。

『トップガン マーヴェリック』(IMAX)
コクピット専用のIMAXカメラを製作して撮影した制作陣への敬意を表するべく三回目はIMAX上映で。いよいよフレアが飛んでいるだけで涙を流し始める境地に達する。
キメ画と素晴らしいサウンドトラックの往復ビンタが続く本作、チームワークのためにアメフトやるシーンにすべてが詰まっている気がする。もはや言葉は要らないという。当該シーケンスで流れる「I Ain’t Worried」はその後方々で掛かっていて耳にするたびにニヤニヤしてしまうのだった。

『トップガン マーヴェリック』(4DX)
本作でとうとう4DX童貞を卒業してしまった。はじめは酔うかと心配していたがまったく問題なく、4DXとの親和性の高い作品だったので大満足だった。冒頭だけ50回くらい繰り返したい。
そういえば今年は久しぶりに海外に行く機会もあったが現地の飲み屋のお姉さんとトップガンの話で盛り上がった。映画という共通言語は良いものだと改めておもったし、優れた映画は国境や人種など超越して愛されるのだとしみじみ感じたのだった。

『RRR』
インドから来た激熱男汁映画。昔のジョン・ウー作品を観ているかのようなむせ返るほどの濃厚なブロマンス。約3時間の長尺だが全編通して勢いが良く、無駄のない構成で一切ダレないのが凄い。特に何を見せるべきかが明確で回想や次のシーケンスに至るまでの繋ぎの省略の仕方もスムーズで上手い。
ニュータイプばりの阿吽の呼吸で繰り広げる肩車アクションの無敵っぷりに馬とバイクで駆け抜けるゴリゴリのアクションが最高に楽しい。どうしたらそういう発想になるんだよってなるのだが、ノリと勢いが強すぎて突っ込みすら間に合わない。大スクリーンで楽しめる映画ということでトップガンに次ぐ最高のエンターテイメントを堪能した。

『RRR』
なので、二回目観に行ったわけなのだが、とにかく草臥れた心に効く。通常長尺作品は大の苦手なので観ると消耗するんだけど、この作品は観終わったら元気になる驚異の効能がある。
1本でカチッと纏まっている感じからして同じS・S・ラージャマウリ監督作品のバーフバリよりも好み。ナートゥダンスの力強さやラーマさんのなんちゃってランボー無双っぷりは一々気持ち良い。入場特典のポストカードは作業机に飾っており、疲れた時に眺めては元気を貰うようにしている。

『犯罪都市THE ROUNDUP』
マ・ドンソク兄貴は今年も護られたい二の腕大賞を見事に受賞。兄貴自慢の拳に加えて一本背負いが次々炸裂して本当にスカッとする作品だった。
前作のキャラも良い感じで引き続き出演してくれて嬉しい。コメディ要素の入れ方が絶妙で韓国映画お得意の暴力シーンとの塩梅がとても良い。最後みんなで良い仕事したぜ!って感じの飲み会で終わる感じ含め完璧だった。
三作目も制作が決まっているようで、おまけに國村準も出るらしいので大変期待しております。

『サバカン』
2022年のベスト・オブおねショタ映画。80年代の長崎を舞台にイルカを見るため沖合の島に2人の少年が冒険に行くという筋書で、ノスタルジックな夏休み映画として普通に良い作品だった。
途中で出会ったお姉さんのおっぱいばかりみてしまう少年の可愛らしさよ。あと内田のジジイがみかんを盗んだ悪ガキを追いかける構図がホラー映画じみていて個人的にツボだった。
それにしても、本作のタイトルにもなっている鯖缶の寿司は貧しさゆえの料理&あまり人気がないという描写なのだが、どうにも美味そうに見えるのだ。折をみてやってみようかとおもいつつ年末になってしまったが、やはりどこかでチャレンジしてみよう。

『モガディシュ脱出までの14日間』
ソマリア内戦に巻き込まれ南と北の大使館員が命からがら脱出する実話ベースの作品。ホテル・ムンバイやクーデター、アルゴなんかを観た時の感覚にも似た、こんな状況絶対嫌だ映画。脱出する最後の最後まで緊張感が途切れることなく、映画館を出た後えらく消耗していた。
無政府状態のリアルマッドマックス化した地獄の中を脱出するんだけど、お得意の暴力描写やアクションもしっかりしていて見ごたえがあった。毎度のことながら韓国はこうした気骨ある作品を制作できる土壌があり素晴らしいとおもう。

『スパークス・ブラザーズ』
スパークスは今年ソニックマニアでライブを観ることができた。そしてなんとこの年末に再度来日して山田洋次監督と顔を合わせたという。まさにスパークスイヤーとなった2022年。
唯一無二のバンドのデビューから浮き沈みまで2人の大ファンというエドガー・ライト監督がまとめ上げた作品。日本文化好きというのは知っていたが家にパチンコの実機まであるのが凄まじく恐れ入った。同時期に公開されていたアネットは冒頭のスパークス登場意外に正直見所がなく個人的に好きになれない作品だったが楽曲は良かった。引き出しが豊富で器用なバンドなのだなと再認識。なんだかんだ今年サブスクで掛けていた曲を振り返るとスパークスの再生数がかなり多かったらしい。


