C.Y.リョン(梁振英)氏が、第4代の香港特別行政区の行政長官に選出されましたが、正式には北京で任命の国務院令の公布を受ける必要があるため、4月10日北京の中南海・紫光閣で温家宝総理から、国務院令の手交を受けました。
その際、温家宝総理が語った言葉を紹介したいと思います。
■[1]
□ 特区行政長官の職責をちゃんと果たす為には、香港の各界の人々を団結させ、香港人全体の聡明なる才智を十分に発揮させなければなりません。各界の人々との意思疎通や交流を強化しようと思えば、意見の不一致や矛盾を解消するよう努めなければならず、真に「衆知を集め、広く良識を求める」ことができなければならず、心を合わせ協力し、共に発展を目指さねばなりません。公正で、潔白でなければなりません。「政(まつりごと)とは、正すこと也。子が正を以て導けば、誰ぞ敢えて正しからざる?」普段の行いを正しくし、政治を正しく行ってこそ、人心を結集させ、人々の力を集め、新たな発展を切り開くことができるのです。
(4月10日「温家宝、梁振英(C.Y.リョン)と会見、国務院令を公布」《新華網》)
ここで、古語の引用が2か所出ています。
◆ “集衆思、広忠益”: これは、《三国志・蜀書・董和伝》からの引用です。董和は劉備入蜀前からの益州の太守で、清廉潔白な人で、蜀の人心を得ていました。劉備入蜀後も宰相に取り立て、重用しました。先の言葉は、諸葛孔明が丞相に就任後、群臣を教え諭す為に董和の業績を引用したものです。
◆ “政者、正也。子帥以正、孰敢不正”: これは、《論語・顔淵》からの引用です。魯の重臣、季康子が孔子に政治について尋ねたことに対する、孔子の言葉が、論語に収録されたものです。
C.Y.リョン氏は、元々、次期行政長官の本命と目されていた唐英年(ヘンリー・タン)氏に挑戦し、敢えて親中派を二つに割って出馬し、香港市民の人気も今ひとつと言われているだけに、温家宝総理としても、今後、香港の行政をうまくやってもらう励ましとして、このような発言をしたものと思います。
今年暮れには、1年の行政の成果の報告に、C.Y.リョン氏はまた北京を訪問されますが、その際は、どのような発言が出るでしょうか。
ところで、香港、マカオの両行政長官は、毎年年末に北京の国務院に、1年間の行政成果の報告に行きますが、このことを中国語で“述職”といいます。“述職”とは、本来、「在外使節が本国に帰って報告する」ことで、現在は、香港、マカオの行政長官の年度報告にこの言葉が使われています。中国では、外交や政治で言葉の使われ方は極めて厳格です。こうした言葉の使い方に注意を払うことも、政治のウォッチングでは重要だと思います。
今回は、古語の引用の例を、もう一つご紹介したいと思います。
■[2]
□ 王立軍、二―ル・ヘイウッド死亡事件と、薄熙来が著しく紀律に違反した問題は、再度我々に次のように警告を発した:党の紀律の執行を堅持し、国家の法律を遵守し、処世の上で人としての本分を忘れず、政治を行うに公僕の心を保ち、権力を使って自分だけの利益を求めることをせず、如何なる状況下でも法律、紀律、道徳の最低ラインを外れることがなく、適切に自重し、自省し、自警し、自ら鼓舞してこそ初めて、真に清廉潔白に官吏となり、正々堂々と生活をし、清く正しく仕事をすることができるのだ。
「奉公するに法に従えば上下平らかならん、上下平らかならば、国は強し。」複雑で変化の多い国内外の環境に直面し、困難で負担の大きい改革、発展を安定的に進めるという任務に直面し、私たちは引き続き我が国の発展の重要な戦略的な好機をつかまえ、利用し、様々なリスクや挑戦に効果的に対応し、第12期五カ年計画期の経済社会発展の目標任務を円満に完了させ、良好な社会秩序を備えさせ、人民全体の団結、奮闘により、新たな局面を切り開かなければならない。
(4月12日《人民日報論説委員: 自ら進んで党規、法律を遵守しよう》
これはご存じ、王立軍事件に端を発した、薄熙来の中央委員資格剥奪、二―ル・ヘイウッド殺害(?)事件の再捜査といった事件の進展の中で、共産党員に改めて党紀粛正、一部の幹部の特権意識の見直しを迫ったものです。
◆ “奉公如法則上下平,上下平則国強”: 出典は、司馬遷・史記《廉頗藺相如列伝》。趙奢が税務官となり、趙の平原君の家に税の徴収に行った。平原君の家の者が税を払おうとしないので、趙奢は相手を厳罰にしようとしたので、平原君は怒って趙奢を殺そうとした。そこで、趙奢はここで挙げた言葉を言い、平原君に国を強くするには法をしっかり守るべきだと訴えたところ、平原君は自分の過ちを認めた、という話です。
正に幹部が権力を笠に、不正をもみ消そうとする風潮を改めようと諭す、ぴったりの例といえるでしょう。
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