JR九州③
🔹JR九州が発足すると鉄道事業と船舶事業を経験し、
1993年に外食事業部長次長の辞令を受けたんですが、
これがリーダーとしての転機になりました。
この時点で強烈に根付いたのが「気」の大事さですね。
(「気」の大事さ)
🔹飲食店というのは、こちらがやったことに対して、お客様の反応がすぐに分かるんですよ。
例えば、おいしい料理や心地よいサービスを提供したら、
お客様は喜んでくれる。
満足してくれる。
その逆をすると途端に嫌われる。
もう二度と来店してくれない。
すぐにハッキリと採点してくれるんですね。
それは外食だけじゃなくて、物販の小売りも同じだと思います。
そういう中で、繁盛する店と繁盛しない店を分ける1番の要素は、
その店に「気」が満ち溢れているかどうかだと気づきました。
(あー、なるほど)
🔹気というのは、たとえ初めて行く知らない店でも、
なぜか入る前から薄々感じるものです。
綺麗に掃除されていたり、元気のいい声が飛び交っていたり、
そういう店はいい店だなって思いますね。
実際、料理もサービスもほとんど間違いない。
では、気を満ち溢れさせるにはどうするかというと。
これは外食事業部時代から今も社員に言い続けていることですが、
1つは「スピードあるキビキビした動き」。
迅速に動くと気が集まります。
二つ目は「明るく大きな声」。
挨拶にしても打ち合わせや電話にしても、
小さな声でヒソヒソしゃべっている人がいるんですけど、それじゃあ全然職場に気が満ち溢れません。
だから、もっと明るく元気に大きな声を出せと、こう言うんです。
(何より唐池会長自身が体現されているので説得力があります)
三つ目は「隙を見せない緊張感」ですね。
誰に対して緊張感を持つか、それはお客様です。
本社にいるとお客様は見えませんので、
お客様を想定して、こういうことをしたらお客様はどう感じるか、どう反応するかということを意識する。
現場は常にお客様に見られているので、お客様がいつ来られてもいいような態勢を整えておく。
接客サービスで1番大事なのは、「待っている時の姿勢」なんです。
お客様はたいてい予告なしで突然いらっしゃいますよね。
その時に、いつ来店されてもいいような表情、態度、事前の準備ができているかどうかです。
例えば、店に入った瞬間、従業員がつまらなそうな顔をしてボーッと突っ立っていたり、
客先の横に食材の段ボール箱が放置されたりすると、
それだけで、もうこの店はダメだなと思うでしょ?
(そうですね)
🔹ですから、接客サービスというのは準備で8割決まると思います。
普段から準備をしていないと咄嗟の時に対応できない。
毎日「いらっしゃいませ」「ありがとうございます」という声出しや、笑顔の訓練をしていると、咄嗟の時にも自然と出る。
お客様に隙を見せない緊張感を持つとは、準備を徹底するということなんです。
4つ目は「貪欲さ」。
もう1人お客様に入っていただこうと呼び込みをするとか、
もう1本ビールをお勧めしようとか、もう一品おつまみをご注文いただこう、
あるいはもっと自分を成長させようといった追求心、向上心です。
「スピードあるキビキビとした動き」「明るく大きな声」「隙を見せない緊張感」「貪欲さ」、
この4つを徹底的に現場に浸透させることで、
8億円の赤字を抱えていた外食事業部を、3年で黒字化へと導くことができたんです。
7年間外食事業に携わった後、
鉄道事業でも同じ手法を用いて改革に当たりましたが、
気というのは規模の大小、業種の違いに関係なく、
どんな組織でも共通するのだと確信を得ました。
(つづく)
(「致知」9月号 唐池恒二さんより)