中国語学習者のブログ

これって中国語でどう言うの?様々な中国語表現を紹介します。読者の皆さんと一緒に勉強しましょう。

中国語の構造:詞の構造(2)

2010年08月29日 | 中国語
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                二 合成詞の構成形式

  前回は、詞が、それを構成する語素の数により、単純詞と合成詞に分かれること、また合成詞の中で、不定位語素と定位語素とが結合した語の種類、特徴を見てきました。今回は、引き続き、不定位語素どうしが結合した合成詞について、見ていきたいと思います。

(二)不定位語素が互いに融合して構成される合成詞

 異なる不定位語素が互いに融合し構成される合成詞が、一般に言う「複合語」である。この種の合成詞は、現代漢語の主要なもので、最も数の多い、詞を構成する型(格式)であり、中国語の合成詞のほとんどがこの形式で構成される。

  この種の合成詞の語素の結合方式は同じではなく、以下のいくつかの主要な種類に分類することができる。

1.連合式 
 二つの語素が並列に融合して構成されるもの。二つの語素の意味の関係の違いにより、これは更に二つに分かれる。一つは同義の語素の結合、一つは反意の語素の結合である。

 同義の語素の結合の例は:
 ◆ 第一組
     語言  智慧  思想  群衆  樹木  源泉  形態  真実
     学習  生産  斗争  迷惑  捨棄  脱離  閲読  掩飾

 ◆ 第二組
     江湖  手足  矛盾  線索  山水  筆墨  眉眼  皮毛

 ◆ 第三組
     国家  兄弟  干浄  窓戸

 意味の上から言うと、これらの詞の二つの語素の意味は並列で、平等である。しかし、その中にも違いは存在し、第一組の詞の二つの語素は、意味の上で完全に並列で、互いに説明したり、注釈をすることができる。第二組の詞は二つの語素が結合することで、これらの元の意味に関連して、より抽象的で、概括的な意味を表す。これらの詞は、語素の意味から解釈することができない。第三組の詞の意味は、常にその中の一つの語素を基礎とし、もう一つの語素の意味は、完全に消失しているか、或いは補足や引き立ての役割しか果たさない。

 反意の語素の結合で構成される詞は、例えば:
     高低  早晩  始終  東西  利害  往来  伸縮
     長短  是非  反正  横竪  開関  収発  動静

  これらの詞の意味は、一般に比較的抽象的であり、直接語素の意味から解釈することはできない。これらを使ったり理解する上で、当て推量する(“望文生義”)ことは避けるよう、注意しなければならない。

2.附加式
 語素の間に附加、修飾の関係があるもの。この種類の詞は、常に前の語素が、後ろの語素を修飾、限定するので、詞全体の意味の構成では、後ろの語素が主になる。例えば:
     紅旗  草図  壁画  内部  駝毛  火車  単干  狂歓
     粗心  熱愛  筆談  晩会  深入  春耕  秋収  四季

 意味の上から言うと、この種類の詞の最初の語素は異なった角度から二番目の語素を修飾、限定する。例えば、性質(“紅旗”)、所属(“駝毛”)、状態(“狂歓”)、方式(“単干”)、数量(“四季”)、程度(“深入”)、時間(“春耕”)などを表すことができる。

3.補充式
 語素の間に補充説明の関係があるもの。この種類の詞は、常に後ろの語素が、前の語素を補充説明する。詞全体の意味の構成では、最初の語素が主になる。例えば:
     認清  説明  改正  打倒  提高  抓緊  看透
     降低  推翻  煽動  縮小  放大  打動  変成

 これらの詞は何れも動詞であり、前の成分が動作を表し、後ろの成分が動作の結果や趨勢を表す。これらの中のいくつかの詞は、しばしば間に“得”を挿入することにより可能を表し、“不”を挿入することにより不可能を表すことができる。

 また、例えば、
     船只  槍支  房間  書本  物件  人口  花朶  馬匹

 これらの詞は、前の語素が物を表し、後ろの語素がその物の計量単位を表す。このような構造も、一種の補充式と言うことができる。なぜなら、後ろの計量単位を表す語素は、それにより前に表示した物の語素を補充説明している、と言うことができるからである。

  しかし、文法上は動詞、形容詞の後ろにのみ補語を伴うことができる。然るに、ここでは詞の構成上、名詞性の語素の後ろにそれを補充する語素が付帯している。このように、「名詞+量詞」の補充式により構成される詞は、或いは“造句法”と“構詞法”の構造方式が完全には一致しないという現象を代表しているのかもしれない。

