BELOVED

好きな漫画やBL小説の二次小説を書いています。
作者様・出版社様とは一切関係ありません。

散財と、久し振りに食べたじゃがりこ。

2024年10月11日 | 日記

今日はパートが休みでしたが、近所の大型書店へ自転車で出掛けました。
晴れていたので、少し汗をかきました。
大型書店内に併設されている文具店では、可愛いノートを買いました。

おやつは、母が近所のスーパーで買って来てくれた、じゃがりこ。
わたしは、じゃがりこのサラダ味とチーズ味です。
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作品を移動しました。

2024年10月11日 | 日記
別ブログで連載していた薄桜鬼の二次小説をこちらへ移動しました。

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誠食堂ものがたり 第八話

2024年10月11日 | 薄桜鬼 現代パラレル二次創作小説「誠食堂ものがたり」


「薄桜鬼」の二次創作小説です。

制作会社様とは関係ありません。

二次創作・BLが嫌いな方はご遠慮ください。

「八郎、何でてめぇがここにいる?」
「働きに来たんだ。」
「言っとくが、うちは即戦力を求めている。お前ぇみたいな金持ちの社会勉強なんざお呼びじゃねぇんだ。」
「僕を余り見縊らないでくれる?」
「へぇ、そう言うのなら、お前ぇが接客業が務まるのかをとくとこの目で見てやろうじゃねぇか!」
歳三は、そう言うと八郎を睨んだ。
「南蛮チキン定食三つ、鶏の唐揚げ定食四つ、親子丼二つ上がったよ~!」
「はいよ!」
八郎はテキパキと店内を歩き回り、客からの注文を聞き取った。
「やりますね、伊庭さん。」
「ふん、あれ位出来る。」
「まぁ、いいんじゃないんですか、雇っても。伊庭さんはこの店の戦力になりますよ。」
「そうか。」
「トシ、伊庭君を雇ってくれないか?」
「あんたがそう言うんなら、仕方ないな。」
「ありがとう、トシ!」
「大袈裟だなぁ、あんた。」
歳三はそう言って溜息を吐くと、沢庵を壺の中から取り出した。
(また、腐っていやがる。)
「邪魔するぞ。」
「てめぇ、いい加減にしやがれ!」
歳三はそう叫ぶと、沢庵を千景の顔に投げつけた。
「また懲りずにあそこへ行ったのですか。」
「うるさい、出せ。」
千景は天霧から白いレースのハンカチを受け取り、沢庵で汚れた顔をそれで拭いた。
ハンカチは黄ばんだ。
「はい、アップルパイです!」
「頂きます!」
「美味いな、伊庭君のアップルパイ。何処で作り方を習ったんだ?」
「実は僕、パティシエになりたくて、今一人暮らしをしながら、調理専門学校に通っているんです。アップルパイの作り方は、母から習いました。」
「へぇ、何で実家から出たんだ?」
「金持ちにも、色々と事情があるんだよ。」
「そうか。」
「僕は、いつか自分の店を持ちたいんだ。」
「夢を持つのは、いい事だ。」
「そうですよね!」
八郎が誠食堂のメンバーとなってから、店の人手不足は解消した。
彼は、良く働いてくれるし、何より愛想がいい。
「今日は忙しかったですね。」
「そうだな。まぁ、クリスマスシーズン中だから、ランチタイムのデザートに出しているケーキも好評ですし。」
「まぁな。それにしても、最近弁当の無料配布に並んでいる路上生活者の年齢層が少し変わっているような気がするんだ。」
「確かに。女性や若者が多いような気がするな。」
 ある日の夜、歳三達はそう言いながら酒を飲んでいた。
「コロナで会社が倒産したり、アルバイト先から解雇されたりして、路頭に迷ったりしている人が多くなっているからな。」
「そうですよね。」
「総司は?」
「部屋で休んでいますよ。それよりもトシさん、来年彼受験ですよね?」
「あぁ。」
「店は上手くいっていますし、総司君の成績なら良い高校に行けますよ。」
「まぁ、こればかりは本人が決めるしかねぇな。」
「学歴は関係ないといいますけど、やっぱり高校位は出ておかないと・・」
「うちはお前ぇの家みたいに余り教育に金をかけられねぇが、あいつの為になるなら何だってやってやりてぇ。」
「あ、そういえばトシさん、来週の金曜空いています?」
