美しく着飾った成人のお嬢様が、にこにこ顔でテレビに映し出されている。
毎年変わらぬ映像。
46年前、20歳を目前にした12月31日、
バイト先のスナックの客と過ごしていた。
当時、男を追って家を出た母の借金返済で、
看護師をしながら日勤時は夜スナックで、夜勤明けはラーメン屋でバイトをする生活を送っていた。
友達は古本とお酒。
部屋にはトランジスターラジオとコタツだけ。
大晦日だからとなんの感慨もなく、
家に帰っても待人なし、来年20歳になるのなら女の子を捨てようと、
ちょっとはイケテル男に連いていくことにした。
30前半、しゃれたマンション、部屋に入ると目についたのはびっしりの本だった。
すごい・・
読みたい・・
1月1日、朝陽が眩しかった。
陽射しに映し出されたシーツの赤い点。
20歳、女になった。
“読みたい本があれば持っていっていいよ。”
3冊の本を手にし自宅に戻ると、
あんなに眩しかった陽射しとは無縁の、寒々とした無彩色の部屋が待っていた。
成人式、
日勤帰りにお酒と古本を買い、何を祝うでなし、ただただ無心に本を読んでいた。
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