4.陳述式
 語素の間に陳述と被陳述の関係があるもの。この種類の詞の前の語素は陳述される対象であり、後ろの語素が陳述部分である。例えば:
     眼花  心虚  胆怯  心細  性急  年軽

5.支配式
 語素の間に支配と被支配の関係があるもの。この種類の詞の前の語素は動作や行為を表し、後ろの語素は動作や行為が支配する対象を表す。例えば:
     帯頭  動員  簽名  耐労  示威  挙重  傷心  吹牛
     知己  監工  司令

 以上の五種類の類型は、最も簡単な、二音節の合成詞を分析して得られた結果である。現代漢語では二音節の合成詞が大部分を占める。したがって、この五種類の形式の合成詞はその典型的な意味合いを持つ。

  しかし、二つの語素以上の複音節の合成詞では、詞の内部のそれぞれの成分の間の関係がずっと複雑であり、それらはしばしば様々な方式で何層かに分かれて次第に構成され、一種の「総合的」合成詞と言うことができる。このような詞については、異なる構造関係から、層ごとに分析していかなければならない。

 例えば、“試験田”という詞は、先ず“試”と“験”の二つの語素の結合から、連合式の複合語素が構成され、更に“田”と結合して附加式の合成詞が構成されている。“人造絲”という詞は、“人”と“造”の二つの語素が結合して陳述式の複合語素を構成し、更に“絲”と結合して附加式の合成詞が構成されている。

 私たちは異なる詞を構成する型から順番に分析してはじめて、これらの構造や層の関係を明確にすることができるのである。

【出典】胡裕樹主編《現代漢語》重訂本 上海教育出版社1995年

 以上、2回にわたり、詞の構造について見てきました。それ以前に見てきた語素、そして詞、更に詞組により、語句は構成されていることになります。
 通常、語学学習では、先ず文法、中国語で言うと語法から入りますので、いきなり品詞の分類云々の説明がされますが、それだけでは分かりにくかった語句の違いが、こうした分析により、理解しやすくなると思います。

中国語の構造:詞の構造(1)

2010年08月28日 | 中国語
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 これまで何回かで、中国語の文法上の最小単位は“詞”、一方、独立して運用でき、意味を有する言語の最小単位を“語素”といい、一般に漢字一文字が“語素”に当たり、“詞”はこの語素の組合せにより構成されることを見てきました。“詞”は文法上の基本単位であることは分かりましたが、それでは“詞”はどのような構造になっているか、というのが、今回のテーマです。

                    一 詞の形式

 詞の形式は、二つの面から見ることができる。一つは音節の数による区分。もう一つは、詞を構成する語素の数による区分である。

(一)単音詞と複音詞

 単音詞とは、一つの音節で構成される詞である。例えば:
     天  地  人  牛  馬  走  吃  大  紅  一  二

 複音詞は、二つ、或いは二つ以上の音節から構成される詞を指す。例えば:
     藝術  討論  問題  運動  見解  実際
     出発  定義  語言学  候選人  人民性  噴気式
     生産力  唯物主義  物理学家

 現代漢語の語彙の中では、二音節で構成される詞が多数を占める。

以下の文章を見てみよう:
     現実主義  文藝  在  中国  有  悠久  的  歴史  和
     很  高  的  成就, 杜甫  的  詩, 関漢卿  的  戯劇,
     曹雪芹  的  小説, 都  是  代表  作品,
     在  文学史  上  已  占有  重要  的  位置。

 この34個の詞で構成される文章の中で、二音節の詞は13個あり、それ以外では、単音節の詞が17個、三音節の詞が3個、四音節の詞が1個ある。

  言語の進化、発展から見ると、現代漢語の語彙の特徴はより明確になる。現代漢語の発展過程で、多くの単音詞は次第に二音詞に変化した。多くの三音節以上の詞や詞組も、短縮されて二音詞となった。例えば:
     民 ― 人民  友 ― 朋友  学 ― 学習  信 ― 相信
     師 ― 老師  石 ― 石頭  雖 ― 雖然  但 ― 但是

 少数の科学技術用語を除き、短音節の詞は再び生まれてきていないかのようである。したがって、二音節の詞が優勢を占めるというのは、現代漢語の語音形式上の重要な特徴である。