「今の所、何も予定は入っていないが、何かあるのか?」
「実は、父がトシさんの事を気に入ってね、一度会ってみたいと言っているんだ。」
「へぇ・・」
「まぁ、そんなに緊張しなくてもいいよ。ほんの、ささやかな集まりだから。」
「そうか。」
八郎から彼の実家のホームパーティーに誘われ、歳三はその週の金曜日、勇と共に伊庭家へと向かった。
「なぁ、どこもおかしくないか?」
「あぁ、大丈夫だ。」
「二人共、デート楽しんでくださいね。」
「総司、済まないな、受験勉強が忙しいのに留守番を頼んで。」
「いいですよ。気を付けて行ってらっしゃい。」
「わかった。」
歳三と勇を玄関先で見送った後、総司はケージの前で自分を見つめる“もちお”と目が合った。
「今日は、僕達だけだね。」
(これの何処が、“ささやかな集まり”なんだよ!)
伊庭家のホームパーティーに出席した歳三は、リビングの中央に氷の彫像が置かれている事に気づき、えらい所に来てしまったと思った。
「トシ、俺達ここに来て大丈夫か?」
「あぁ。」
あらかじめ、勇はスーツ、歳三は訪問着でこのパーティーに行こうと思い、パーティーの前に基本的なマナーを身につけようと、駅前の大型書店で冠婚葬祭やマナーについて書かれた本を読み漁っていた。
「あ~、何だか緊張するな・・」
「大丈夫だ。」
「トシさ~ん!」
歳三と勇がそんな事を話していると、そこへ八郎がやって来た。
「八郎、これが、“ささやかな集まり”なのか?」
「そうだよ。」
(金持ちの感覚はわからねぇな・・)
歳三がそんな事を思いながら苦笑していると、そこへいつも歳三から沢庵ビンタを喰らっている風間千景がやって来た。
「今夜のお前は美しいな。」
「は?」
「俺の所へ来い。そうすれば、一生贅沢させてやる。」
「俺ぁお前ぇみたいな金で物を言わせるような奴は嫌いだね。」
「何だと!?」
「心は金で買えねぇって事さ。」
「わかった・・行くぞ、天霧。」
「はい。」
(あいつ、何かひっかかるんだよなぁ・・)
「トシ、どうした?」
「俺、あいつと会った事があるんだが、思い出せねぇんだ。」
「そうか。まぁ、無理に思い出さなくてもいいだろう。」
「そうだな・・」
伊庭家のパーティーから帰ると、総司は居間で勉強をしていた。
「こんなに遅くまで起きていて大丈夫か?」
「ええ。むしろ寝ようと思ったら、目が冴えちゃって・・」
「そうか、余り無理するなよ。」
「はい。」
「勝っちゃん、明日は店を休もうぜ。色々と疲れたぜ。」
「そうだな。」
歳三達がそんな事を話している時、千景は風間邸のダイニングで遅めの夕食を取っていた。
(向こうは、俺の事は憶えておらぬのか・・)
「どうしましたか、風間?」
「あの者・・土方といったか・・向こうは、俺と会った事すら憶えていないらしい。」
「まぁ、それはそうでしょう。まだお互い子供だったのですから。」
「そうか・・」
千景は、何故か自分が生まれる前の記憶―すなわち前世の記憶を持っていた。
はじめは、時折夢に現れる自分と瓜二つの顔をした男が最初誰なのかわからなかったが、やがてそれは自分の前世である事に気づいた。
夢の中で現れるのは、いつも一人の男だった。
美しく艶やかな黒髪をなびかせ、宝石のように美しい紫の瞳に、千景は夢の中でありながらもいつも魅せられていた。
その男といつか会ってみたい―そう思いながら千景が、“運命の日”を迎えたのは、彼の十歳の誕生日パーティーでの事だった。
主役ではあったが、このパーティーを開いた父親の目的は、社交だった。
大人達の社交場で子供が退屈するのは当たり前で、千景は母屋から人気のない中庭へと抜け出した。
明治の頃、風間家の何代目かの当主が贅を尽くして専門の職人に作らせた美しい薔薇園は、月明かりに照らされて美しい姿を客達に見せていた。
噴水の前まで千景が来ると、そこには先客が居た。
真紅の地に美しい白梅の模様が描かれている、一流の職人の手によるものと思しき美しい振袖と、漆黒の帯を締めたその少女は、眉間に皺を寄せた後、千景を睨みつけながら、彼にこう言い放った。
「何見てんだ、てめぇ?」
(やっと見つけた。)
夢の中でしか会えなかった男と“運命の出会い”を果たした千景は、感動の余りその少女の唇を塞いだのだった。
「何しやがる、この変態!」

