高校は工業高校の電気科に行っていた。
当時の工業高校の電気科は、純粋に電気の仕事に就く目的が有って入る者が半数、
普通科に行く学力や大学に行くつもりが無くなんとなく入った出来の悪い?学生が半数、
なぜここに居るのかさえも不明な者1割、
という感じだった。
休み時間になると、半数は教室の後ろでプロレスをしていて、
半数は食堂に、うどんを食べに行って、
残りの数名が、机で大学の受験勉強とマンガを描いていた。
机でマンガを描いている私の前の席に休み時間中、ずっと本を読んでいるやつがいて、
めったにしゃべらない相手であったが、
「何読んでるの?」と尋ねたら、
「これ、読んでみる?あげるわ」といってくれたのが、
ブラッドベリの「黒いカーニバル」だった。
なんじゃこりゃー、SFでこういう表現も有りか、と衝撃を受けた。
SFというジャンルに入れられていたが、科学的要素ほとんど無しで、文章も独特で、むしろ「詩」に近いものがあった。
当時、電気には興味があったが、興味があったのは電子工学とかコンピュータの分野だったので、
(当時は電子科やコンピュータ科という専門学科のある学校はほぼ無かった)
モーターの電流を計測したり、電線をつないだりすることには全く興味が無く、毎日、授業中は熟睡していた自分にとって、
こんなおもしろい本があるのか、という大事件であった。
たぶん、あの休み時間が無ければ、一生、ブラッドベリを読むことは無かったかもしれない。