 更にもう一歩、現代漢語の語音形式を研究すると、それらの中のいくつかの特殊な形式を発見することができる。それは畳音(畳音詞:同一の音節の重複により構成される詞)、双音(双声。二音節語の二つの文字が声母、つまり子音を同じくすること)、畳韻(二音節語の二つの文字が韻母を同じくすること)、などである。これら特殊な形式を備えた二音詞は、語音表現上、しばしばその文章作品に、音楽美を備えさせ、そこから好ましい表現効果をもたらすことができる。

(二)単純詞と合成詞

 それぞれの詞の異なる内部の構造形式により、現代漢語の詞は単純詞と合成詞の二つに分けることができる。一つの語素から構成される詞は単純詞と呼ばれる。例えば:
     人  少  向  芙蓉  疙瘩  馬達  白脱
     托拉斯  法西斯

 いくつかの語素が組み合わさり構成された詞を合成詞と呼ぶ。例えば:
     意義  胖子  拖拉机  自行車  社会主義

 中国語の中の合成詞は、多くは二つの語素から構成され、二つ以上の語素で構成されるものもある。二つ以上の語素から構成される合成詞で、それぞれの語素の間の関係は、しばしば異なる。合成詞の各語素の間の関係をはっきりさせることは、ことばの意味を正確に理解するのに役立つ。例えば、“老人家”は“老的人家”のことではないし、“反現実主義”は“反対現実主義”のことではない。

  単純詞と単音詞、合成詞と複音詞は、異なった基準に基づき区分されたものであり、それらの関係は、下記のように表すことができる。

単純詞     天、 地、 人、 走                 単音詞
        
単純詞     芙蓉、 葡萄、 托拉斯、 奥林匹克       複音詞                                       
                                           
合成詞     意義、 語言、 胖子、 卓子、 拖拉机     複音詞
                                         
合成詞     邏輯学、 法西斯主義                複音詞


                   二 合成詞の構成形式

 現代漢語の語彙の中で、合成詞は数の上で絶対多数を占めるだけでなく、多種多様の構成方式がある。その中で重要なものは、下記のいくつかの様式である。

(一)不定位語素が定位語素と連結して構成される合成詞

 これは、一般に言うところの派生詞である。これは三つの種類に分けられる。(“定位語素”、“不定位語素”については、<語素から語句の構造を見る>の回を参照のこと。)

1.定位語素が前に置かれるもの
 現代漢語には、“老”、“阿”、“可”、“反”、“非”、“汎”、“超”、“無”といった定位語素がある。これらの大部分は、語彙としての意味を表すだけでなく、文法的な意味(接頭語になる)も表わす。例えば:
     老鷹、 老虎、 老師、 阿姨、 阿爺、 阿哥、 可変、 可靠
     反封建、 反法西斯、 非党、 非正式、 非重点、 汎神論
     汎霊論、 汎美主義、 超時代、 超声波、 超音速、 無常
     無窮、 無比

2.定位語素が後ろに置かれるもの
 定位語素が後ろに置かれる合成詞は、現代漢語の中では比較的多い。主要なものに、“子”、“儿”、“頭”、“性”、“者”、“員”、“家”、“手”、“化”などがある。その中には、単純に文法的な意味を表すもの(語尾について名詞化する)、一定の語彙的な意味を表し、且つ語法的な意味も表わすものがある。例えば:
     桌子、 胖子、 兔子、 活儿、 鳥儿
     錯儿、 木頭、 听頭、 苦頭
     独立性、 階級性、 創造性
     学者、 作者、 労働者、 学員、 職員、 通訊員
     作家、 画家、 思想家、 旗手、 歌手、 坦克手
     同比、 異化、 人格化、 軍事化

 この他、中国語には常に二つの語素の中間に置かれる不自由語素がある。(“自由語素”、“不自由語素”については、<語素から語句の構造を見る>の回を参照)すなわち、“里”、“得”、“不”などである。

  “里”を用いて構成される詞には、貶義、つまり蔑みの意味が含まれる。例えば: 
      傻里傻気  土里土気  胡里胡涂  古里古怪

・傻里傻気 sha3lisha3qi4 間が抜けた様子
・土里土気 tu3litu3qi4 野暮ったい。田舎くさい
・胡里胡涂 hu2lihu2tu 道理がはっきりしない。ぼんやりしている
・古里古怪 gu3ligu3guai4 変てこである。風変わりである

