遺伝屋ブログ

酒とカメラとアウトドアの好きな大学研究者です。遺伝学で飯食ってます(最近ちょっと生化学教えてます)。

揚げものにAGE

2016-02-01 22:40:51 | BIONEWS
学期末です。年度末です。プレーオフです。クライマックスシリーズです。学生さんもおいらも真剣必死です。
暦が進んでも冬の寒さ 外出は折り畳み傘と防寒を
キャンパスで人通りの少ないとこは雪が残ってます。根雪にはならないと思いますが・・・笑・・・寒々しいんだよなぁ。

さて、AGEのお話。AGEというのは、”Advanced Glycation End Products”の略でありまして、日本語で言うと『終末糖化産物』。アミノ酸と炭水化物が高温下にさらされるとできる反応化合物・・・アミノカルボニル反応って、聞いたことあるでしょ。食品を加熱するとが茶色くなって香ばしい香りが・・・そう、お焦げです。下の記事で問題になってるアクリルアミドもそうやってできる化合物の一つで、昨年だったか、ポテチにできてるって北欧の研究機関で発表されて問題になったんすよ。だから、AGEっていうのは「揚げ」のことだといってもいいんです・・・ここは笑うとこやで・・・。
アクリルアミド 炒め野菜など…懸念ややあり発がん性物質(毎日新聞)
ともかく、この問題が今頃日本にやってきた・・・遅いなぁ。内閣府・食品安全委員会の作業部会のことですから、慎重に検討していたのでしょう。発表の仕方次第でカルビーがピンチになるし。笑
〈以下引用〉
高温で揚げたり炒めたりした野菜などに含まれる発がん性物質「アクリルアミド」の摂取と日本人の健康への影響について「リスクは極めて低いが、動物実験の結果から、懸念がないとはいえない」との最終評価の結果案をまとめた。食品安全委員会は摂取量を減らすよう促している。〈中略〉今回の調査でも、人への健康影響は明確ではないとの結論になったが、動物実験でがんが認められた最少量と日本人の平均推定摂取量が比較的近いことから、「懸念がないとはいえない」との評価になった。作業部会は「特定の野菜を怖がる必要はないが、高温での調理時間を短くするなど家庭でできる範囲内で減らすのがよい」としている。

アクリルアミドは食品に含まれるアミノ酸(アスパラギン)と糖が120度以上の加熱によって反応して生じます。グルコースとアスパラギンを混ぜて2時間くらいオートクレーブにかければいいみたいなんよ。でも、まあ、普通に研究しているならアクリルアミドはラボにいくらでも置いてあるよね。ゲル作るのにいるもん♪

昔、大腸菌の平板培地を作る時にアンピシリンと間違ってアクリルアミドを入れたことあるんだけど、大腸菌増殖悪くなります。入れたもんは抜くことはできないから、「ま、大丈夫じゃね?」と思ってそのまま使ってみたら、あんまり大丈夫じゃなかった。んなもんで、ちょっとまじめに調べてみようかなと・・・。こんなことネットに公開してどうすんねんと自分で思ったりしますが、O大時代の師匠が研究をオープンにする人でしてな。「おまえのエゴのために科学の進歩を妨げるな」と真顔で言う人でした。出芽酵母の分子生物学が爆発的に広まったのは昭和の時代にそういうエライ人が多かったからなんですよ。今もそうだと思いたいです。誰か元気なW303-1A株ください。w

ただし、AGEというのは単純な化合物の単体ではなくて、アミノカルボニル反応ででけたいろんなものが混ざった総体みたいに考えなきゃいけない。そういう混沌としたAGEを用意するためにアミノ酸とグルコースを混ぜて1週間くらい37度でキープしてAGEを作って細胞毒性を検討したりする研究手法を聞いたことあるんですが、なかなか再現性がとりにくいそうです。まあそうだろうね。面白いと思うんだけどな。
それから人間の身体にAGEが蓄積して老化が進むという学説もあるそうです。ほら、「アミノ酸とグルコースを混ぜて1週間くらい37度でキープ」って条件は、人間の体内で実現可能でしょ。血糖値が高いまま保たれると血液中のアミノ酸とグルコースで化合物が生まれそうな気がしますよね。

さて、話題変わって・・・
「酒中仙」というのは、杜甫が詩友「李白」を詠んだ詩からとった言葉です。酒造米は愛山。山田錦以上の心白率をもつ酒造好適米だそうです。コクの深い出来なのに軽やかです。さすが立山が醸した酒です。冬の室温がちょうど旨いと思う。

李白一斗詩百篇
長安市上酒家眠
天子呼来不上舟
自称臣是酒中仙


本日のお酒:KIRIN 一番搾り とれたてホップ + 立山 特別純米 酒中仙
コメント
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