というわけで2022年の(無理矢理)映画10選は以上。今年は番外編のようなこともやりません。
一年を振り返るとかなり多忙で尚且つあまり見たい作品も多くなかったためこのような結果になってしまった可能性はある。まあ、とにかくトップガンとRRRのインパクトが強すぎた。そしてこの二作品に共通しているのは、劇場の大スクリーンで映画を観ることの素晴らしさを再認識させてくれたことだろう。
来年もぼちぼち楽しみにしている作品はあるものの、まずは自分の時間を大切にして心の余裕を作るところからかもしれない(ここのところ毎年同じようなことを言っている気がするが……)。
一先ずこれからも楽しい作品やこちらの度胆を抜くような作品に出逢えることを祈念しつつ。
それでは、皆様良い年をお迎えください。


陰毛論

2022年03月09日 22時12分58秒 | 戯言

かねてより一部の愛好家に嗜まれてきた陰謀論は情報過多の波に押し出され表舞台に引きずり出された挙句、SF的文脈を失い人心のレガシーコードのようなものに共鳴し混沌を生み出した。現在まさに混沌から別世界の真実とされる荒唐無稽なストーリーが堂々と独り歩きを始めている。

かくいう私も元々その手の話やオカルトは嫌いではない。それは先述したSF的文脈やそこから派生する創作物の類が自身の思考や創作に刺激を与えてくれたり単純にエンターテイメントとして面白いからである。かつて、そうした個人的な嗜好も相まって、陰謀論に関する書物を購読したりWeb上のコンテンツを読み漁ったりしたこともあった。世界の裏側というものを思いもよらない角度から語る手法は読み手を惹きつけ、純粋に知的好奇心を刺激しワクワクさせるものである。一方、これらは共通して、我々は世界を牛耳る巨悪に騙され虐げられてきたのだという論調により、過去に起こった出来事や結果論に対して、ユニークな解釈、はたまた都合の良いストーリーを後付けする構成で成り立っていることが多いのが特徴だ。また、信憑性の不確かな情報ソースによる裏付け、もしくは、その裏付けすらないストーリーが方々で繰り広げられていたものと記憶している。そして、これら情報に触れることにより、陰謀論を別世界の真実として信奉する方々は概ねこうした書物等で体系付けられた思想を拠り所としていることを理解したのだった。個人的にある意味こちらも目覚めさせられるような気持ちになり妙に納得したものである。

さて、もちろん世の中には我々のあずかり知らぬところで表沙汰にならない悪事や陰謀も渦巻いているだろう。人類の歴史の中で実際に暴かれた罪も確かに存在する。しかし、現実世界は陰謀論的思想体系だけで語れるほどシンプルなものではないはずだ。この世界は多様な思想、複雑な利害や因果関係、自然発生的な事象等で成り立っており、白黒で割り切れることのほうが少ないくらいモザイク状で不確かなものだ。いわゆる目覚めている人は別世界の真実が見えるそうだが、逆に何故それが真実と言い切れるのか不思議でならない。例えばマスメディアの情報には真実を歪曲する表現や演出等が多々含まれるのは事実だろう。しかし、だからといって、専門家による十分な分析や考察が行われていない創作まがいのデータやWeb世界に放流された荒削りの情報をそのまま鵜呑みにするのも違うのではなかろうか。ましてや、今まさに同じ世界の時間軸で人が傷つき殺められている状況下において、陰謀論的文脈でそうした殺戮行為を仕掛ける者を肯定し、傷つく人々を愚弄するかのような言動を取るなど言語道断である。そもそも、どちらのサイドに立とうが渦中で苦しむ無辜の民に先ず以て心を寄せて欲しい。そして、百歩譲って余程我々の見ている現実世界が誤りであるというのなら、その根拠をきちんと示すべきだ。

明後日の方向に糞を掛け合うような不毛な議論など望んでいないのでこのお話はおしまいだ。そして、はて、不毛といえば、かの思想体系は不毛でないというのならば一体何なのだと一つ思案して、ここに陰毛論と名付けることにする。

結局、強引に痰壺を煮詰めたような駄洒落を言いたかっただけなのかといえば否定はできない。合掌。


猫ちゃんのブレスを返せ

2021年12月31日 14時08分15秒 | 映画

さあ、恒例の2021年映画10選諸々のお時間がやって参りました。今年は絞り出します。

『Mr.ノーバディ』
普段は工場の冴えない経理担当のオヤジとおもって舐めていたら…という完全に私好みの作品。ボブ・オデンカーク演じるオヤジがすっとぼけた感じでバタバタとロシアンマフィアを片付けていく姿が痛快。この作品、主役のみならず映画全体がどこかすっとぼけた感じの雰囲気なのが個人的にハマってしまったのだ。共演のRZA、クリストファー・ロイドもすっとぼけながらインパクト残しまくりで最高。あと、マイケル・アイアンサイドの容姿がかなり変わっていて最初気づかなかったけどお元気そうで何より。バスでダニエル・バーンハードらチンピラグループに絡まれた時はまだオヤジ覚醒途中で結構ボコボコにされるところや、イキってた隣人のダッジ・チャレンジャーぶん捕るところなんかが好きな場面。最後は殺しの下ごしらえもバッチリで工場にランボー並みの罠を張り巡らせマフィアをイチコロにする盛り上げ方も実によろしい。クソみたいな時代にこういう作品が年に1本は必要なのだ。

『マリグナント 狂暴な悪夢』
不作続きの今年後半戦に突如現れたとんでもない作品。悪霊によるエクソシスト的なオカルトホラーと思いきや後半で全く別の映画になるという今年の映画最大級のインパクトをもたらした怪作。日本昔話、はたまたブラックジャック先生でも登場しそうな大どんでん返しの展開に加え、警察署一つ潰す勢いの大暴れに劇場で笑いを堪えきれなかった。あまり語ると核心に触れてしまうので、あとは興味があれば観てくれとしか言いようがないのだが。こういう作品との出会いがあるから映画鑑賞は止められないと、ついつい水野晴郎顔になってしまう。どこか懐かしさを覚える作品のテイストに合わせてかVHSが活躍するのも嬉しいところ。細かい画作りもちゃんとしていてつくづくジェームズ・ワンという監督は器用な人だ。

