友人のお父さんは、「先に行っている」と奥さんに告げられて、自転車で行かれました。
曲がるべきところを、真っ直ぐ行ってしまい、そのまま帰って来られませんでした。
友人は、散々探したあげく警察に相談しました。
18時間後、生垣に突っ込んだまま起き上がれない老人がいると、警察が保護しました。
友人は、警察から連絡を受け、警察署まで迎えに行きました。
「おお、ご苦労」とお父さんは、息子に声をかけられたそうです。
と友人は、ことが無きことを喜び、私達に面白おかしく話してくれました。
それからというもの、お父さんは家族の監視下にあるようです。
新聞を取りに玄関まで来られたそうです。
玄関で靴を磨いていた息子の「どこに行くの」という問いかけに、
目的を忘れてしまい、何だかぶつぶつと話しながら、奥に帰って行ったそうです。
「新聞だろう」と息子は、お父さんに渡したそうです。
私が住む地域でも時々有線放送で、「何々町の誰々さん、歳は....」と流れます。
その時の落ち着いた女性のアナウンスの声がゆっくりと温かく聞こえます。
そのまま行方不明になってしまったという話も聞いたことがあります。
身分証明書を携行しなければなりません。そんな時が来るのでしょう。
私は、若い時徘徊したことがあります。
最終の船に乗り遅れ、どこに行く当てもなく、一晩中街の中を徘徊しました。
冬の寒い日でした。一軒の空き家を探し入り込み残っていたカーテンを巻いて寒さをしのぎました。
初春の河口湖湖畔のボート小屋に潜んだこともあります。
棒を持った人たちが、灯りを持って小屋に近づいてきました。
見つかると面倒だと身体を固くしたものでした。
棒は釣り竿で、わかさぎ釣りの客が早朝からボートをとりにきたのでした。
しばらくして小屋を出た私が見たものは、
わずかに湯気があがり煙ったように見える湖面に、ボートでした。
どこともなく歩き回る。
そんな気持ちになったのは、遠い昔のことです。
そして、もうすぐやってくるのです。
できたら、温かい春になってから、そうなりたいものです。
匂い来る 暗めに白き 越し道に
2016年1月20日
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