  “得”、“不”を用いて構成される詞には、次のようなものがある。
     吃不消  来不及  対不起
     吃得消  来得及  対得起

 ここで、上記のような詞の中での“得”、“不”と、“后補詞組”(后補短語ともいう。動詞、形容詞と、その補充的な説明の詞とで構成される詞組)での“得”、“不”とは区別しなければならない。后補詞組で、“得”、“不”は詞である。例えば、“搞得好”、“看得懂”、“打不破”、“弄不坏”などの詞組で、この中の“得”、“不”は、これだけで単独の詞であるので、取り去ることができる。それに対し、上記の“吃不消”、“来不及”といった詞の中では、“得”、“不”は一つの詞を構成する一部分となっており(独立した詞ではなく、詞を構成する語素であるので)、取り去ることはできない。

3.一つの不定位語素の前後が何れも定位語素であるもの
 この種類の合成詞は、現代漢語の中ではあまり多くない。例えば、“反法西斯主義者”、“可靠性”などがそうである。

  以上、不定位語素と定位語素の結合によって構成される詞を見てきたが、以下の点に注意しなければならない。

  第一、現代漢語の定位語素は、大部分がかつては不定位語素であったものが変化してできたもので、虚化、つまり本来持っていた意味を失った結果である。これは、ことばが進化する過程で起こる現象で、形成過程のものもあり、虚化の程度はそれぞれ異なる。したがって、これと、まだ虚化しておらず、形式上は定位語素と同じ“詞根”(自由、或いは不自由な不定位語素。<語素から語句の構造を見る>参照。「語幹」と訳される)とは、区別しなければならない。例えば:
     “老鷹”の“老”と“老調”の“老”は異なる。
     “緑化”の“化”と“変化”の“化”は異なる
     “卓子”の“子”と“棋子”の“子”は異なる
     “創造性”の“性”と“男性”の“性”は異なる
     “木頭”の“頭”と“香煙頭”の“頭”は異なる

 これらは何れも、前者が虚化した定位語素、後者は詞根である。

  不定位語素と定位語素の区別: 定位語素の意味は比較的抽象的で、概括的で、時には文法的な意味を表すだけである。一方、不定位語素の意味は具体的で、語彙としての意味を表す。

 第二、いくつかの定位語は、依然として語彙としての意味を持っている。例えば、“阿”は常に親しみやすく温かい感情的色彩を持っている。試しに、“姨媽”、“姨姨”と“阿姨”、“哥哥”と“阿哥”を比べてみてほしい。

  第三、定位語素は、詞を構成する中で、常に類似化する作用を持っている。例えば、後ろに“頭”、“子”の付く詞は、一般に全て名詞である。後ろに“化”の付く詞は、一般に全て動詞である。後ろに“性”の付く詞は、一般に抽象的な意味の名詞である。

【出典】胡裕樹主編《現代漢語》重訂本 上海教育出版社1995年

  合成詞にはもうひとつ、不定位語素どうしが結合してできたものがありますが、これについては、次回に見ていきたいと思います。

中国語の構造:詞と詞組の違いについて

2010年08月26日 | 中国語
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 中国語の構造を、語素からはじめ、文法の基本単位である詞まで見てきましたが、今回は、詞を組み合わせた詞組を取り上げます。詞組は、詞を組み合わせたものでありながら、おもしろいことにその意味や構造に違いがあります。そして、そのことばが詞であるのか、詞組であるのかを分析することは、文の意味、構造を理解する手助けになります。それでは、詞と詞組の違いについて、見ていきましょう。

                       詞と詞組

 詞は語素から構成され、詞組は詞から構成される。詞組は“短語”とも呼ばれ、詞より大きい言語単位であり、二つ、或いは二つ以上の実詞で構成され、且つ文にならない言語単位である。詞と詞組の区別は以下の三点から説明できる。

  意味の上から見ると、詞組も明確な概念を持っている。例えば、“感謝母親”、“生産的知識”、“革命的意志”といったものだが、詞のような簡単な概念を表すのではなく、複合的な概念を表す。

 語音構造から見ると、詞の内部では停頓(ポーズ)は許されないが、詞組の内部はポーズを置くことができる。同じ“東西”を、詞の時(「もの」の意味)と詞組の時(「東側と西側」の意味)とで比較するとよくわかる。詞の“東西”(発音はdong1xi)の語音構造は固定的で、“西”は軽声であり、末尾にのみポーズを置くことができる。一方、詞組の“東西”(発音はdong1xi1)では、“西”は軽声ではなく、語音構造はあまり固定しておらず、中間にポーズを置いても構わず、また“東和西(dong1 he2 xi1)”と言うこともできる。