『レイジング・ファイア』
ベニー・チャン監督の遺作となった傑作。いよいよ“香港映画”を作るのが難しくなってきた昨今。静かに力強い反骨精神が見え隠れしていて「香港映画ここにあり」という意地を見せてくれたんじゃないかとおもう。バイクチェイスでの無茶苦茶っぷり、ヒートやザ・アウトローを彷彿させる後半市街地での銃撃戦など古き良き香港アクショ映画の底力を感じさせてくれて嬉しかった。鬼に金棒、ドニーさんに警棒とはよく言ったものでラストの警棒vsナイフアクションが超絶クオリティ。教会がステージというのも熱い。ドニーさんが警棒展開したときは「いよっ、宇宙最強!」と掛け声を飛ばしたくなる。そして、ニコラス・ツェーがとにかく色気もあるわでクッソ格好良い。多感な時期に観ていたら確実に特殊警棒とバタフライナイフの購入を検討してしまう職質まっしぐら映画だった。

『ただ悪より救いたまえ』
毎度のことながら韓国製アクション映画のレベルは本当に高くて脱帽する。エレベーター内でのドンパチや階段でのナイフバトルなど個人的に好きなアクションてんこ盛りだった。東京からタイへと殺し屋さん出張追いかけっこバトル。人身売買組織との闘いということでドルフ・ラングレンのバトルヒートを思い出しつつ、毎度のことながらタイは闇が深いな~などと勝手なレッテル貼りをしてしまうボンクラ脳。あと、白竜が使ってた雑居ビルの拷問部屋、日本にもあんな闇プレイスがあるのかなとワクワクしながら観ていた。タイパートでは『オンリー・ゴッド』のおっさんも出演しており、相変わらずカタギの役は似合わない面構えであった。

『ベイビーわるきゅーれ』
こちらは和製アクション映画の心意気。同じく阪元裕吾監督の今年の作品『ある用務員』で注目していた伊澤彩織さんが大活躍。『ある用務員』のJK殺し屋スピンオフ的な趣の作品なのだがスベるかスベらないかギリギリのゆるさをもつ世界観が個人的にハマった。この辺は正直好みが分かれそうなところではあるのだけれども。本作は最後の伊澤彩織さんvs三元雅芸さんの肉弾戦がユニークな振り付けでとても良く出来ていた。伊澤さんの闘った後「疲れた」のボヤキが大好き。もっとあの二人の物語が観たいなぁなどと呟いていたら、続編制作が決定したようでおめでとうございます。二作目は本作のテイストを大切にしつつ更なる大暴れをしていただければと期待している。

『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』
一応リアルタイム世代には当たるのだけれど本シリーズを観たのはかなり後の方だったわけで、更に特にファンでもないという断りはしたうえで、この作品のためにこれまでのすべてのシリーズ作品が報われたというか救われたというかそんな気持ちがしてしまった。2時間半以上の長尺に詰めるだけ詰め込んで本当にこの長いカルマのようなシリーズを終わらせてしまった。それはもうきっちりと。新劇場版になって登場したマリについて、当初はエヴァオタに媚びるコネメガネ~くらいにしかおもっていなかったのが本作でもう大好きになってしまった。いやー、つくづく手のひらは返すためにあるんですなあ。きちんと終わらせたってのがとにかく高評価となった一本。

『ガールズ&パンツァー最終章 第3話』
魔境での鬱屈した生活の中で出会った、人生最大級にハマった清涼剤のようなアニメシリーズ最終章の第3話目。これまで散々持ち上げておいて7本目に持ってくるとは如何なるおつもりかと叱られてしまいそうであるが、いや、その、作品としてはそらもう知波単大活躍のジャングル戦の続きも激熱で素晴らしいんすよ。不憫じゃないエリカも可愛いし継続のシモヘイヘも良キャラだ。しかし、問題は我が心の母校アンツィオ高校の描写ですよ!あれだけでマイナス10万点ですわ!もう少し活躍を見せてくれー!!というわけで、アンツィオ過激派にとっては残念な結果だったわけだが、いよいよ個人的に期待していたあんこうチーム白旗展開が来たので次回作が超楽しみ。澤ちゃんが覚醒して胸熱展開となるか、はたまた大洗が敗北を迎え桃ちゃんは留年するのか、まだまだ死ぬるわけにはいかないのだ。…畜生!クラウドファンディングでP40買うぞ!

