SECIモデルは,野中郁次郎一橋大学名誉教授が1980年代に提案した経営理論である。この理論をラーニングサイクルの立場から読み解いてみる。主体性を自ら持つこと,そして相手の主体性を尊重すること。主体性を持っている人びとはそれぞれ暗黙知を持っている。主体性がなければ,暗黙知も存在しないし,社会的な取組をしても自分のためにもならずまして相手のためにもならない。主体性がある仲間がいて初めて影響を受け合い切磋琢磨できる。 ラーニングサイクルでは,【導入】該当する。
この時に大事なこと,それはどのような場で主体性を発揮させるか,場が重要である。場の意識を持って主体性を発揮すること。自分がどのような場をフィールドとしているのか,自覚すること。私の場合は,閉伊川でのワカサギ研究が場の主体性である。閉伊川というフィールド(場)があってワカサギ研究がスタートした。閉伊川がなければワカサギに出会うことはなかったし,今の研究の進展もなかったであろう。
【探究】お互いの暗黙知を尊重し,共感し,共有し,社会化(Socialization)することによって,自分たちが取り組んでいるものが何なのかを表出化(Externalization)していく。この段階は,お互いに議論を深め概念を焦点化している段階でありラーニングサイクル理論の【探究】に該当する。
【概念の確信】共有された暗黙知は表出化され当該グループの形式知となり,協働(Collaboration)による新しい取り組みが生み出される。協働によって生み出された何らかの成果物は,グループ内で内部化(Internalization)され,新たなる形式知が作り上げられていく。その時,グループが作り出した成果物が外部からの評価を受け,クループの拡大にもつながる。この段階では,包括的な概念である水圏環境リテラシーと対比しながら学びを進化させている【概念の確信】に該当する。