冬空に、小気味いい音が薔薇園に響いたのだった。

あれからもう十年以上経ったが、千景は未だにあの少女―もとい土方歳三に恋をしていた。

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誠食堂ものがたり 第七話

2024年10月11日 | 薄桜鬼 現代パラレル二次創作小説「誠食堂ものがたり」



「薄桜鬼」の二次創作小説です。

制作会社様とは関係ありません。

二次創作・BLが嫌いな方はご遠慮ください。

「おはよう、総司。昨夜はよく眠れたか?」
「はい・・」
そう言った総司の顔は、少しやつれていた。
どうやら、“きなこ”の夜泣きは一晩中続いていたようだった。
「眠気覚ましのコーヒー、淹れておいてやったぞ。」
「ありがとうございます。」
「トシ、引っ越しの準備は進んでいるか?」
「あぁ。」
家族が増え、手狭になったマンションの部屋からの引っ越しを勇が決めたのは、引っ越し先のマンションが店から徒歩五分という近距離にあるからだった。
今住んでいるマンションは、店から片道徒歩三十分かかる距離で、部屋の広さは勇と歳三、猫の二人と一匹暮らしには充分だが、猫と犬、ファンシーラットと総司という新しい家族と暮らすには狭過ぎた。
「断捨離は大方終わったぜ。」
「そうか。」
「僕も終わりましたよ。元々、荷物は少ない方だったから楽でしたよ。」
「そ、そうか・・」
「嫌だなぁ、そんな悲しい顔をしないで下さいよ。僕は、あなた達の家族となれて幸せなんですから。」
「総司~!」
「勝っちゃん、遅れるぜ。」
「あ、じゃぁ行って来る!」
勇はそう言うと、慌ててトースターからトーストを取り出すと、それを咥えてそのまま玄関から出て行った。
「お父さんがスーツなんて珍しいなぁ。」
「雑誌の取材を受けるんだとよ。」
「へぇ。」
「まぁ、コロナ禍でみんな大変な中、うちだけ繁盛しているものなぁ・・」
「引け目を感じる事、ないんじゃないんですか?今は苦しいですけれど、何とかなりますって!」
「あぁ、そうだな・・」
歳三と総司は、朝食を済ませた後、食堂でランチの仕込みをした。
「今日は、お客さん少ないですね。」
「緊急事態宣言が発令されてから、まだ数週間しか経ってねぇからな。」
「そうですね。そういえば最近、SNSで大量注文詐欺に遭っている飲食店が増えているんですって。」
「うちも気をつけねぇとな。」
歳三がそんな事を総司と話していると、店に備え付けてあった電話がけたたましく鳴った。
「はい、誠食堂です。」
相手は何もしゃべらず、一分間黙った後、電話を切った。
「いらっしゃいませ!」
「チキン南蛮定食ひとつ!」
「は~い!」
緊急事態宣言発令から数週間たったが、ランチタイムになると弁当を買いに来るサラリーマンやOLが長い行列を作っていた。
「あ~、疲れた。」
「夕飯の仕込み、今の内にしておきます?」
「そうだな。」
総司が夕飯の仕込みを店の厨房でしていると、また電話がかかって来た。
「出なくていい。」
「え?」
電話がけたたましく鳴った後、数秒後にまた鳴った。
「イタズラ電話ですかね?」
「そうだろうな。それよりも総司、宿題はちゃんとやっているか?」
「えぇ。」
中学校に入学してから、総司はNPO法人が経営する学習塾へと通い始めた。
そこには、総司のようにと読字障害や算数障害、発達障害などを抱える子供達が通っている。
「この前、学校のテストで満点取りました!」
「へぇ、凄いじゃねぇか!」
「小学校の時と違って、中学校には学習支援のボランティアの方が来てくれて、学校の先生よりも良く勉強を見てくれます。」
「そうか。総司、学校は楽しいか?」
「少しは。でも、コロナの所為で大抵クラスの大半はオンライン授業だし、給食は黙食だし、部活も中止になって、剣道教室も中止になって再開のメドが立っていなくて・・」
「町内会のイベントも中止になって、みんなコロナの所為でイライラしちまっているし。」