『すばらしき世界』
やれやれ、つい戦車の話に熱くなってしまった。さて、本作は個人的に好きな西川美和監督の最新作。シャバに出た元ヤクザがやり直そうと社会の中で苦闘する姿を丁寧に描写する。社会の厳しさや様々な困難の中で愚直に生きていこうとする少々不器用な主人公にとって皮肉めいたタイトル。それでも一縷の望みを見せつつ最後はズドンと心に迫る。後半は主人公としての視点が若手テレビ屋さんに移っていたのが上手いなとおもった。あとは役者の力。役所広司の枯れた演技と枯れた尻に尽きる。梶芽衣子さん相変わらずお綺麗でもう70代なのが信じられん。

『ミセス・ノイズィ』
騒音おばさんのフラッシュなんかあったなあとしみじみ。人の表層だけを見て先入観や経験値や過去の参照を基に動いた結果すれ違いからの大騒動に発展という寓話的要素を持つ作品。メディアリンチ、ネットリンチもテーマに入れつつコミュニケーションの本質を描く。炎上騒動が広がる中、キャバ嬢が誰よりも冷静な視点で語るのは映画らしくて面白い。極端に説教臭くなったりシリアスになったりし過ぎず、最後は綺麗な落としどころに持ってくる点も良かった。拾い物感のあった邦画の佳作。

『アメリカン・ユートピア』
デヴィッド・バーンといえば『ストップ・メイキング・センス』をたまに作業BGVに使うことがあるのだけど、本作はソロライブの映画化。まず舞台のコンセプトが面白くて滅茶苦茶クール。チンドン屋みたいに一人一人楽器を抱えて舞台上を縦横無尽に動き回る。トーキング・ヘッズの楽曲も久々に聴くと良いものだ。個人的にギタリストのアンジー・スワンが滅茶苦茶格好良くてお気に入り。一方、こういうこと言うと野暮なうえ真面目に怒られそうだがスパイク・リー監督らしい例のBLMに関するシーン構成は些か無粋に感じたりもした。いずれにしても、このライブは生でじっくり見てみたいので何とか本邦に来ていただけないものかしらね。


さてはて、例の如くグダグダと書き綴ってきたわけだが、冒頭でも述べたように絞り出した感が例年以上で大変苦悩した。自分の精神状態のせいなのかわからんが、特に今年後半は大作系映画など一つも面白くなくて、毎週肩を落として劇場を出る始末だった。それでも、『マリグナント』『レイジング・ファイア』『ただ悪より救いたまえ』のような作品に出会えたのは本当に救いだったとしか言いようがない。

というわけで、最後は恒例の各種オマケ大賞コーナー。
女優賞は今年はダントツの一位で伊澤彩織さん。今後の活躍に大期待。次いで男優賞はニコラス・ツェーに決定。もうね、なんなんすかね、あの格好良さは。抱かれたら誰だって全身の毛穴から血を噴いて絶命するわあんなん。
今年のベストバウトは悩んだので異例の二作品から『レイジング・ファイア』のドニーさんvsニコラス・ツェーと『ベイビーわるきゅーれ』の伊澤彩織さんvs三元雅芸さんに決定。午後ローにベストマッチ賞はチャドウィックの死が惜しまれる『21ブリッジ』。劇伴大賞は「あれ、この曲、坂本龍一っぽくね?」とボーっとアホ面してたら本当に坂本龍一だった『MINAMATA-ミナマタ-』。劇中歌大賞は『007ノータイム・トゥ・ダイ』というより女王陛下はいいよな~(いいよなおじさん顔)ってことで「We Have All The Time In The World」に決定。護られたい二の腕大賞は映画自体は今年ワースト級だったが『エターナルズ』のバブみ溢れるマ・ドンソクに。何と四年連続の受賞ということで、これはもはや二の腕界のオメガパフュームっすわ(自分でも何言ってるか分からない)。ベストタイミング賞は『ローグ』のナイスなパク付きを見せたワニさん。餌付けしたい子No.1は『モンスターハンター』のキュートなトニー・ジャー。お前が『直撃!地獄拳』リメイクしろ大賞は『るろうに剣心最終章The Final』の新田真剣佑に。そして最後に、人生辛いので子宮に入れてくれ大賞は『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』のマリさんに決定だ。皆さんおめでとうございます!

やれやれ、2021年もクソ疫病のせいで映画公開自体が減るわ千葉ちゃんが亡くなるわでろくでもない年だった。さすがに来年も同じ状況は勘弁してほしい。良い展望に向かうことを切に願いつつ。
それでは、皆様良い年をお迎えください。


You Only Live Twice......??

2021年11月27日 15時18分10秒 | 映画

『007ノー・タイム・トゥ・ダイ』が公開されてもうすぐ2か月。馬鹿なので三度観た。

ダニエル・クレイグのボンド(以下ダニボン←いつまでも言い続ける)については毎回ここに感想など記してきた(一作目二作目三作目四作目)。あれこれ書くと一々消耗して堪らんのだが今回満を持しての最終作ということもあり観念して以下グダグダと述べさせていただくことにする。

先述の通りダニボンもいよいよ最終作となったわけだが、先ず初めに出た感想は「やっと観れた」に尽きる。世の中がこのような状態になってから公開延期を重ね、前売り券も別バージョンで再発売という異常事態。それに乗っかり2枚買う私……。とにかく作品の感想云々以前に無事に公開されたという感慨の方が大きかったのは間違いない。
そして、次いで出た感想は「長かった」である。これは公開まで「長かった」という思いに加え、カジノロワイヤルからの道のりの「長かった」でもあり、歴代最長の上映時間に対する「長かった」でもあった。

