✊チームの力✊
私はかつて16年間、進学塾で小学4年生から高校3年を対象に、特に受験算数・受験数学の指導をしてきました。
その塾は、超難関といわれる学校にバンバン合格を送り出していて、
特に灘校に関しては、合格者数全国ダントツ1位を誇っていました。
私は当時その塾で灘受験コースのリーダーを務めていました。
灘という難関校の合格者数において常に1位をとり続けることを至上命令とされていた私たち講師陣は、
やがてあることに気づくんです。
それは「勉強だけを教えとったらあかん」ということです。
なぜなら、勉強だけ教えていて難関校に受かる子は、
そもそも最初からやる気がある子です。
そんな子たちが、たくさん集まってきた年はラッキーなんですが、
そうじゃない年はエラいことになるわけです。
やる気のない彼らの心を開き、ハートに火をつけ、
魂を揺さぶらなければなりません。
これは、もはや人間探求以外の何ものでもありませんでした。
その探求の中で、私たち数名の講師たちは、
どうあがいても逆らうことのできない、
人生を支配するいくつかの法則に気づいていくのです。
その塾は当時、京阪神地域に20数カ所教室を持つ中規模塾でした。
その中から仮に、
神戸にある教室を「A教室」、
大阪にある教室を「B教室」、
京都にある教室を「C教室」
としてお話しします。
この塾では学年ごとにすべての教室で統一テストを実施して、
その偏差値で2ヶ月に1度、クラス分けをしていました。
同じクラス帯になら、同じテキストを使って授業し、
講師も教室を掛け持ちするので同じ講師です。
これから、当時私たちが経験した非常に不思議な出来事をお伝えします。
この三つの教室の最上位クラスに「灘」を目指す受験生が10名ずついたと仮定します。
つまり、3教室合わせて30名の受験生です。
そして、ある年、この30名の中から15名の合格者が出たとします。
この15名の合格者が、それぞれ3つのクラスに5名ずつ分布していたら、何も不思議ではありません。
だって同じ学力の子が、同じテキストで、同じ講師から学んでいるわけですから。
1名、2名くらいの誤差は出たとしても、5名平均で分布していれば問題はありません。
ところが、そうなりませんでした。
合格者15名のうち8名がA教室の生徒で、B教室は平均的な5名、C教室は惨敗で2名でした。
このうちB教室とC教室の違いは何だと思いますか?
これはすぐわかりました。
B教室の生徒は仲良しグループでした。
それに対してC教室には、いじめがありました。
いじめのあるクラスで、生徒が1番エネルギーを割くのは勉強ではなく、いかにいじめられずに済むか、です。
このことがはっきりわかってから私たちは、「受験は個人戦ではなく団体戦である」と確信しました。
次に私たちが考えたのは、
圧倒的な合格者数を出したA教室は、平均的なB教室と何が違ったのか、ということです。
そこで、過去にさかのぼって、圧倒的な合格者を出したクラスにいた卒業生たちに
「どんな勉強したのか」
「どんな教室の雰囲気だったのか」
を聞いていきました。
その結果、私たちはとんでもないことを見つけました。
なんとB教室が仲良しグループだったのに対して、A教室は見事な「チーム」だったのです。
「グループ」と「チーム」は、全然違います。
何が違うか?
例えば勉強1つとっても、C教室では友達を出し抜こうとします。
自分だけが隠れて勉強して、
「宿題やっていない」と嘘をついて友達を油断させ、出し抜こうとするのです。
B教室の子たちは仲はいいのですが、お互いの勉強に干渉しません。
ところが、A教室の彼らは、
たとえば数学が得意な子は、数学が苦手な子に、数学を教えることで友達の成績を引き上げようとします。
また、漫画を持ってきた子がいたとしましょう。
C教室の子は誰かが先生にチクリます。
B教室の子は誰も干渉しません。
ところがA教室では友達が注意するんです。
「おまえ、漫画なんか持ってきて何しとるんや。
俺たちはあの学校に全員で受かろうって約束したのと違うんか。
今は受験やろ。
一緒に合格しようぜ。
合格したら、その漫画を回し読みしようじゃないか」と。
すると、周りの友達もみんな
「そうや! 漫画しまって、こっちこい」
と言うんです。
塾のない日、C教室の子たちはゲームセンターに行きます。
B教室の子たちは、それぞれ自分の家で勉強します。
ところが、A教室の子たちは、必ず誰かの家にみんなで集まって勉強するんです。
A教室の子たちの合格体験記を読むと、時々こんな言葉があります。
「僕の合格は、このクラスの友達がいなければ、決して成し遂げられなかったと思う」と。
このように、お互いサポートし合って全員で目標達成するという文化ができた時、
ものすごい力になっていくんです。
このことが分かった私たちリーダーは、
自然と自分たちがやらなければならないことが、はっきりと分かりました。
それは、いかにA教室のような「チーム」を作り上げるか、です。
これからその法則のようなものを紹介します。
これは1つの塾でできたものなので、
あくまで参考にとどめていただきたいのですが、
私自身は学校の学級づくりや会社経営にも応用できるのではないかと思っています。
(「みやざき中央新聞」H29.7.31 木下 晴弘さんより)