 文法面から見ると、詞は文法的に独立して運用できる最小の単位である。詞組も、文法構造に則った運用単位であるが、最小ではなく、これを更に詞の単位に分けて分析することができる。例えば、“感謝母親”は「動詞+賓詞」と分析でき、“生産的知識”は「定語+中心語」と分析できる。

  詞と詞組を区別してやることは、文の構造、意味を理解する上で、重要である。現代漢語の語彙は、二つの不定位語素から構成される合成詞が絶対多数を占めている。その中のいくつかの語素は、単独で使われ、詞となる。しかし、これらの構成様式は、詞組の構成様式とよく似ているため、このことは、いくつかの詞と詞組を混同しやすくしている。例えば、“黒板”と“白花”は何れも附加式の構造である。“骨肉”と“血肉”、“心腸”と“胃腸”は何れも連合式の構造である。“打場”と“打虎”は支配式の構造である。“頭痛”(“傷脳筋”、頭を悩ます、の意味で使った時)と“手痛”は陳述式の構造である。それでは、これらのどれが詞で、どれが詞組なのだろうか。これについても、概念の内容、音節の特徴、結合関係の三つの面から回答を求めることができる。

 詞と詞組は、概念の表現の上で、一定の違いがある。詞が表現する概念は一般に比較的単純で、固定的である。したがって、合成詞の中で語素が表す意味は融合されて一つになり、簡単には付け足すことができない。例えば、“黒板”は“黒的板”ではないので、詞である。“白花”は“白的花”であるので、詞組である。“骨肉”(肉親、緊密な間柄の意味)は、“骨和肉”ではないので、詞である。“血肉”は“血和肉”であるので、詞組である。“打場”(脱穀すること)は“打場地”ではないので、詞である。“打虎”は“打老虎”であるので、詞組である。“頭痛”は“頭部疼痛”ではないので、詞である。“手痛”は“手部疼痛”であるので、詞組である。これらは、意味の上からの区別である。

 詞の音節の特徴も、詞と詞組を区別する参考条件になる。中国語の詞は多数が二音節である。したがって、二音節の形式が、しばしば現代漢語の中の詞の語音形式と考えられる。しかし、この特徴は絶対的なものではない。なぜなら、全ての二音節構造の語が詞であるわけではなく、また二音節でない詞もあるからである。音節の特徴を応用して詞と詞組を区別する時は、その他の面の特徴と併せて分析しなければならない。

 詞と詞組の区別で、最も重要なのは、これらの各構成成分の間の結合関係がそれぞれどうなっているかである。合成詞の各成分の間では、結合関係はたいへん緊密で、勝手に切り離したり、随意に別の成分を加えたりすることはできない。例えば、“長短”は、詞として使う場合、“長度”(長さ)、“意外的変故”(意外なできごと)、“是非”(善し悪し)などの意味であり、したがって分解して解釈することはできず、“長和短”と言うことはできない。一方、詞組の“長短”は異なり、分解して解釈することができ、別の詞を間に加えることができる。同様に、詞としての“語言”は“語和言”と言うことはできない。詞としての“水土”(気候風土の意味)は“水和土”と言うことはできない。

 詞と詞組は明確な区別があるとともに、密接な関係があり、詞組が詞に転化したり、詞が詞組に転化することができる。これについては、以下の二つの面に分けて考えることができる。

(一)詞組の短縮、凝縮

 現代漢語の中のいくつかの詞組、とりわけ事物の意味を表す詞組は、その中のいくつかの成分を抽出して略称とすることができる。これは、しばしば詞組が短縮され、新たな詞が構成されるプロセスである。例えば:

     整頓作風 → 整風     掃除文盲 → 掃盲
     安全理事会 → 安理会     中国語言文学系 → 中文系

 略称の形式で通常見られるのは、以下のいくつかのやり方である。

1.名称全体の中から中心成分を取る。例えば:
     中国人民解放軍 → 解放軍
     中華人民共和国国務院 → 国務院

2.二つの並列する成分の中の共通の語素を省略する。例えば:
     中学小学 → 中小学     工業農業 → 工農業
     理科工科 → 理工科     海軍陸軍空軍 → 海陸空軍

3.詞組の中のある成分を抽出する。例えば:
     全国総工会 → 全総     文化教育 → 文教
     経済委員会 → 経委、経委会     五月四日 → 五四

