政府要人の重要発言のキーワードとして、成語が使われます。こういうところは、中国語を原文で読まないと、感じが伝わりません。中国語を勉強している皆さんは、ニュースを中国語の原文で読んでみることをお勧めします。
次期総書記に内定している習近平副主席ですが、9月の初旬に2週間ほど公式の席から姿を消しました。水泳中に背中を怪我したとも、権力闘争の関係とも言われていますが、ともかく、9月20日に、前日から訪中していた、アメリカのバネッタ国防長官と会見しました。
その中で、尖閣諸島国有化問題について、中国政府の見解を述べていますが、その中心となるのが、以下の発言でしょう。
ここでいう「危険」とは、紛争、戦争ですが、非常に迫力のあることば使いだと思います。
さて、“懸崖勒馬”xuan2ya2 le4ma3 という成語ですが、直訳すると、「断崖に臨んで馬の手綱を引き締める」ということで、そこから、「危険の一歩手前で踏みとどまる」という意味になります。
記事の原文は、以下の通りです。
【訳】
習近平は、中国側の尖閣諸島問題についての厳正な立場を説明した。習近平は、次のように言った:81年前、日本は内外を震撼させる「九一八事変」(柳条湖事件のこと)を引き起こした。日本軍国主義は中華民族に深刻な災難を与えたのみならず、アメリカを含むアジア太平洋地域の国々に大きな損害を与えた。日本国内の一部の政治勢力は、隣国やアジア・太平洋地域の国々に対し、戦争で損害を与えたことに深く反省していないのみならず、却って前よりひどくなり、同じ過ちを繰り返し、「島嶼の購入」という茶番劇を演じ、公然と「カイロ宣言」と「ポツダム宣言」の国際法上の効力が欠けていると疑義を唱え、隣国との領土紛争を激化させた。国際社会は断じて日本が世界の反ファシスト戦争勝利の成果を否定することを企み、戦後の国際秩序に挑戦する行為を許すことはできない。日本は危険の一歩手前で踏みとどまり、中国の主権と領土保全を損なう一切の誤った言行を止めなければならない。アメリカは、地域の平和、安定という大局に則り、言行を慎み、尖閣諸島の主権争いに介入せず、矛盾を激化させ局面を一層複雑にする可能性のある如何なる行動も採らないよう希望する。
“辺縁外交”bian1yuan2 wai4jiao1 (瀬戸際外交)ということばがありますが、何かそれを連想させるような雲行きです。
“懸崖勒馬”というと、何か物騒ですが、
口若懸河 kou3ruo4 xuan2he2 立て板に水
人是衣服,馬是鞍 ren2 shi4 yi1fu, ma3 shi4 an1 馬子にも衣装
なんていう言葉のお話で済めば、平和で良いのですが。
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毎日、仕事や生活の中で、これは中国語でどう言うんだろう、と思ったことはありませんか?これから、いくつか例題を出して、それを中国語に訳していきたいと思います。
<1> 沖縄で、オスプレイ配備に反対する県民大会があった。
「沖縄の青い空はアメリカのものでもなく、日本政府のものでもなく、 私たち県民のものです」。
オスプレイは、英語で“osprey”。鳥のミサゴの意味です。タカ科の鳥で、海上を急降下して魚を捕まえる姿から、米軍の変翼式飛行機にこの名前をつけたのでしょう。中国語では、“魚鷹”yu2ying1ですが、そのままでは意味が通じませんので、「変翼式飛行機の“オスプレイ”」と補足説明を付け加えました。
青空:蒼天 cang1tian1。 ところで、浅田次郎さんの小説で、《蒼穹の昴》というのがありました。蒼穹 cang1qiong2も同じく青空。“穹”とは“穹窿”、天空が高くアーチを描くように見えることで、この言葉を見ると、“北京秋天”の抜けるような青空を連想します。
<2> モロッコなどで相次いだオスプレイの墜落について、防衛省は
「操縦ミス。機体は問題なし」とする米側報告をなぞった分析を公表した。
<1>でオスプレイに補足説明をつけたので、こちらでは補足説明は省略しました。 「米側報告をなぞった分析」について、“一模一様”を使い、米側報告と瓜二つの、という意味合いにしました。中国語の参考表現として、「鵜呑みにする」という成語があります。直訳すると、「なつめを丸のまま飲み込む」ということ。
<3> 行きたいところへ行ける「どこでもドア」。
「タケコプター」は自由に空を飛べる。
ドラえもんの道具です。こういうのが、訳しにくい。「どこでもドア」は、“如意門”と訳すようです。 タケコプターは、そのまま、「竹とんぼ」と訳しました。
ホームセンターなどに行くと、アイデア商品で、「どこでも○○」などという商品名が付けられているものがありますが、そういうのを見かけたら、中国語ではどう訳したら、意味がよく通じるだろう?と考えてみるのもおもしろいですね。
<4> 親離れと子離れ、どちらがむずかしいのだろう。
母親は子離れの時、へその緒を再び切るような思いの
一時(いっとき)が、母親にはあるのかも知れない。
とはいえ、昨今は親がかりの期間が延びるばかりのようだ。
「親離れ」は、“孩子従父母独立”、「子離れ」は、“父母開始不管孩子”と意訳しました。
「へその緒」は、“臍帯”qi2dai4。ところで、果物のネーブルオレンジは、英語で“navel orange”ですが、“navel”は「へそ」のこと。あの果実の外側のへそのところが、人間のへそにそっくりだから、こう名づけられたのでしょう。中国語でも、“臍橙”qi2cheng2と言います。
「親がかり」は子離れの反義語ですが、“父母要照顧孩子”と訳しました。
如何でしたでしょうか?ご質問等、ございましたら、どしどしお寄せください。今日はここまでです。
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