「FLESH&BLOOD」の二次小説です。
作者様・出版社様は一切関係ありません。
海斗が両性具有設定です、苦手な方はご注意ください。
二次創作・BLが嫌いな方はご注意ください。
オメガバースに嫌悪感を抱かれている方は閲覧しないでください
―見て母さん、花嫁さんだ!
幼い頃に見た花嫁の髪を美しく飾る鼈甲の簪に海斗は心を奪われた。
―綺麗ねぇ。海斗、あなたもいつかお嫁に行く時に、あの簪を挿すのよ。
―うん!
あの頃はまだ、海斗は自分が簪を作る職人になるとは思っていなかった。
「海斗、何処に居るの!?」
海斗は、夜明け前に家を飛び出し、ある場所へと向かっていた。
そこは、海斗が住むお屋敷街から川を隔てた、お歯黒長屋と呼ばれる所だった。
「ジェフリー、居るの!?」
「何だ、誰かと思ったらお前か。」
長屋の中から顔を出したのは、海斗の恋人で絵師をしているジェフリー=ロックフォードだった。
長い金髪をなびかせ、衿を抜いた着流し姿の彼は、そっと海斗を中へと招き入れた。
「どうした、また母親と喧嘩したのか?」
「俺、もうあの家に居たくない!」
海斗はそう叫ぶと、ジェフリーの胸に顔を埋めた。
「カイト、お前の気持ちは良くわかる。だが、今は感情的になるな。」
「わかった・・」
「今夜はここに泊まるか?余り大した物はないが、飯位は作れる。」
「ありがとう。」
その日の夜、ジェフリーは海斗に家出した理由を尋ねると、彼女はこう答えた。
「ババア・・母さんが、女学校を卒業したら結婚しろって言うんだ。俺は、簪を作りたいのに・・」
「そうか。」
海斗の母・友恵は、良妻賢母の手本のような女性だと、以前海斗から聞いた事があった。
友恵は、女の幸せとは結婚して子を産み、家を守る事だと考えていて、女が手に職を持って働くというのは、彼女にとっては非常識な事だった。
現に海斗が通う女学校は、良妻賢母の花嫁学校だった。
「簪職人になるとしても、職人になるのは簡単じゃないぞ。俺だって今は絵師として成功しているが、それまでは長い下積み生活を送っていた。」
「俺はただ単に親に反抗しているだけじゃない、俺は自分の足で立って、親が敷いた道じゃなくて、自分で見つけた道を歩きたいんだ。」
「そうか、お前がそう思っているのなら、俺は応援するぞ。」
「ありがとう、ジェフリー。」
海斗はそう言うと、ジェフリーに抱き着いた。
「おいおい、そんな事をしたら、襲っちまうぞ?」
「あなたは、そんな事しないでしょ?」
「バレたか。」
そんな二人の様子を、破れた障子越しから一人の男が見ていた。
男は、東郷家で庭師見習いとして働いていた使用人だった。
過去形なのは、彼が海斗を襲おうとした所を友恵に見つかり、解雇されたからだった。
暫く中の様子を覗いていた男は、金髪の男が海斗の上に覆い被さるのを見た後、その場から去った。
「痕、つけないで・・」
「わかっているよ。」
長屋の外まで溢れ出そうな海斗のフェロモンを受け、ジェフリーの雄の本能が爆発した。
「愛しているよ、カイト・・」
「俺もだよ、ジェフリー・・」
二人が裸で抱き合っている頃、友恵は苛々しながら海斗の帰りを待っていた。
「奥様、奥様!」
「何よ、うるさいわねぇ。」
「お久し振りです、奥様。わたしの事を覚えていらっしゃいますか?」
「お前は・・」
解雇した使用人が居間に現れ、友恵は彼の全身から漂う悪臭に顔を顰めた。
「今日は奥様にいい話を持って来ましたよ。」
「誰か、この者を早くここから追い出しなさい!」
男は東郷家の裏口から外へと叩き出され、フケだらけの頭を掻き毟りながら、夜の闇の中へと消えていった。
「じゃぁ、また来るね。」
「あぁ、待ってる。」
長屋の前でジェフリーと別れ、朝帰りをした海斗は、案の定友恵から厳しく叱られた。
「あの絵師の男とは別れなさい!」
「嫌だ!」
(母さんは、俺の事なんて何も考えていないんだ!)
そんな事を思いながら海斗は女学校から出て帰宅している途中、道端に胸を押さえて苦しそうにしている女の姿に気づいた。
「大丈夫ですか?」
「お気になさらず。すぐに治まりますから。」
「でも・・」
「本当に、大丈夫ですから。」
「え?」
女は口端を上げて笑った後、間髪入れずに海斗の鳩尾に拳を叩き込み、彼女を気絶させた。
「この娘で間違いない?」
「あぁ、ご苦労さん。」
男は女に金を渡すと、気絶した海斗をある場所へと運んだ。
そこは、色恋と愛憎が渦巻く遊郭だった。
「おお~い、居るかい!」
「うるさいねぇ、誰かと思ったらあんたかい。またうちに金を集りに来たのかい?」
「そんなんじゃねぇよ、開けろってば!」
満楼の女将・英子は大きな溜息を吐いた後、裏口の戸を開け海斗を背負った男を中へ入れた。
「その娘は?」
「掘り出し物さ。」
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海斗が両性具有設定です、苦手な方はご注意ください。
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―見て母さん、花嫁さんだ!