4.数を表示し、概括する。例えば:
     初伏、中伏、末伏 → 三伏
     身体好、学習好、工作好 → 三好

     開口呼、斉歯呼、合口呼、撮口呼 → 四呼

(字音を韻母で分類する時、iまたはiで始まる韻母の字音を“斉歯呼”、uまたはuで始まる韻母の字音を“合口呼”、ű またはűで始まる韻母の字音を“撮口呼”、それ以外の韻母の字音を“開口呼”という。“四呼”はこれらの総称)

(二)詞の分解、或いは分裂

  いくつかの合成詞は、しばしば分解され、その中間に別の成分を挟むことができる。例えば:

   理髪 → 理一次髪   革命 → 革保守派的命   鞠躬 → 鞠個躬
   看見 → 看得見、看不見   提高 → 提得高、提不高

 詞を分解し、別の成分を挿入して詞組を構成することは、詞の本質的な特徴ではなく、全ての詞がこのように分解できる訳ではない。その範囲は限定され、少数の支配式と補充式の合成詞だけがこのようにでき、しかも挿入できる詞も限られたものだけである。

 それゆえ、詞を勝手に分解してはならない。例えば、“決議”を“決個議”と言ったり、“動員”を“動一次員”と言ったり、“立正”を“立一下正”、“駕駛”を“駕一次駛”と言うことはできない。

 詞と詞組はこのように密接な関係にあり、互いに詞から詞組、詞組から詞へと転化することができる。言語の建築材料としての語彙は、ことばの中のあらゆる詞を含むだけでなく、成語、歇后語といった固定詞組も含むのである。

【出典】胡裕樹主編《現代漢語》重訂本 上海教育出版社1995年

 以上、何回かに分け、語素、詞、詞組という言語単位から、中国語の構造を見てきました。しかし、中国語の構造を文法的に見る時の基本単位は詞です。そこで、次回からは、詞の構造について、詳しく見ていきたいと思います。

中国語の語句の構造:文法上の最小単位、“詞”

2010年08月23日 | 中国語
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 前回まで、中国語の語句の最小単位である語素についてみてきました。今回は、語素より1ランク上の構成単位で、文法上の最小単位である“詞”について、見ていきます。

                                              詞と詞滙(語彙)

  “詞”は一定の意味を有し、固定した語音形式を備え、独立して運用できる、文の最小の構成単位である。通常の文章の一句、一句は、“詞”、或いは詞を組み合わせた“詞組”で構成されたもので運用されている。例えば:

  我応該感謝母親,她教給我生産的知識和革命的意志,鼓励我以后走上革命的道路。

 この文を、詞で区分すると、次のようになる。

   我  応該  感謝  母親  她  教給  我  生産  的  知識  和
   革命  的  意志  鼓励  我  以后  走  上  革命  的  道路

 どうしてこのように区分するのか。これは、詞の意味、語音構造、文法機能の三つの面から説明できる。

1.意味からの分析
 詞は“実詞”と“虚詞”の二つに大きく区分される。実詞は主に語彙(“詞滙”)の意味を表すのに用いられる。つまり、通常これを用いて、完全な、確定した、他の詞と相対立する概念を表す。例えば、“我”、“応該”、“感謝”、“母親”、“革命”、“知識”などがそうである。

 虚詞は主に文法的な意味を表す。つまり、通常これを用いて、実詞と実詞が語句の組合せの中での相互の関係を表したり、文の中での語気を表す。例えば、“的”、“和”、“嗎”などがそうである。

 実詞であれ虚詞であれ、具体的な文の組織の中では皆、明確な意味を持っている。例えば、上記の文で言うと、“我”は「自称」を表し、“応該”は“応当”、“感謝”は“感恩”、“母親”は「子供のいる婦人」の意味である。“的”はここでは偏正構造(前後二つの「成分が修飾(限定)するもの」+「修飾(限定)されるもの」で結ばれている構造)の中での修飾関係を表す。“和”は聯合構造の中での並列関係を表す。

2.語音構造からの分析
 詞は一般に完全な、固定した語音構造を備えている。同時に、このような語音構造は、一般にその末尾においてのみ、停頓、つまりポーズを入れることができる。例えば、上の例文では、それぞれの詞の間でのみ、このようにポーズを入れることができる。
     我  応該  感謝  母親  她  ……

