遺伝屋ブログ

酒とカメラとアウトドアの好きな大学研究者です。遺伝学で飯食ってます(最近ちょっと生化学教えてます)。

腸管病原細菌

2012-03-19 21:56:54 | BIONEWS
焼肉酒家えびす中毒、原因は大腸菌汚染…厚労省(読売新聞) - goo ニュース
焼き肉チェーンの集団食中毒、重症化は「溶菌現象」影響か?

私たちからユッケや生レバーをうばった事件のお話です。焼き肉チェーン「焼肉酒家えびす」の集団食中毒事件について、厚生労働省は調査結果を薬事・食品衛生審議会に報告しました。時間かけましたねー。ま、この食中毒事件は今までの病原性大腸菌による被害と比べて異常に重篤な患者の発生率が高く、幼い人命が失われてしまいました。時間をかけてもしっかりした解析をすべきです。
重症化率の高さはこの事件が起こってからすぐにいわれてきました。ベロ毒素が変化したのか、細菌が強くなったのか・・・結果は、なんと細菌が溶菌しやすくなってたという予想外な。より弱くなってたのな。溶菌しちゃうから、細菌は溶けてなくなって毒素が外へ出てしまってたと考えられるそうな。
調理法の問題としては、ユッケを調理する際、複数の肉を混ぜ合わせていたのがあかんかったらしい。そりゃあかんやろ・・・・ま、安いだけのことはあったわけです。

東大医科研、腸管病原細菌の粘膜上皮への侵入と免疫機構への対抗手段を解明(マイナビニュース) - goo ニュース
さて、もうちょっとレベルの高いお話もしましょう。
赤痢菌が腸へ侵入する仕組みについて新しい発見がありました。ばい菌が入ってきたら、最初は自然免疫系が働いて炎症反応が起きるのですが・・・炎症をばい菌が起してると思ってる人がいますが違いますよ。体を守るために自分の細胞が起しているのです。赤痢菌はこの炎症反応を起こす我々の信号伝達系をストップさせて、まんまと侵入していたのです。赤く腫れ上がり発熱してるのはばい菌をやっつけるためです。それを奴らは抑制してしまいます。そのタンパク質はOspIといいまして、UBC13の100番目のグルタミン残基を脱アミド化修飾してグルタミン酸に変換する酵素です。でっかいアミノ酸の電荷がズドーンと変わりますからUBC13のE2活性が低下してしまい、結果的にその下流で働くNF-κBが活性化されずに炎症が起こらなくなります。分かった?
引用した記事は長々と最新の研究手法で分析された内容を述べていますが、分かったことはシンプル。
ついでに、宿主細胞への赤痢菌侵入に伴い、その侵入部位にジアシルグリセロール(DAG)の集積が認められる。そのDAGの集積がNF-κB経路の活性化の引き金となることも示しました。病原性の細菌はこちらの防御反応を抑制する仕組みを持っているはずで、それに対する理解は食中毒から我々を守ることに役立つはずです。

本日のお酒:SUNTORY トリスハイボール ゆず + 雙喜 紹興酒
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