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無駄のない人生

2017-03-14 15:47:31 | お話
🍀🍀無駄のない人生🍀🍀


人は、用だけを済ませて生きていると、真実を見落としてしまいます。

「真実は皮膜の間にある」

という近松門左衛門の言葉のように、
求めているところにはありません。

しかし、どこかにあります。

雑誌や衝動買いなど、

無駄なことを無駄だと思わないほうがいいと思っています。

無駄にこそ、次のなにかが兆(きざ)しています。

用を足しているときは、目的を遂行することに気をとらわれていますから、

兆しには気がつかないものです。

無駄はとても大事です。

無駄が多くならなければ、ダメです。

お金にしても、要るものだけを買っているのでは、お金は生きてきません。

安いから買っておこうというのとも違います。

無駄遣いというのは、値段が高い安いということではなく、

なんとなく買ってしまう行為です。

なんでこんなものを買ってしまったのだろうと、ふと、あとで思ってしまうことです。

しかし、無駄はあとで生きてくることがあります。


私は、3万円だと思って買ったバックが、30万円だったことがありました。

ゼロを1つ見落としていたのです。

レジで値段を告げられて驚きましたが、

いい買い物をしたと思っています。

何十年来とそのバックを使っています。

そして、買ってしばらくしてから、

そのバッグの会社オーナーが私の作品を居間に飾っていることを雑誌で知って、

あらお互いさまね、と思いました。


時間でもお金でも、用だけをきっちり済ませる人生は、

1 +1 = 2の人生です。

無駄のある人生は、1 +1を10にも20にもすることができます。

私の日々も、無駄の中にうずもれているようなものです。

毎日、毎日、紙を無駄にして描いています。

時間も無駄にしています。

しかし、それは無駄だったのではないかもしれません。

最初から完成形の絵なんて描けませんから、

どの時間が無駄で、どの時間が無駄ではなかったのか、

分けることはできません。

なにも意識せず無為にしていた時間が、生きているのかもしれません。

つまらないものを買ってしまった。

ああ無駄遣いをしてしまった。

そういうときは、私は後悔しないようにしています。

無駄は、よくなる必然だと思っています。


(「103歳になってわかったこと」篠田桃紅さんより)