遺伝屋ブログ

酒とカメラとアウトドアの好きな大学研究者です。遺伝学で飯食ってます(最近ちょっと生化学教えてます)。

先見の明の問題

2009-11-20 22:56:49 | BIONEWS
消化器系がんを9割検出 金沢大グループが新技術(共同通信) - goo ニュース
今日はちょっとこの研究室の知り合いに電話する用事があったのですが、このビッグニュースが流れたので遠慮しました。んなわけで、今日はこのニュースのお話をせななりますまい(といっても、別に内情を知ってる訳でもなんでもないのですよ)。
この仕事は第一内科の金子先生の研究室のお仕事でして、10年くらい前からスタートしていたプロジェクトだったはずです。DNAチップを使った癌診断は、この技術が生まれたときから世界中で目指されていたものでして、多額の資金と多くの研究者・技術者が投入されて熾烈な競争がなされてきました。しかし、これといって画期的な方法が何年もの間出てきてなかったんですよ。正直言って、僕はこの技術は役に立たずに廃れていく可能性さえあると思ってました。相変わらず、私ゃ、先見の明がありませんな。DNAチップというのは下の図でイメージしていただけたらありがたいんですけども・・・・難しいですね。

ヒト遺伝子の配列を持たせた短いDNAを一個ずつガラスプレートに固定して、その遺伝子の発現の変化を検知できるようにしたシステムなんです。測定しているのは、あくまでも変化でして、絶対量じゃないです。変化を検知するので、何から変化したかの基準のサンプルが大切です。パラメーターとなる遺伝子の数がヒトゲノムの『全部』からスタートして絞り込むんだけど、今回の仕事では約800くらいに絞り込んだそうな。この800の遺伝子がどう変わればどの臓器に癌ができたか推定するための演算というか・・・アルゴリズムというか・・・順列と組み合わせというか・・・そこらへんが肝なんでしょうな。それと重要なポイントは、血液というとっても採りやすいサンプルで検査を可能にしたということでしょう。
特許申請中ということですので実用化はまだちょっと先と思いますが、癌に関しては今でも『早期発見』が最も治療に大切なことなので検査技術の進歩は期待が大きいですね。

仕分け「競争力低下招く」 科学予算削減に各学会が意見(朝日新聞) - goo ニュース
いんやぁ、どこの学会の偉いさん達も大変ですな。とくにこの件に関する柳田先生のブログのコメント欄なんかエライことになってますよ。僕としてはビッグプロジェクトを止めて、お金を我々下々に配ってくれたら嬉しいんだけど・・・この程度の無駄カットじゃ、95兆円のアホ予算に対しては焼け石に水。こっちに回ってくる期待も少ないですなぁ。
この国の科学技術に対する予算は先進国中下から2番目でして、トルコよりもちょっとましって程度です。そもそも日本は科学技術立国なんか目指してこなかったというのが実情でしょう。

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コメント
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