さて、ここからは大きくストーリー、アクション、音楽、個人的ニヤケポイントに分けて感想を並べていくことにする。

先ずストーリーについてはいきなり落とすようで恐縮だが正直蛇足感が否めなかった。前作で引退しマドレーヌちゃんと幸せに暮らしまっせという終わり方をしたので、本当にあれで殺しのライセンスは返上!もう引退!チャンチャン!あとはご想像にお任せして七代目ヨロシク~で良かったんじゃないかと思ってしまう。前作が最終的には身内話に小ぢんまりと纏まってしまったこともあり、これ以上は話を膨らませなくてもいいよなという、ある種の満腹感があった。そして、ここで敢えて続編を作るのであれば、続編で何が起こるのか大体読めてくるものである。これがボンド映画ファンならなおのこと。必ず真っ先に思い浮かぶであろう、女王陛下の007だ。単純に幸せのまま終わるわけがない。
というわけで、蓋を開けてみればダニボンを終わらせるために作ったような展開と言っては乱暴すぎるであろうか。そう、ダニボンの死というインパクト。概ね待ち構えていた展開なわけだが、なるほど、そう落とすかと妙に納得して落ち着いたままエンドロールを迎えてしまった。最高に盛り上がる爆死演出であるのだがどうにも心に響かない。むしろフェリックス・ライターの死の方が衝撃であの最期は泣けてしまった。ダニボン就任決定当時、青い目のボンドに対してあれこれ言う外野がいたけれど、それらに対するカウンターのような素晴らしいセリフと、その美しい青い目を受け継ぐボンドの子(以下、ボン子)という宝物が遺される展開にはグッと来てしまうところはある。しかし、どうしてもダニボンを終わらせるための蛇足感を感じてしまうのだ。
個人的に元々長尺作品が得意でないということも影響しているのかもしれないのだけれども、正直観ながら若干白けてしまったところがある。中盤のセリフの多さも少々くたびれる。そのほか、ラスボスである自称“最凶の敵”サフィンが存在感無さ過ぎだったり、ボン子のうさちゃんぬいぐるみを最後に上手く生かせなかったりと気になる点は多い。この映画全体のトーンや大事なところでキメ画をバシッと入れてくれる感じは好きなので何とも勿体ない感じがする。
やれやれ、ここまでいきなりディスりまくるというね。個人的な映画鑑賞に対するスタンスに反する部分もあるので落とすのはここまでだ。まあ、なんというか、カジノロワイヤルの圧倒的インパクトから続くダニボンに対する期待値が大きかった以上、どうしても辛口になってしまう部分があるのよね。今回の監督は過去作の参照よりも原作を読み直した的なインタビュー記事があったけど、全体を通して当然のことながら女王陛下に加え二度死ぬ辺りの影響が強いのかなと感じた。

お次はアクション。歴代最長作品ということでアバンタイトルも最長。あれ30分くらいあったか。長いこと散々予告編で見せられてきたアクションをようやく拝むことができて嬉しかったよね。アバンタイトルは物凄く好きなんだよ、この作品。次の音楽の項で語るけれども、音楽の使い方もバッチリ。いきなりヴェスパーの墓がぶっ飛ぶところで驚きと笑いを生みつつ、高所からの飛び降り⇒アクロバティックなバイクチェイス⇒アストンマーティンDB5ギミック大活躍という往年のファンもニンマリさせる特盛展開で実に熱い。とりわけカーチェイスの撮り方が上手くてアストンがドリフトするキメ画が入ると堪らん。カーチェイスといえば中盤以降にマドレーヌ&ボン子を乗せたランクルvsレンジローバーも良かった。まず、敵さんが橋のところから追いかけてくるシーンの“分かってらっしゃる”構図が大変好み。そして追走するレンジローバーをなぎ倒しながら川や森に突撃する走りを空撮を交えて滅茶苦茶格好良く撮っていて、あれはそのままランクルのCMに使えるんじゃあないかって思わず笑ってしまった。
銃撃戦や肉弾戦のクオリティも相変らず高い。湯沸かし器みたいな名前のパロマちゃんとボンドの掛け合いはこの映画のハイライトかってくらい観ていて楽しいし、そこに新007ことノーミも加わって序盤の大きな見せ場になっている。そして何といっても長回し大好きマン的には最後の階段を使った長回し風アクションに尽きる。手榴弾の激しい爆発から始まり扉を開けて次々と襲い掛かってくる敵を階段を登りながらボロボロになって片付けていくダニボンが格好良すぎる。相当なトレーニングを積んだんだろうなと思わせるクオリティの高いアクションシーケンスであり、個人的に終盤最大の見せ場だと思う。そういえば最近久々にムーアボンドを観直したがダルくてダルくて仕方がなかった。まったくボンド映画はよくぞここまで進化したものである。制作環境も異なる昔と比べるなと言われればそれまでかもしれんが。

音楽については、これはもう女王陛下。ここぞとばかり、ずるいくらい使うよな、まったく。アバンタイトルでダニボンがWe have all~のセリフを放つと同時に流れるかの名曲のアレンジ。初見ではニンマリしつつも、「あーもう、やっぱりこれ絶対誰か死ぬやん」という感じになってしまったのだった。ロンドン橋を背景にMと007が対峙すべき敵について話し合う場面ではジョン・バリーの女王陛下テーマが掛かるところも堪らない。そしてダニボンの最期ではYou have all~と改変セリフを放ちつつ、迎えるエンドロールで満を持してのルイ・アームストロングという。アームストロング終わりからしんみりせずにボンドテーマというのもレイゼンビーボンドを意識してか。そんなわけで、ビリー・アイリッシュがまるで霞むくらい女王陛下出ずっぱり状態でありがとうございました。