  次のようにポーズを入れることはできない。
     我応  該感  謝母  親她  ……

3.文法からの分析
 文の組織機能において、詞は文法成分になることができる。実詞は単独で文法成分になることができ、虚詞はしばしば実詞といっしょに文法成分になる。実詞一つ一つは皆、最小の独立した単位として、語句組織の中の一つの成分に充当される。例えば、上の文の例では、“我”、“応該”、“感謝”、“母親”は何れもこの文を構成する要素である。虚詞については、しばしば文の構造の中で実詞と組み合わさり、その作用を顕示する。例えば、“生産的知識”、“革命的意志”、“成功的道路”の中の“的”は、このように用いることで、これら詞の組み合わさった“詞組”の中の修飾関係を表す。“生産的知識和革命的意志”の中の“和”は、このように用いることで、この“詞組”の中の並列関係を表す。

 どれが“詞”であるかを確定するのに、最も重要なのは、詞が「独立して運用できる最小の構造単位である」という点である。「独立して運用できる」ことから、詞より小さい単位は排除され、「最小」であるから、詞より大きい単位は排除される。例えば、上の例文で、“意志”をもし“意”と“志”に分けても、現代漢語ではそれぞれ単独で使用できない。“生産”を“生”と“産”に分けると、“産”は単独で使用できない。“生”は単独で使用した時の意味が、“生産”と異なる。したがって、“意志”、“生産”は独立して運用できる最小の単位、詞である。

 通常、詞を確定する方法は、次の通りである:
(一)単独で用いることができ、単独で回答となるものが“詞”である。

 この基準でみると、上の例の“我”、“応該”、“感謝”は何れも“詞”である。しかし、二つの状況に注意しなければならない。一つは、二つ、或いは複数の語素が組み合わさったユニット(単位)は単独で使えないか、単独で使われるケースが稀である。例えば、例文中の“教給”、“以后”。また例えば、“人造”、“国際”、“越冬”、“多辺”、“可控制”などがそうである。これらはこの組合せで文法成分となることができるので、これらも“詞”である。

 欧米の言語は、詞に区分することが容易であるが、語素に区分することは比較的難しい。一方、中国語では、語素に区分することは容易だが、詞に区分することは比較的難しい。これは、語素と詞はこれらの基礎は口語の中に存在するけれども、人々は書面に書いた時の区分を基準に考えるからである。中国語は、書面では漢字で書かれる。1漢字=1語素が基本であるので、語素がベースとして書かれていることとなり、詞に分けて書かれてはいない。これはまた、文の構造を詞に分けて議論する時、しばしば異なる見方が出てくる由縁である。

(二)一つの文の中の全ての単独で使うことができ、文法成分になることのできる単位を区分けした時、残った、単独で使うことができず、しかも一つの詞の構成部分ではないものも、“詞”である。

 虚詞はこの方法で確定することができる。例えば、上の例文の“的”、“和”がそうである。

(三)拡大法(“拡展法”)で調べた時、ある一つの言語単位の中間に別の成分を挿入することができないものは“詞”である

 例えば、“白菜”は“白的菜”と言う(語を拡大する)ことはできない。同様に、“鉄路”、“掛図”、“信紙”なども中間に別の語を挿入して拡大することはできない。ここで注意しないといけないのは、拡大後、意味が変わってはならないということである。例えば、“馬路”は拡大できない。もし“馬走的路”としてしまうと、意味が明らかに変化している。よって、“馬路”は詞である。

 以上が詞についての説明である。次に“詞滙”、すなわち語彙について述べる。  

 語彙はいわば言語の建築材料に相当し、言語中の詞と詞の等価物(固定詞組。熟語や成語のことである)の集合体である。語彙とは、ある一人の人の理解している、或いはある一冊の書物の中で使われている詞語(ことば)の総和である、と言うこともできる。言語中の個々の詞のことは、語彙とは呼ばない。

 語彙を研究する学問を「語彙学」(“詞滙学”)と呼び、言語学の一部分である。現代漢語における語彙学は現代漢語の語彙を研究対象にしている。一般的に言うと、その研究内容は、現代漢語の詞の性質、詞の構成、詞の意味の性質、詞の意味と意味の間の関係、語彙の構成、辞典(“字典”の方である)の編集、などである。

 語彙学の研究の重点は実詞である。

【原文】胡裕樹主編《現代漢語》重訂本 上海教育出版社1995年

 以上、文を文法的に分析する時の基本単位である詞はどういうものか、そして漢字一文字で表わされる語素との関係を見てきました。次回は、この詞が組み合わさってできる“詞組”について、見ていきます。

