Dr. WAKASAGI at HEI-RIVER(閉伊川ワカサギ博士)

森川海をつなぐ学び合いの活動を紹介します

長野県のスキー場で日本を考える

2012-02-03 | 水圏環境教育
留学生スキー合宿の引率のお手伝いをした。
留学生は,韓国,台湾,中国,タイ,インドネシアのアジア諸国から来た総勢16名。

韓国の留学生は韓国の全漁連を退職し日中韓のトライアングルの漁業協定に関する研究。
二国間の協定はあるは三国感の協定はないという。将来は,FAOに就職し夢を達成したいという。

台湾の留学生は台湾国立大学の学部生で交換留学生,タイからは栄養学の研究者,インドネシアからは水産庁からの出向。

彼らと一緒に3日間を過ごしアジアの中の日本の立ち位置を再確認した。彼らの多くはスキーが初めてであること。タイ,インドネシア,台湾にはスキー場がない。四季折々の美しい自然と文化をアジアの留学生に提供できることに大いに誇りを持つべきである。

ただし,フレイジャルな日本である。台湾ではかつて大きな地震はあっても津波は経験したことないという。三陸は50年に一度大きな津波がある。400年に8度という頻繁な回数に台湾の留学生は呆然としていた。日本は自然が豊で美しいが,フレイジャルなのである。

中国人の留学生は,日本人の印象を次のように語っていた。日本人ははっきり言わない。イエスかノーかわからない。それに対して中国人ははっきりしている。相手を否定することが当たり前だというのである。自然がフレイジャルなだけでなく,日本人自身もおそらく,フレイジャルなのである。(相手を気遣う面と,気にしすぎる側面は表裏一体だ)

環境と生物は密接な関わりがあることはワカサギの研究からも肌身で感じている。同時に,人間もそうなのだ。環境と密接な関わりを持って生活し,そして人格の形成も環境に大きく影響を受けているのだ。人格だけでなく,文化にも大きな影響を与えている。

フレイジャルな自然環境の中で,フレイジャルな日本人は生きてきた。自然に背を向けることはできないのである。日本という自然豊かな環境にあってはならないことだ。しかし,有ってはならないことをやむを得ずやってきたのが,経済至上主義に舵を取った戦後の歴史ではないか。

これからの日本(当面の課題は被災地の水門の問題,防潮堤の問題)をどうしていくべきなのか。私達に課せられた課題は大きい。

美しい国土,庭園の島を目指した五全総の理念はどこに

2012-02-02 | 水圏環境教育

1998年に,戦後5度目の全国総合開発計画が発表された。五全総は21世紀の国土のグランドデザインとして美しい国土の創造を掲げている。2015年を目標年次として基本目標を「歴史と風土の特性に根ざした新しい文化と生活様式を持つ人々日本人が住む美しい国土,庭園の島ともいうべき世界に誇りうる日本列島を現出させ,地球時代に生きる我が国のアイデンティティを確立する」としている。

ここで強調されているのは美しい国土,庭園の島ともいうべき世界に誇りうる日本列島である。

グランドデザインは,これまでの太平洋工業ベルト地帯を中心とした工業地帯を拡大することではなく,気候・風土・文化・地理的条件を巧みに活用して東北北海道,日本海側,と南の太平洋側の3つのブロックに分けて生活空間に合わせて開発するというものである。

つまり,地域の特性を巧みに活かした国づくりを目指したのである。2015年が目標年次であるが,今どれだけ進んでいるのであろうか。

目標に書かれている庭園の島の原点は古事記にさかのぼるという。島には庭という意味があったという。平安末期には作庭記という世界最古の造園技術書がある。この思想の原点は「人の立てたる石は生得の山水にはまさるべからず」というものである。つまり,庭を作るときは自然に逆らってはいけない,というものであり,庭を作るときは自然のごとく表現するというのだ。

もし,これを今回の被災地域に当てはめる。人工的なコンクリートで14.5mもの防潮堤を作るということは,日本古来の考え方に相反するものであり,日本人が千年以上もこよなく愛した人工でない自然のような庭の美しさの価値意識に反するものではないか。

日本人は自然の情景を大切にして生きてきたことが,面影を大切にする文化,美しい文化を形作った。日本の歴史,そして美しい庭園の島を目指した五全総を見直し,もう一度原点に立ち返り将来の行く末を再考することが必要なのではないだろうか。