「本当に終息するんでしょうかね?」
「さぁな。俺達が今出来る事は、コツコツと地道に働く事だ。」
「そうですね。」
その日、深夜になっても勇は家に帰って来なかった。
スマホに何度も掛けたが、繋がらなかった。
一睡も出来ずに二人が彼の帰りを待っていると、突然玄関のチャイムが鳴った。
『警察です。』
「警察が、うちに何のご用でしょうか?」
『実は、ご主人が夜間病院に運ばれまして・・』
「え!?」
警察によると、勇は昨夜轢き逃げ事故に遭い、意識不明の重体だという。
「どうして、こんな事に・・」
「ご主人は、轢き逃げに遭った後、すぐに通行人によって救護されてこちらの病院に運ばれたので、一命を取り留めました。」
歳三と総司が、勇が搬送された病院で彼の担当医からそんな説明を受けていると、そこへ勇の両親がやって来た。
「お久しぶりです、お義父さん、お義母さん。」
「トシさん、勇の様子は?」
「一命を取り留めましたが、意識不明の重体です。」
「そうか。」
「二人共、今日は疲れたでしょう。病院の近くにホテルを取っているから、そこで休みましょう。」
「はい・・」
「ねぇ土方さん、お父さんは死なないよね?」
「あぁ、大丈夫だ。」
勇は轢き逃げに遭ってから数日後、意識を取り戻した。
「心配かけて、済まなかったな二人共・・」
「良かった。」
「お父さん、お店の事は僕達に任せて、しっかり身体を治して下さいね。」
「あぁ、わかった。」
勇が入院している間、歳三と総司は店を切り盛りして、家事も二人で分担した。
「お父さん、早く帰って来ないかなぁ。」
「あぁ、そうだなぁ。」
轢き逃げ犯が捕まったのは、勇の事故から一月後の事だった。
犯人は無免許の上に飲酒運転をしていた。
「被害届を取り下げろ?」
「はい・・」
「待って下さい、向こうが100%悪いのに、被害届を取り下げろっておかしくないですか?」
「それは・・」
「もしかして、向こうから何か言われたのですか?」
「はぁ・・」
「では、あちらには被害届は決して取り下げないつもりだと、お伝え下さい。」
「わかりました・・」
「ったく寝言は寝て言えってんだ。」
「トシ、俺は大丈夫だから・・」
「わかったよ。それにしても、ふざけた事を抜かしやがる。」
「暫く店の事はお前に任せてもいいか、トシ?」
「あぁ。なぁ勝っちゃん、食堂の新メニューの事なんだが・・」
「へぇ、クッキーか。」
「まぁ、アレルギーがあるお客さん用に作る予定なんだが、試作品が出来たら試食してくれねぇか?」
「あぁ、わかった。」
勇の退院は、二月かかった。
季節はすっかりクリスマスソングが町中に響く頃になっていた。
「ほぉ、ハムスターのクッキーか。可愛いなぁ。」
「猫のクッキーも作ってみたぜ。」
「へぇ、いいじゃないですか。ねぇ、今日は早めにお店を閉めて、お父さんの退院祝いのパーティーをしましょうよ。」
「そうだな。」
三人はその日は店を早く閉めて、自宅マンションの部屋で勇の退院祝いのパーティーを開いた。
「もうすぐクリスマスですね。ケーキ、どこで買いますか?」
「いつもの所でいいんじゃないか?」
「そうだな。」
「ねぇ、来年のクリスマスもお正月も、家族みんなで過ごしましょうよ。」
「あぁ。」
年末年始の時期は、コロナ禍でも商店街は活気に満ちていた。
誠食堂の新作、“どうぶつクッキー”は、SNSで話題となりそれと比例して客足もコロナ以前のように戻って来た。
だが、そこでひとつの問題が出て来た。
それは、人手不足だった。
人件費を余りかけないようにしていた勇だったが、人手が足りないと店の回転率が悪くなっている事に気づき、漸く彼はアルバイトを雇う事にした。
「SNSで呼びかけてみるか?」
「それだと、安全性が低いですよ。やっぱりここは、タウン誌や求人サイトに広告を出した方がいいですよ。」
「そうか・・」
「求人広告を出すのは、俺に任しておけ。」
「ありがとう、トシ。」