月餅のこと(その2):月餅の木型

2010年08月22日 | 中国グルメ(美食)
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  中国では、7月頃から9月下旬~10月(旧暦なので、毎年異なるが)の中秋節まで、贈答用の月餅商戦が街を賑わす。今や、月餅は工場で大量生産されたものを買うのが当たり前になっているが、昔は一個一個手作りされていた。そこで活躍したのが、四角や丸の形の上に、様々な図柄を浮き出させる木型である。今回は、月餅の木型について紹介する。

                月餅の木型(月餅模子)について

 月餅の木型(中国語で“月餅模子”という)については、人々は決して知らない訳ではない。これは昔の生活の中で、私たちが最もよく見かけた、お菓子と密接に関係した道具(型)であり、お菓子屋だけでなく、一般の家にも、おそらくは一つや二つ常備されていたものである。長年使い込まれた月餅の木型のあの黒ずみ、油でてかてかした色合いの中から、甘く芳しい香りが漂い、いつも子供たちのあこがれの的であった。こうした思いでは、しばしば今目の前にあるお菓子よりもっと甘く芳しい。

  月餅の木型は一般に棠梨(杜梨ともいう)、日本では酸実(ずみ)、小梨といい、バラ科の木で、緻密で固く、家具や細工物の材料として用いられるが、この棠梨に刻まれ、大きさは様々で、形も丸いもの、正方形、楕円形、蓮の花の形、石榴の形などがあった。形が様々なのは、お菓子の外観に変化をもたせる為と、時には中の餡を区別する為に用いられた。一般に、月餅型の図案は、内側と周囲の二重になっている。周囲の図案は、多くは巻いた草、絡まる枝、花などの模様であり、内側のメインの図案はたいへん種類が多く、およそ中国の伝統的な吉祥図案で、あるべきものは全て揃っていたが、人々が特に好んだのは、昔から変わることのない、月の世界(月宮)の図案であった。

  筆者は以前、とある博物館で、一枚の百年余り前の大型の月餅の木型を見たことがあるが、直径三十センチ余り、おそらく五斤、つまり2.5キロくらいの大きな月餅が作れるだろう。型の真ん中は広寒宮(月にあるという伝説上の宮殿で、西王母の不老不死の薬を盗んだ嫦娥が幽閉されているという)の図案で、玉兔、嫦娥、呉剛、月桂樹などが生き生きと描かれ、玉兔搗薬(月にいる白い兎が薬草を搗いて仙薬を作っているという)、嫦娥奔月(嫦娥が夫の后羿が西王母からもらった不老不死の薬を飲んだところ、体が軽くなり、月に昇っていき、帰れなくなってしまった)、呉剛折桂(呉剛が天帝の怒りを買い、月にある大きな月桂樹を切り倒すよう命じられた)、それぞれの情景が見る者を惹きつける。これら主な図案の周囲には、春の蘭、夏の蓮、秋の菊、冬の梅など四季の花が描かれ、月宮の優美さを互いに惹きたて合っていた。

 北方では、月餅の木型の加工は、天津と河北の両地が最もよく知られている。19世紀末、天津では針市街の胡という姓の家だけが工房を開き、点心の木型を専門に彫り、商品は供給が追いつかなかった。

 庚子の年(1900年)、八カ国連合軍の侵略後、天津市街は治安が乱れ(“兵荒馬乱”)、建築装飾業(家の内外を飾る木彫りの細工物を作る)はそれにつれ不景気(“蕭条”)となった。同時に、天津の警察は、火災防止の為、建物の外の軒に木彫りの飾りを付けることを禁じたので、それにより木彫りの職人は深刻な打撃を受け、次々に職を変え、別に生計の道を捜した。彼らの中の一人、有名な木彫り職人、傅宝元は、旧市街の鼓楼の近くに玉順合木型店を開き、専門にお菓子の木型を彫って販売したところ、製品はすぐに市場で販路を切り開いた。天津玉順合、文蘭堂などの屋号の製品は、月餅を含むお菓子の木型を、長期間遠く東北三省で販売した。

  現在では、精緻で美しく彫られた古い月餅の木型は、民俗文物として骨董的価値を持つようになり、民間の収蔵品の市場でいつもその姿を見ることができる。

【出典】由国慶編著《追憶甜蜜時光―中国糕点話旧》百花文藝出版社 2005年

 今は、月餅は贈答品として、大量生産されたものを買うのが普通になり、木型を使って手作りすることは稀となった。古い木型は、骨董品として取引されるようになっている。 それにしても、月餅の木型作りが、義和団事件に続く八カ国連合軍の中国侵攻の結果、職を奪われた木工達によって天津で盛んになったという話は興味深い。