私はかつて16年間、進学塾で小学4年生から高校3年を対象に、特に受験算数・受験数学の指導をしてきました。
その塾は、超難関といわれる学校にバンバン合格を送り出していて、
特に灘校に関しては、合格者数全国ダントツ1位を誇っていました。
私は当時その塾で灘受験コースのリーダーを務めていました。
灘という難関校の合格者数において常に1位をとり続けることを至上命令とされていた私たち講師陣は、
やがてあることに気づくんです。
それは「勉強だけを教えとったらあかん」ということです。
なぜなら、勉強だけ教えていて難関校に受かる子は、
そもそも最初からやる気がある子です。
そんな子たちが、たくさん集まってきた年はラッキーなんですが、
そうじゃない年はエラいことになるわけです。
やる気のない彼らの心を開き、ハートに火をつけ、
魂を揺さぶらなければなりません。
これは、もはや人間探求以外の何ものでもありませんでした。
その探求の中で、私たち数名の講師たちは、
どうあがいても逆らうことのできない、
人生を支配するいくつかの法則に気づいていくのです。
その塾は当時、京阪神地域に20数カ所教室を持つ中規模塾でした。
その中から仮に、
神戸にある教室を「A教室」、
大阪にある教室を「B教室」、
京都にある教室を「C教室」
としてお話しします。
この塾では学年ごとにすべての教室で統一テストを実施して、
その偏差値で2ヶ月に1度、クラス分けをしていました。
同じクラス帯になら、同じテキストを使って授業し、
講師も教室を掛け持ちするので同じ講師です。
これから、当時私たちが経験した非常に不思議な出来事をお伝えします。
この三つの教室の最上位クラスに「灘」を目指す受験生が10名ずついたと仮定します。
つまり、3教室合わせて30名の受験生です。
そして、ある年、この30名の中から15名の合格者が出たとします。
この15名の合格者が、それぞれ3つのクラスに5名ずつ分布していたら、何も不思議ではありません。
だって同じ学力の子が、同じテキストで、同じ講師から学んでいるわけですから。
1名、2名くらいの誤差は出たとしても、5名平均で分布していれば問題はありません。
ところが、そうなりませんでした。
合格者15名のうち8名がA教室の生徒で、B教室は平均的な5名、C教室は惨敗で2名でした。
このうちB教室とC教室の違いは何だと思いますか?
これはすぐわかりました。
B教室の生徒は仲良しグループでした。
それに対してC教室には、いじめがありました。
いじめのあるクラスで、生徒が1番エネルギーを割くのは勉強ではなく、いかにいじめられずに済むか、です。
このことがはっきりわかってから私たちは、「受験は個人戦ではなく団体戦である」と確信しました。
次に私たちが考えたのは、
圧倒的な合格者数を出したA教室は、平均的なB教室と何が違ったのか、ということです。
そこで、過去にさかのぼって、圧倒的な合格者を出したクラスにいた卒業生たちに
「どんな勉強したのか」
「どんな教室の雰囲気だったのか」
を聞いていきました。
その結果、私たちはとんでもないことを見つけました。
なんとB教室が仲良しグループだったのに対して、A教室は見事な「チーム」だったのです。
「グループ」と「チーム」は、全然違います。
何が違うか?
例えば勉強1つとっても、C教室では友達を出し抜こうとします。
自分だけが隠れて勉強して、
「宿題やっていない」と嘘をついて友達を油断させ、出し抜こうとするのです。
B教室の子たちは仲はいいのですが、お互いの勉強に干渉しません。
ところが、A教室の彼らは、
たとえば数学が得意な子は、数学が苦手な子に、数学を教えることで友達の成績を引き上げようとします。
また、漫画を持ってきた子がいたとしましょう。
C教室の子は誰かが先生にチクリます。
B教室の子は誰も干渉しません。
ところがA教室では友達が注意するんです。
「おまえ、漫画なんか持ってきて何しとるんや。
俺たちはあの学校に全員で受かろうって約束したのと違うんか。
今は受験やろ。
一緒に合格しようぜ。
合格したら、その漫画を回し読みしようじゃないか」と。
すると、周りの友達もみんな
「そうや! 漫画しまって、こっちこい」
と言うんです。
塾のない日、C教室の子たちはゲームセンターに行きます。
B教室の子たちは、それぞれ自分の家で勉強します。
ところが、A教室の子たちは、必ず誰かの家にみんなで集まって勉強するんです。
A教室の子たちの合格体験記を読むと、時々こんな言葉があります。
「僕の合格は、このクラスの友達がいなければ、決して成し遂げられなかったと思う」と。
このように、お互いサポートし合って全員で目標達成するという文化ができた時、
ものすごい力になっていくんです。
このことが分かった私たちリーダーは、
自然と自分たちがやらなければならないことが、はっきりと分かりました。
それは、いかにA教室のような「チーム」を作り上げるか、です。
これからその法則のようなものを紹介します。
これは1つの塾でできたものなので、
あくまで参考にとどめていただきたいのですが、
私自身は学校の学級づくりや会社経営にも応用できるのではないかと思っています。
(「みやざき中央新聞」H29.7.31 木下 晴弘さんより)