数日後、一人の青年がアルバイトの面接に来た。

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誠食堂ものがたり 第六話

2024年10月11日 | 薄桜鬼 現代パラレル二次創作小説「誠食堂ものがたり」


「薄桜鬼」の二次創作小説です。

制作会社様とは関係ありません。

二次創作・BLが嫌いな方はご遠慮ください。


「お宅の息子さんの所為で、うちの子は今度の大会に出られなくなったのよ!」
「それはうちの子も同じですが、何か?」
歳三がそう言って加害生徒の親を睨むと、彼女は一瞬怯んだが、彼を睨みつけながらこう言い放った。
「まともじゃない子は、親もまともじゃないのね!」
「はぁ!?じゃぁ何か、一方的に一人の人間を袋叩きにしたあんたの子の方がまともだってのか!」
「何ですって!?」
「言っておくが、あんたらのガキがしたのは犯罪だ!未成年だからって何でも許されると思うなよ!」
「二人共、落ち着いて下さい!」
「うるせぇ!先生、もしかして俺達をここへ呼んだのは、示談にしろとかいうんじゃねぇだろうな!?」
「そ、それは・・」
「もう警察に被害届は出したので、俺達はこの件を“なぁなぁ”で済ませるなんて思わないで下さいね!」
「は、はい・・」
「ちょっと先生、何納得しているのよ!?」
「うちの子の将来がかかっているのよ!」
「てめぇら、自分らの子が悪い事をしたのに、“ごめんなさい”も言えねぇのか!」
「ひぃ・・」
「トシ、もうその辺にしておけ。」
「帰るぞ、勝っちゃん!」
「待てって!」
呆然としている佐原達を教室に残し、歳三はその場から去っていった。
「お帰りなさい。」
「ただいま。」
「学校に呼び出されたのは、僕の事件の事でしょう?」
「あぁ。」
「それよりも、さっきこんなFAXが来てたよ。」
「サンキュ。」
総司からFAXを受け取った歳三は、それを見て絶句した。
“店を閉めろ。さもなければ店を焼く。”
「何これ・・」
「総司、警察に連絡しろ。」
「わかった。」
警察が通報を受けて土方家に来た時、総司は少し不安そうな様子でレティシアの頭を撫でていた。
「総司、部屋へ行ってろ。」
「わかった。」
「このFAXの送り主について心当たりは?」
「いいえ。コロナも終息したっていうのに、気味が悪い・・」
「何かわかったら、こちらから連絡致しますので。」
「お願い致します。」
謎のFAXが送られて来てから、店の前に大量の吸い殻が捨てられるようになった。
「ったく、一体誰が・・」
「ねぇ、この吸い殻全部口紅ついているよ?」
「じゃぁ犯人は女か?」
「それは警察に調べて貰おうよ。」
吸い殻を店の前に捨てた犯人は、総司の同級生の母親だった。
彼女は今回の事件で自分の子どもが停学処分になった事を知り、逆恨みでやってしまったと、警察で自白した。
「何でうちの子が・・」
「まだわからないのか、お宅のお子さんは傷害事件を起こしたんだ。下手すりゃ被害者は死んでいたのかもしれないんだぞ!」
「うわぁぁ~!」
「良かったね、犯人捕まって。」
「そうだな。それよりも総司、怪我の具合はどうだ?」
「少し良くなったよ。でも、ギブスの中が蒸れて臭いのが嫌かな。あと一週間で取れるからいいけど。」
「そうか。」
「ねぇ、前はホームレスの炊き出しをしていたけれど、どうしてやめちゃったの?」
「実は、変なメールが届いてな。“これ以上炊き出しをするつもりなら、店に火を放つ”ってやつだ。」
「犯人は、まだ見つからないの?」
「あぁ。」
「変な人も居るんだね。」
「さてと、今日は弁当を作る日だから、手伝ってくれ。」
「わかった。」
一週間後、総司の左腕のギブスが取れた。
「あ~、辛かった。」
