ランニングという名の人体実験を始めて1年が経過した。
ランニング実験の前まで、長年わたくしは自らの身体に数々の人体実験を行ってきた。毎朝日替わりの如く各種牛丼チェーンや(家畜の)朝(食)マックに通ったらどうなるか。毎昼ガテン系向けの油ギッシュ弁当や店屋物ばかり摂取したらどうなるか。夜な夜なべらぼうな飲酒後にバーガーやらラーメンやら脂の集合体を投入したらどうなるか。いずれの実験においてもベースには確固たる信念があった。
「死んでも運動しない」
死んだら運動できないじゃんという、初級テキストに則った突っ込みはさておき、強い信念に支えられた実験の成果は予想を遥かに上回るものだった。
腹が出るまでは想像に容易い。なにしろバテる。元々悪かった寝起きが更に悪くなる。社畜の首輪が通らない。おにんにんがおっきしない(正確にはしづらい)。おっきしないといえば乳がでかくなるという女体化現象も進行した。ひんぬー女史にはまっこと羨ましく聞こえるかも知れない。この乳をどうにかして分けてやりたいと、いかほど思ったことか。そして巨乳の苦労を知ることになる。階段を駆け下りるたびに乳の根元が千切れそうに痛いのである。ヌーブラ着用寸前まで追い詰められ、わたくしはもう二度と生半可な気持ちで巨乳をもて囃すまいと心に誓ったのである。
前置きがオッパイ談義へと脱線してしまった。
さて、思いもよらぬ数々の実験成果を得てから、もういい加減「死んでも運動しない」という確固たる信念を曲げ、新たな実験を開始したのが今から1年ほど前である。そう、ここでようやっとランニングの話になる。
これまでの人体実験から得られた恐ろしい成果から、わたくしが真っ先に思ったこと。こんなもの回りくどく書き立てても仕方ない。ストレートに表現しよう。
「やせたひ……」
では、やせるにはどうしたら良いのか。極端な断食は身体に負荷が掛かる。一時的に食事量を減らしての減量は簡単だが、結局はすぐに元に戻ってしまうことは良く知っている。
ならば、もう悪あがきせず、やはり死んでもしないと誓った運動と食事療法の併用という初級テキスト通りの実験を行うしかないのではないか。
そこで、食事療法はまあいい。個人的に食事面で摂生に努めることは、それほど苦痛ではない。肝心の運動は何をすればよいのだろう。かつて「死んでも運動しない」と誓った、死ぬほど運動嫌いのわたくしが運動を!?狂気の沙汰だ……。
まず運動嫌いが運動を始めるにあたり、ウォーキングは真っ先に候補に挙がる。しかし、わたくしは中々気が短いので1時間も2時間もペタペタ歩いているわけにはいかない。ルーチンワークを終えた後に運動するとして、その時間に本来当てたいのは趣味や日々貯蓄される録画の消化などである。これらの時間が激減してしまってはストレス増大となり更に身体によろしくない。ウォーキングはボツだ。
次の候補は水泳。カロリー消費量が多いことは知っている。しかしこれも時間と準備に大層手間が掛かる。そんなことよりもっと根本的に重要なのが、わたくしは生粋のカナヅチなのである。しかも周辺に適切な入水場が無いじゃあないか。たとえあったとて、ミットモナイ我侭ボデーを晒せっか?はい、論外。
チャリはどうだろうか。わたくしの性格からして莫大な初期投資をして無駄に凝った挙句、ひょんなきっかけで飽きっぽい性格が作用し、絶対に機器のメンテナンス諸々怠る。あとはマンションの片隅で雨ざらしの耐久試験の検体になるに決まっているのだ。却下。
もはやこの際カロリー消費の効率がどうこうとかはどうでも良い。何の根拠も無いが「何もしないより、何かしたほうがマシだ」。これでいこう。
思いつく条件は、①手っ取り早くて、②金額投資が少なくて、③運動嫌いでも手が出せるレベル、④尚且つ飽きにくい運動…まあ、欲張り……。
ようやくここで辿り着いたのが、学徒時代の苦痛を思い出す、あの大嫌いなランニングであった。先述の条件と照らし合わせた選定理由は次の通り。
①よくよく考えたら、とにかく自分が勝手に走ればいいのだから手っ取り早い。ウォーキングのように時間を掛けなくても、そこそこの充実感と共に切り上げられる。
②チャリやジム通いなどに比べれば投資は安い。
③この際、運動嫌いなら運動嫌いらしく無理の無いコースとペース配分で走ればいい。レースに出るわけでも無し、学徒時代とは違うのだから己の好きにやればいいのだ。しんどければ歩いてしまえ。
④(これは②に関連してやや矛盾するのだが)すぐに止めてしまわないよう装束一式そこそこ金を掛けた。元を取るまで続けなさいと、若干のプレッシャーを与えるのである。それから、もうひとつの試みとしてスマートフォンのGPS機能を使いデータを採ることを楽しみとした。
そして大嫌いな運動だからこそ続けられるルールを制定。時間は脂肪燃焼を考慮して30分程度(因みに20分から燃える説は嘘らしい)。距離は3キロ+α程度。歩幅は狭く速度は7~8km/h程度をキープ。頻度は1日~2日おき。モットーは「頑張らない」。
肝心なルートも決める。なるべく同じルートで一定のペースを掴む。ルートを外れて冒険するのは元気なとき限定(滅多に無いが)。
因みにわたくしの住む界隈は最大約30m弱の高低差(GPS計測値)が生まれるほどに坂道が多い。毎度ラストスパートに“心臓破り”を駆け登るが、これがなかなか良い塩梅に身体に負荷を与えてくれる。
さてはて、そんなこんなで、ルールに従いつつ1年以上も実験が続いてしまったわけだ。我ながら奇跡的。よくやれていると思う。って、散々1年経過とか言っておいてね、実際は若干ブランクがあったりする。寒かったり花粉飛来シーズンが到来したりとか、しょーがねえだろっ!
さあさあ、いよいよここからが肝心。実験の成果を挙げていこう。
・何しろ走った後の充実感プライスレスッッ!
・心肺機能が向上!カラオケがいつもより2~3曲多く歌えちゃう!
・階段の辛さが緩和!いつもより1回多く登れるわっ!“心臓破り”にシバかれ続けたお陰ね。
・夏バテしにくい!引きこもり体質の汗腺が正常に働き始めた証拠か。
・ハイキック&股割り復活!ストレッチのお陰か、さすがに高校時代には劣るものの初歩のヴァンダミングアクションごっこができるレベルに!
・寝起きの良さ当社比約3%UP!誤差の範囲とか言うなっ!朝が弱いあたし、ほんのチョイですが大きな進歩です。
・プリケツの引き締まり度が当社比約15%UP!これで兄貴に力尽くホールドされても貞操を守れます!
・おにんにんの硬さ当社比約5%UP!クララが立った!でも使い道無し!
・乳の外観が当社比約10%減!但し、未だに揉み応え充分!気のせい説あり!
(※これらは個人の感想で、効果を証明するものではありません。)
もう少し具体的な効果が見える数字が無いのかと思ったことだろう。天下のタニタさんの測定器によれば減量は-2~3kgの範囲をウロウロと。体脂肪率もようやっと20%切り。効果が有ったと思いたい!
というわけで、とりあえず今後も実験は継続して行われる。劇的な進歩が見られれば第2回の報告があるかもしれない。
(ノルマ達成まであと2回)