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艱難汝を玉にす④

2017-02-08 16:12:03 | お話
艱難汝を玉にす④


🔸福地、少し前に、若い女性リーダーから、人を使うコツは何でしょうかと聞かれましてね。

その時に、いま東芝ラクビー部のヘッドコーチをなさっている冨岡鉄平さんのお話を紹介したんです。

冨岡さんは、褒めて使おうとおっしゃっています。

選手の悪いところは、すぐ目につくけれども、

いいところは意識して探さないと、なかなか目につかない。

それを探すのが私の仕事ですよと。

私もこの話には共感を覚えるんです。

褒め方というのは難しいもので、こんなことで褒めるのかと思われたらバカにされますから(笑)、

やっぱり褒めるべきところをよく見極めないといけません。

時には叱ることも必要ですが、

「叱る」と「怒鳴る」の違いも弁えておかなければなりません。

叱るというのは悪い点を注意して、よくなるために行うことですけれども、

怒鳴るというのは、ただ自分の鬱憤(うっぷん)を晴らしているだけですからね。


🔹木下、私も社員に厳しいことは言いますけど、言葉の使い方には結構気をつけていますね。

特に大事だと思うのは、ミスをした時です。

時間をかけてやっと仕事が取れても、1つの間違えれば明くる日から

もう取り引きをしていただけなくなることもありますから、きついですよ。

会社に対する信頼が落ちているわけですから、

当事者だけでなく全員がプロとして、こういう問題が起きたことを恥ずかしいと思わなければいけませんし、

皆で対策を考えるように促さなければなりません。

その時に、当事者を全員の前で叱る場合と、個別に呼んで叱る場合と二通りありますけれども、

いずれにしても、言うべきことはきっちりと言わなければなりませんね。

その上で例えば、

「なぜ君にこういうこと言った分かってくれるな。

君はできる人間なんだから、今回のようなことが再び起きないように頼むよ。期待しているぞ」

と、必ずフォローします。

叱りっぱなしは絶対ダメですね。


🔸福地、そこは大事なところですね。

🔹木下、社員一人ひとりの意識を高めるという点で大事だと思うのは、

佐川清元会長がよくおっしゃっていた少数精鋭という言葉です。

会社を大きくすることはできても、中身が大事なんだと。

ですから私も、

「うちの部署の人数を増やしてくれませんか」

と社員に言われると、

「いいよ」と。

「でも、1人増えても部署に支給する給料は上がらないよ」と。

それだけ各人の仕事が楽になるわけですからね。

「それよりも、限られた時間の中でいかにより大きな成果を挙げられるかを考えよう」と言うんです。

少し知恵を絞れば、売り上げの2%、3%くらいすぐ上がるんです。

いかに現場に慣れて、仕事のやり方がマンネリに陥ってるかということなんですね。


🔸福地、そこに気づいて現状を変えていくことが大事ですね。

🔹木下、最近は、倒産した大口のお客様の話もよくするんです。

有名な会社で、一時期はそちらの売り上げが21億円もあったんですが、

見る見るうちに仕事が減って、僅か2年で大手に吸収されてしまいました。

会社が悪くなっても、皆で頑張れば何とかなると考える人もいるかも分からんけれども、

もうその時は遅いんだと。

だから、一人ひとりが常に危機感を持って仕事をしようと言うんです。

悪くなっても、リストラをして会社の体質を変えればいいと言うけど、リストラされた本人は大変です。

それぞれに家庭があるわけですからね。

ですから私は、自分が経営トップである限りは、絶対に経営を傾かせてはならない。

創業の時からいつもそのことを考えてやってきたという話をするんです。

悪くなった時はもう遅いんだと。


🔸福地、本当におっしゃるとおりです。

🔹木下、とにかく現状に胡座(あぐら)を掻(か)くことなく、先ほど申し上げた

「前に前に」「きょうも挑戦」

という精神で熱心にお客様を回っていると、自ずと仕事は集まってくるんです。

当社は社員がそれを一生懸命実践してくれたおかげで、ここまで成長できたんです。

やはり私は社員に恵まれています。

改めてそう思いますよ。


🔸福地、ここまでお話を伺ってきて、やはり木下さんの事業姿勢には、

新聞配達、牛乳配達をなさっていた少年時代の

「送れず、休まず、怠けず」

という、仕事に対する誠意がずっと流れているのが分かりますね。

とかく楽をして手に入れたものというのは、

ありがたみがないから、あまり身につきません。

やっぱり苦労して、苦労して、苦労して勝ち取ったものこそ、

真に自分のものになるんですけれども、

木下さんもそのような姿勢で事業に取り組んでこられたからこそ、

佐川印刷という会社もここまで発展したきたのだと思います。

「艱難汝を玉にす」という言葉がありますけれども、

この言葉はまさに木下さんのためにあるように私は思いますね。

🔹木下、私の中では、そんなに辛い思いをしたという印象はないんですが、

確かに福地さんがおっしゃるとおり、

あまり苦労もせずに得たものというのは、すぐ失われてしまうものだと私も思います。

やはり私はスポーツ選手の、あの一滴の汗の輝きが好きなんです。

ですから私自身も汗を流して、いつも精いっぱい働いていますし、

「社長がそこまで働いているなら、俺も動かないかん」

と社員に思わせるようでなければいかんという気持ちもあります。

そこにお客様も巻き込んで、一緒に夢に向かって走りたいという思いでずっとやってきたんです。

福地さんはいつもお客様満足を説いておられますけれども、

やはりそこに尽きますね。

私どもはお客様の満足を得られなかったら、

とてもここまで来ることができなかったと思います。

お客様の満足を得るために努力を重ねていく中で、新しい仕事も入ってくる。

そのために社員教育にも力を入れ、絶えず会社の質を高めていくことで、

今度は仕入れ業者さんが私どもを守ってくださる。

やっぱり社員を育て、お客様、仕入れ業者さんとの関係をしっかりしたものにしていくことが、

とても大事ですね。

「艱難汝を玉にす」という言葉が、自分のこれまでの歩みに当てはまるのかどうかはよく分かりませんけれども、

ただ一生懸命やっていきました。

それだけは言えます。


私の好きな言葉に、「裸心(らしん)」というのがあるんです。

自分でつくった言葉なんですけどね。

🔸福地、裸心?

🔹木下、裸で生きることは厳しいけれども、裸で生きたい。

裸で生きることは恥ずかしいし、嫌なことにもいろいろ出くわすだろうけれども、

それでも自分は裸でぶち当たっていきたい。

私のこの思いを社員とも共有したいと思いました、

自分で「裸心」としたためたものを、各支店に掲げているんです。

経営に問題はつきものですし、それこそ艱難辛苦ともいうべき

厳しい状況に見舞われることもあるでしょうけれども、

とにかく一所懸命に事に当たる。

裸でぶつかっていく。

この精神でこれからも事業に邁進してまいりたいと思います。


🔸福地、ますますのご活躍を期待しております。


(おしまい)

(「致知」3月号、佐川印刷会長木下さん、アサヒビール元会長福地さん対談より)