「良かったなぁ、とれて。」
「うん。これで、あの臭さとはさよならだ。」
「ただいま~。」
歳三と総司がそんな事を話していると、丁度町内会の会合を終えた勇が帰宅した。
「お帰り。」
「いやぁ~、久々にみんなに会って、色々と話が弾んでつい長居してしまったよ。」
「コロナの所為で中々会えなかったから、仕方ねぇよ。」
「明日のランチの仕込み、終わったよ~」
「総司、ありがとう。」
「どういたしまして。」
「コロナも終息したし、また無料弁当配布サービス、再開するか。」
「公園でもするの。」
「いや、知人の厚意で、都内のカトリック教会で出来る事になったんだ。」
「そうか。あの脅迫メール、まだ誰が送ったものなのかわからねぇのか?」
「あぁ。」
勇はそう言うと、歳三が淹れてくれたコーヒーを飲んだ。
「はい、お父さん。」
「お、ドーナツか。」
「この前、新しくオープンしたドーナツ屋さんのクーポン貰ったから、買って来たんだ。」
「そうか、ありがとう!」
「おい勝っちゃん、甘い物ばかり食っていると太るぜ?」
「すまん・・」
「この前病院の健康診断で“太り過ぎ”って言われたんだろ?」
「う・・」
「明日から、俺とウォーキングしよう!」
「わかった・・」
「僕も付き合うよ、リハビリがてらに身体を動かしたいし。」
「ありがとう、総司!」
こうして勇は、歳三と総司と共に毎朝ウォーキングする事になった。
「はぁ、はぁ・・」
「この位でへばるなんて、情けねぇな。」
「父さん、そんなに疲れます?」
「俺は、お前達と違って、運動不足だから・・」
勇はそう言うと、首に巻いているタオルで額の汗を拭った。
「それにしても、朝早くに身体を動かすのは気持ちがいいなぁ。」
「あぁ、そうだな。」
「さ、少し休憩して歩きましょう。」
「わかった。」
公園でひと休みした後、勇は歳三達と公園内を一周した。
「なぁ、何処かで声が聞こえないか?」
「気のせいだろう?」
「いや、あっちの方から・・」
勇はそう言った後、突然遊歩道の方へと走り出した。
「待てって!」
「どうしたんですか、父さん!?」
歳三と総司が慌てて後を追うと、彼は段ボール箱の前に座り込んでいた。
その中には、“誰か飼って下さい”という貼り紙と共にゴールデンレトリバーの子犬と、ファンシーラットが恐怖で震えていた。
「酷いな・・」
「あぁ。」
「とにかく、この子達を動物病院へ連れて行こう。」
「わかった。」
犬とファンシーラットの飼い主は現れず、歳三達は子犬を“きなこ”、ファンシーラットを“もちお”と名付けた。
「ハムスターは飼った事はあるが、ファンシーラットははじめてだなぁ。」
「それに、ハムスターと違ってケージも大きいやつが必要らしい。」
勇は帰宅途中で寄った書店で購入したファンシーラットの飼育本に目を通しながらそう言った後、溜息を吐いた。
「まぁ、今日は色々とペットショップに行ったりして忙しかったから、疲れただろう?後は俺と総司がケージの組み立てをやっておくから、あんたは休んでくれ。」
「わかった、お休み。」
勇が寝室に消えた後、歳三と総司は“きなこ”と“もちお”のケージを組み立てた。
「お~いもちお、きなこ、お前達も休め。」
歳三の言葉を理解したかのように、二匹はそれぞれのケージの中に入って休んだ。
「俺達も寝るか。」
「うん。」
その日の夜、歳三達が寝室で休んでいると、突然リビングの方から“きなこ”の鳴き声が聞こえた。
「どうした?」
「子犬って、夜泣きするんですよね。」
総司はそう言って“きなこ”を抱き上げると、自室へと引き上げた。
「暫くこの子、僕の部屋で寝かせます。」
「わかった。」

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