最後は、もう随分語ってしまったような気がするけど個人的ニヤケポイントをいくつか。アバンタイトルでは相変わらずダニボンとマドレーヌちゃんがあたふたセックスなのにまず1ニヤケポイント。そしてOPタイトル曲に入るところのドクター・ノオをオマージュした入り&女王陛下を意識した時計等の演出に5ニヤケポイント。ポイント制止めます。他にも過去作を感じさせる場面として、例えばMI6本部にジュディ・デンチの肖像だけじゃなくてバーナード・リーの肖像が掛かっているみたいな細かいところなんかも嬉しい。
あと、アクションの項でも語ったけれどパロマちゃんね。本作の救いというか一番好きなキャラクター。登場初っ端からお茶目で気付けに酒をあおるところがちょう可愛いし、いざとなったら3週間のトレーニング内容が一体何だったのか気になるレベルの戦闘力の高さで躊躇ない戦いっぷりが最高。
本作はボンドカーも見所たっぷりなわけだけど、冒頭のアストンマーティンDB5に留まらず、私の大好きなダルトンボンドのV8も登場するのが10ニヤケポイント。ポイント制復活。
単純に笑えたところでは、あれほどまでにボンドを苦しめたスペクター、そして首領のブロフェルドがあっけなく御陀仏という。特にブロフェルドに関しては「あれ、なんか死んでますやん」ってノリなのが笑える。あと、肝心なボンドの最期のところ、あれ絶対ザ・ロック思い出した奴いるよな。あそこで「発煙筒振れ!」って思った奴、少なくとも30万人はいるね。

というわけで、ノー・タイム・トゥ・ダイを総括すると「女王陛下はいいよな~」(いいよなおじさん顔)に落ち着く。ここまで色々好き放題語ってきたけれども本当にダニボンもこれで終わりなわけだ。カジノロワイヤルの衝撃から14年余り、新たなボンド像を作り上げ最後まで駆け抜けたダニエル・クレイグやブロッコリ家の娘をはじめとする制作陣は本当に良い仕事をしたとおもう。伝統に拘ることなくボンド映画の可能性の枠を更に押し広げたわけで、これはとてつもない偉業である。次の世代にこのパラレルワールドへ更なる自由度を与えたことにより、七代目ボンドはこれまた違った質の巨大なプレッシャーが加わることになるだろう。お次も硬派でリアルなボンド像でいくか、はたまた突然ムーアのようなボンド像の再来となるか、あれこれ想像を巡らせるだけでワクワクさんになってしまう。

最後にダニボン全五部作を振り返って、改めて個人的に好きな順に並べてみる。

カジノロワイヤル>>スカイフォール>>>スペクター>>>ノー・タイム・トゥ・ダイ>>>>>>>>>>>>>>慰めの報酬

うん、もう、慰め~はなかったことにしよう……。
合言葉は「JAMES BOND WILL RETURN」。次はどんなボンドが観られるのか。その日まで、ワルサーを枕元に忍ばせつつ、常に逃げ道を用意して生き延びるのだ。


グランドマスター

2020年12月30日 14時24分27秒 | 映画

2020年の映画10選諸々。いつもの感じでまとめます。

『イップ・マン完結』
シリーズの集大成。人生の終局に向かうイップ・マンと次世代に受け継がれる武術を通じた魂の作品。
本作はリー師父に始まりリー師父に終わるというリー師父へのリスペクトが溢れまくった作りになっている。個人的ベストバウトは待ちに待ったドニーさんVSアドキンスではなく路地裏の闘いである。美術から振り付けまでドラ道リスペクトで初回に劇場で観たときは思わず涙が出てきた。愛と尊敬にまみれた描写の数々に昨年ワンスアポンアタイム~でタランティーノに滅茶苦茶ムカついていた私は拳を握り締めながら「わかったかタランティーノ!!」という気持ちになってしまった。
ドニーさんの怒りの連撃は今作も健在だし親子の話の落とし込み方などドラマ部分の作りも良い。あと中盤の中秋節で米国軍人相手にキレキレの技で応戦する女武術家チョン師匠が大好きで弟子入りさせてほしい。最後は川井憲次さんの例の力強いテーマ曲で引き締まる。鑑賞後にはベスト盤的サントラが出ていたので速攻買ってしまった。パンフレットも締めくくりに相応しいボリューム満点な内容で総合的に満足度の高い作品だった。因みに、シリーズで好きな順に並べると3⇒1⇒2⇒4かな。番外編マスターZの続編も引き続き期待したい。

『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒』
今一つパッとしないDC映画の中でこちらの作品はダントツだとおもう。まあ、マーゴット・ロビーが大好きってことも贔屓目であるんだけれど、警察署へのカチコミをはじめアクションの完成度は高いしコミカルな描写とのバランスも抜群なのだ。それに加えてまたまた大好きな“強いお姉さん映画”という要素も加わっていて最高でしかない。特にこの点において、この頃舶来エンターテインメント界隈において時折執拗に持て囃される自称先進的な定型的人権意識の押し付けが鼻につくことも無く、前向きにな姿勢で普通に楽しめる作品に纏まっているのも好感が持てる。ここのところ個人的に感じている一見耳ざわりの良い思想の押し付けとその後進性に関しては語る機会があればいずれどこかで…といってやらないお約束構文。
主役のみならず他のキャラクターも皆良かった。脇を固める“クロスボウ・キラー”の残念っぷりがちょう可愛いし、キレッキレのブラックキャナリーには尻を蹴飛ばされたい。冒頭とエンディングに出てくるハーレイ・クインの好物のエッグサンドが滅茶苦茶美味そうで、家に帰ってからチリソース振りかけて何度か真似させていただいた。スナイダーカットとか今更どうでもいいからハーレイ・クインでもう一本やってくれ。