幼い頃に見た花嫁の髪を美しく飾る鼈甲の簪に海斗は心を奪われた。
―綺麗ねぇ。海斗、あなたもいつかお嫁に行く時に、あの簪を挿すのよ。
―うん!
あの頃はまだ、海斗は自分が簪を作る職人になるとは思っていなかった。
「海斗、何処に居るの!?」
海斗は、夜明け前に家を飛び出し、ある場所へと向かっていた。
そこは、海斗が住むお屋敷街から川を隔てた、お歯黒長屋と呼ばれる所だった。
「ジェフリー、居るの!?」
「何だ、誰かと思ったらお前か。」
長屋の中から顔を出したのは、海斗の恋人で絵師をしているジェフリー=ロックフォードだった。
長い金髪をなびかせ、衿を抜いた着流し姿の彼は、そっと海斗を中へと招き入れた。
「どうした、また母親と喧嘩したのか?」
「俺、もうあの家に居たくない!」
海斗はそう叫ぶと、ジェフリーの胸に顔を埋めた。
「カイト、お前の気持ちは良くわかる。だが、今は感情的になるな。」
「わかった・・」
「今夜はここに泊まるか?余り大した物はないが、飯位は作れる。」
「ありがとう。」
その日の夜、ジェフリーは海斗に家出した理由を尋ねると、彼女はこう答えた。
「ババア・・母さんが、女学校を卒業したら結婚しろって言うんだ。俺は、簪を作りたいのに・・」
「そうか。」
海斗の母・友恵は、良妻賢母の手本のような女性だと、以前海斗から聞いた事があった。
友恵は、女の幸せとは結婚して子を産み、家を守る事だと考えていて、女が手に職を持って働くというのは、彼女にとっては非常識な事だった。
現に海斗が通う女学校は、良妻賢母の花嫁学校だった。
「簪職人になるとしても、職人になるのは簡単じゃないぞ。俺だって今は絵師として成功しているが、それまでは長い下積み生活を送っていた。」
「俺はただ単に親に反抗しているだけじゃない、俺は自分の足で立って、親が敷いた道じゃなくて、自分で見つけた道を歩きたいんだ。」
「そうか、お前がそう思っているのなら、俺は応援するぞ。」
「ありがとう、ジェフリー。」
海斗はそう言うと、ジェフリーに抱き着いた。
「おいおい、そんな事をしたら、襲っちまうぞ?」
「あなたは、そんな事しないでしょ?」
「バレたか。」
そんな二人の様子を、破れた障子越しから一人の男が見ていた。
男は、東郷家で庭師見習いとして働いていた使用人だった。
過去形なのは、彼が海斗を襲おうとした所を友恵に見つかり、解雇されたからだった。
暫く中の様子を覗いていた男は、金髪の男が海斗の上に覆い被さるのを見た後、その場から去った。
「痕、つけないで・・」
「わかっているよ。」
長屋の外まで溢れ出そうな海斗のフェロモンを受け、ジェフリーの雄の本能が爆発した。
「愛しているよ、カイト・・」
「俺もだよ、ジェフリー・・」
二人が裸で抱き合っている頃、友恵は苛々しながら海斗の帰りを待っていた。
「奥様、奥様!」
「何よ、うるさいわねぇ。」
「お久し振りです、奥様。わたしの事を覚えていらっしゃいますか?」
「お前は・・」
解雇した使用人が居間に現れ、友恵は彼の全身から漂う悪臭に顔を顰めた。
「今日は奥様にいい話を持って来ましたよ。」
「誰か、この者を早くここから追い出しなさい!」
男は東郷家の裏口から外へと叩き出され、フケだらけの頭を掻き毟りながら、夜の闇の中へと消えていった。
「じゃぁ、また来るね。」
「あぁ、待ってる。」
長屋の前でジェフリーと別れ、朝帰りをした海斗は、案の定友恵から厳しく叱られた。
「あの絵師の男とは別れなさい!」
「嫌だ!」
(母さんは、俺の事なんて何も考えていないんだ!)
そんな事を思いながら海斗は女学校から出て帰宅している途中、道端に胸を押さえて苦しそうにしている女の姿に気づいた。
「大丈夫ですか?」
「お気になさらず。すぐに治まりますから。」
「でも・・」
「本当に、大丈夫ですから。」
「え?」
女は口端を上げて笑った後、間髪入れずに海斗の鳩尾に拳を叩き込み、彼女を気絶させた。
「この娘で間違いない?」
「あぁ、ご苦労さん。」
男は女に金を渡すと、気絶した海斗をある場所へと運んだ。
そこは、色恋と愛憎が渦巻く遊郭だった。
「おお~い、居るかい!」
「うるさいねぇ、誰かと思ったらあんたかい。またうちに金を集りに来たのかい?」
「そんなんじゃねぇよ、開けろってば!」
満楼の女将・英子は大きな溜息を吐いた後、裏口の戸を開け海斗を背負った男を中へ入れた。
「その娘は?」
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