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甲州ワイン③

2017-08-20 07:33:28 | お話
③甲州ワイン


世界で通用する本格ワインとは、そもそもどんなワインなのだろうか?

フランスやイタリアにおける「ワインの最高峰」とは、

ボルドーやピエモンテなどの名産地のなかでも、さらにとびきりの畑のブドウを

長期熟成させた「フルボディのヴィンテージ赤ワイン」のこと。

完熟して糖分がギュッと凝縮されたブドウ汁を、果皮の渋みとともにしっかり発酵させる。

発酵過程でできる強烈な酸味や渋みを、

何年も熟成させることで、まろやかなコクへと昇華させ、

原料のブドウにはない熟成香が香る高級酒だ。


僕も何度か、このてのワインを飲んだことがあるのだが、

飲み口くちは水のようで、舌に載った瞬間に渋みとふくよかさが入り交じった分厚い味と、

複数種のフルーツとスパイスが混じったような香りが弾け、

それが喉を通る瞬間にパッと花開いた後に余韻となって広がる…

と書いているだけでアタマがこんがらがるものすごく複雑な味がする。

もはや、仕込み前の甘いブドウ汁の面影は消滅しているし、

自然のままの味から、遠く離れているからこそ価値を持つ味だ。

ブドウの種類だって、何百年ものあいだ品種改良され続けてきたワイン専用ブドウだ。

原料にしろ醸造法にしろ、とんでもないレベルの高さなのであるよ。

しかもこの味わいは「ワインを嗜むオトナの舌」でないとその良さがわからない。

たぶんチューハイとかカクテルを飲んでいる20代の若者に、この種のワインを飲ませても、

「ニガい、シブい、つまり美味しくない!」

という感想しか返ってこないであろうよ。


このような「本格ワインの文化」は、つくり手のワイナリーの質を上げることはもちろん、

飲み手を育てることなしには根付かない。

端的に言って、ものすごく難しいチャレンジだ。

この無謀な試みに挑んだのが、さっき引用したワイン界のレジェンド、麻井宇介だ。

このワインおじさんは、山梨の若いワイン醸造家たちと一緒にヨーロッパのワインを研究し、

メルローやシャルドネのようなヨーロッパ種のブドウを栽培し、

しっかり発酵・熟成させた本格ワインづくりに挑戦した。


発酵が終わり次第出荷する一升瓶1,000円から2,000円のワインから、

フルボトルで5,000円以上する長期熟成ワイン。

ステテコ姿のおじいちゃんではなく、

仕立ての良いスーツやドレスを着た紳士淑女が嗜むワイン。

農家がつくる葡萄酒ではなく、醸造家がつくるワイン。

これが甲州ワインの第二世代。

世界に挑戦する日本ワインの幕開けだ。


話をふだたび旭洋酒に戻そう。

大学で醸造学を学び、本格ワインの真髄を知る鈴木夫婦は、もちろん山梨ワイン第二世代以降の醸造家。

しかしヨーロッパ型の本格ワインを志向しているかというとそうではない。

彼らが目指すは

「モダンな醸造法で、クラシックな甲州ワインを醸す」

という温故知新スタイルなのであるよ。

第二世代の醸造家たちの努力が実り、2000年代に入って甲州ワインが国際的に評価されるようになった。

しかし、それはワイン専用ブドウで醸したフルボディの長期熟成ワインではなく、

土着の甲州ブドウで醸した素朴な味わいを残すと白ワインだった。

トッププレーヤーの真似ではなく、

自分たちのルールを活かした個性が評価されたのだね。


ここからは僕の個人的な見解になるよ。

麻井宇介が起こした国産ワインのイノベーションにおいて意味があったのは、

ヨーロッパ型の本格ワインづくりではなく、

土着ワインのリデザインだった。

最先端のワイン技術によって、甲州ブドウの潜在力が引き出され、

真の意味での「日本的ワイン」の可能性が開けた。

そして旭洋酒は、土着ワインのリデザインに挑む「甲州ワイン第三世代」の旗手なのだ!


(興味ある人には、つづく)

(「発酵文化人類学」小倉ヒラクさんより)

もらいものの、峠の釜めし。