『ランボー ラスト・ブラッド』
2020年最高の人体破壊映画。舐めていたジジイがジョン・ランボーだったという、喧嘩売りまくってたメキシカンマフィアたちが哀れになるストーリー。
はじめに書いたように、まあ、人体破壊がとんでもない。散々、溜めに溜めて最後に思いきり炸裂する構成になっていることも作用し、クライマックスでスクリーンいっぱい飛び散る肉片がグロっと爽やかすぎて心の中でおもわずガッツポーズしてしまった。ランボー怒りの殺しの下ごしらえをするシーンも最高だったよ。
時代遅れな暴力映画と切り捨ててしまうのは簡単だ。しかし、ランボーは未だにPTSDに苦しむ描写があり、自分の“蓋”を開放して暴力で相手を叩きつけても何も終わらないことはとっくに理解しているのだ。自分には暴力しか成す術がないという、かの戦争での一人の犠牲者でもある老兵の哀愁が沁みる。第一作の「何も終わっちゃいねぇ!何も!(CV渡辺謙)」なのである。
礼儀として吹き替え版も観たのだが翻訳は平田勝茂先生の安定クオリティだった。ささきいさお御大の枯れ具合も程よくマッチするよね。ケンコバは意外と役柄がハマっていた一方、某多才な筋肉俳優はかなり微妙であったことを付記しておく。

『フォードvsフェラーリ』
ローアングルでかっ飛ばすキメ画尽くしに音響が超絶迫力満点ですげえカッコよかったという馬鹿みたいな感想。映画として完成度が高いのでモータースポーツに疎くても十分楽しめる。
自動車メーカーが勝利を目指すドラマといっても所詮サラリーマンが回してるわけで、同じ組織内で足の引っ張り合いが始まったり手柄を横取りしたがったり等、ああいうクソいるよなぁみたいな感じも面白い(傍から見れば)。心理描写や各種説明もどこぞの爆売れ漫画のように一々無粋に語ることなどなく淡々とさりげなく処理されているのが好印象だった。個人的に好きな場面はマット・デイモンとクリスチャン・ベールが和解するのに子供みたいなヘナチョコ喧嘩するところと、フォード二世が親父にも乗らせたかったと嗚咽するところ。あと、親父と息子が滑走路で語り合うシーンの夕暮れ空が格別に美しく印象的だった。とにかくこの映画、キメ画しかないのよ。最後のル・マンでの戦いは正々堂々フェアプレイかとおもいきや、こっそりフェラーリチームのストップウォッチをパクったり、ピットにナットを投げ込んでパニックにさせたり泥啜っても勝つぞみたいな人間臭さが堪らなく好き。良い役者も揃って堅実な作りの一本だった。

『エクストリーム・ジョブ』
今年の映画初めに観た一本。ポンコツ麻薬捜査班がチキン屋さんを装って張り込み捜査を始めたら思いもよらない大繁盛店になってしまうコメディ映画。
役者陣が終始とぼけた顔して分刻みでボケをかましてくるので劇場でかなり腹筋が鍛えられた。ただボケっぱなしかというとそうではなくて、チキン屋の流行から本業の麻薬捜査に繋がる話の流れが綺麗で話もちゃんと出来ている。また、さすがは韓国映画といったところで、コメディ映画であってもアクションに手を抜かずクオリティがかなり高い。最後の波止場の乱闘は本当に見ごたえバッチリで、急に香港ノワールでも観ているかのような雰囲気だな…などと感心していたら締めにレスリー・チャンの「當年情」が流れ始めて完全に止めを刺された。しかも引きのショットからズームインして闘いを終えて座り込んでる姿を映しながらという、バカすぎて分かってらっしゃりすぎて劇場で涙目になりながらヒーヒーいってた。
兎にも角にも、水原カルビ味チキンが滅茶苦茶食べたくなってくる。

『ディヴァイン・フューリー/使者』
これまた韓国映画。特にインパクトのある予告編ではなかったものの、何だかどうにも気になって観に行ったら意外な拾い物感のあった一本。エクソシスト映画なんだけどバトルものという熱い展開が待っていた。
人の善性が根底にある話が好きなのでこの作品で描かれる父と息子の愛やエクソシスト師匠との師弟関係も凄く良くて、愛が悪に打ち勝つというストーリーへの絡ませ方も上手かった。まあ、あとはバトルね。聖水片手に悪魔とガチンコの殴り合いという期待以上の展開に笑いを堪えるのが必死だった。しかもこれまた韓国映画御馴染みの気合の入ったアクションなので、ワンカットで見せ場まで作ってくれるから堪らない。あとは悪魔に取り憑かれた子供の演技が最高だったな。悪魔に憑かれるとゲロを吐くのは万国共通なのだろうか。

『初恋』
さて、ここまで書いてくると例によってバテてくる。今年はやむを得ない事情によって劇場公開作品の大幅な減少があったこともあり、10本選ぶのも中々苦労する。などと言い訳を済ませ、残りの5本はサクッといきまっせ。(そう言って上手くいった試しがない……。)
三池崇史の映画は正直得意かといわれればかなり苦手なほうなのだが、これは普通に楽しむことができた。奇をてらわず方向性が明確な話なうえコンパクトな仕上がりで肩肘張っていないのが良い。
個人的にはクライマックスの舞台が思い出のユニディだったのが何とも。小道具やら調達に行った黒歴…思い出が……。車が大ジャンプするカースタントを急にアニメーション映像に転換するという、自由かつ大胆な手法で予算を抑える方策は上手いなとおもった。あとは方々で語られてるけどベッキーの狂気にまみれた演技が最高。

『透明人間』
はい、皆さん、今夜の作品は透明人間。透明な人間。怖いですねー恐ろしいですねー。(突然の淀川先生降臨)
透明な人間ですよ。タイトルからネタバレしてんですよ。もう世界中で何百、何千、同じ題材で作品作られてんですかってんですよ。監督は異色のSFアクション作『アップグレード』のリー・ワネルってことで一応期待値60%くらいで臨んだところ、これが中々良い塩梅の仕上がりじゃないの。徹頭徹尾緊張感を持続させる演出は見事だし、『アップグレード』でも感じたダークでひんやりした質感が背筋も凍るソシオパスの静かな暴走に上手く調和している。ソシオパス男の大豪邸などの美術も不穏さを醸成して良い相乗効果を生んでいたとおもう。散々やり尽くされた題材を美味しく料理してくれた。
まあ、でも、個人的にはやっぱりヴァーホーベン御大の“淫靡視ぶるマン”かなぁ……。

『淪落の人』
人の善性を信じる救いと希望に満ちた優しい作品でボロ泣き状態だった。あの人肉饅頭売ってたアンソニー・ウォンが、ユンファに眼球ブチ抜かれたアンソニー・ウォンがなどといつまでも言っていてはいけないのだ。良い役者さんだよ、ホント。
現在台湾に居を移してしまったアンソニー・ウォン。ノーギャラでの出演には様々な想いがあったのだろう。インタビュー記事を読んでると香港映画は香港の変容と伴にかつての香港映画たり得なくなって来てしまっているということに気づかされ悲しくなった。それでもこういう作品は希望になるわけで灯はまだ消せはしないんだという思いが込み上げる。散々良い話やっといて友人との“AVマラソン”みたいな笑いどころがあるのも好き。優しさが一番なのよ。

『山猫は眠らない8 暗殺者の終幕』
劇場公開してくれて嬉しかった。正直シリーズの中でどうかと言われれば微妙ではある。しかし、このシリーズ、かなりのブランクがあってからの2作目以降、変に手抜きをせず堅実に制作を続けているのは偉いとおもう。しかも今回で第8作目だよ。
隠居したトーマス・ベケットはエンド・オブ・ステイツのニック・ノルティみたいになっていて笑った。そして、何といっても秋元才加嬢。良い役どころ貰ったよなあ。ユキ・ミフネakaレディ・デスって名前も馬鹿っぽくて堪らん。次作への登場も期待できる終わり方だったのが嬉しい。次は是非ビリー・ゼインも再登場していただきたい。午後のロードショーにもぴったりな一本だ。


というわけで、今年はこのような情勢下において10本選出するのにかなり苦悩した。正直5本迄でも良かったかもしれん。期待の新作公開が続々と翌年に延期される異常事態。007やワイスピの新作などが予定通り上映されていたらどうだったんだろうとおもわずにはいられない。そうした劇場で掛ける新作が少ない状況の中で、普段観ることも無かったであろう作品に出会えたのは禍を転じて何とやらである。また、『コマンドー 日本語吹替え4K版』『燃えよドラゴン ディレクターズ・カット』『トータル・リコール 4Kデジタルリマスター』といった大好きな往年の名作を劇場で観なおすことができたのも今年ならではであった。

さあ、ここからは恒例の各種オマケ大賞でございます。
女優賞は『イップ・マン完結』の中秋節で一目惚れしたチョン師匠に決定。近所に武館があったら是非とも通いたい。男優賞は今後の応援も込めて『淪落の人』のアンソニー・ウォンに。ってか、最近台湾で叉焼包を販売する計画があるって記事が出てて笑っちゃったよ。本当に頑張って欲しい。
さあ、どんどんいくわよ。戦うおじいちゃん大賞はベトナム繋がりの役柄を演じたお二方、シルベスター・スタローンとトム・べレンジャー。劇伴大賞はシンプル&クールなバンドサウンドと良質な音響で盛り上げてくれた『フォードvsフェラーリ』に。このシーン作った人頭大丈夫ですか大賞は超絶長回しワンカットアクションで度肝を抜いた『タイラー・レイク』。そして護られたい二の腕大賞は何と三年連続で『悪人伝』のマ・ドンソクが受賞。これは文句無しでしょう。張り手俳優No.1の称号も併せて差し上げます。続いて、食ってみたい映画飯大賞は『パラサイト半地下の家族』に登場したチャパグリ。強制脱水症状誘発大賞は私の目や鼻から体液ダダ漏れにしてくれた『劇場版ヴァイオレット・エヴァーガーデン』に。ベスト・ウィッグ・ドレッサーは『ファナティック ハリウッドの狂愛者』でキモオタストーカー役を怪演したジョン・トラボルタに決定。トラボルタとくれば今年のニコラス・ケイジも凄かったというわけで、ベスト・オブ・アルパカ映画部門として『カラー・アウト・オブ・スペース』が受賞。アルパカのおっぱいって飲めるのかという新たな無駄知識に加えトリップ映像と物体Xチックな造形が最高だった。最後に、今年のドラマ部門は『コブラ会』に決まり。語ると長くなるから止めとくけど、正直ここ数年で最高のドラマ。いよいよ年明けに新シーズンが配信されるのでワクワクさんが止まらない。

以上で2020年の映画総まとめは終わり。先述したように今年はとんでもない年になってしまった。とにかく来年は延期になった作品群が楽しみで仕方がないよ。まずは年明け早々ドニーさんのデブゴンが待っているし、いい加減はよう007を観させておくれ……。
何が何でも明るく楽しい年になることを祈念しつつ。
それでは、皆様良い年をお迎えください。