和泉の日記。

気が向いたときに、ちょっとだけ。

新シリーズ。

2008-09-28 21:04:30 | いつもの日記。
そんなわけで、「少女妄想」開始です。
一応、今のところ全4話予定ですが、ちょっと分かりません。
というのも、詳細な設定すらノリで変えてしまう可能性があるからです。

・・・それは、周到な用意をしてる小説としてどうなんだ。

とかなんとか思わなくもないですが、その方がフレキシブルに面白く
対応できるかなーとか思ったり思わなかったり。

今後の物語については、タイトルとかキャラとかから何となく推測できる
方も多数いらっしゃることでしょう。
でもまぁ、そこは取り敢えず置いておいてください。
今回は、キャラ同士のやり取りや、キャラと世界観の統一感――
そういった部分を楽しむ作品になってます。
というか、なる予定。
あんまり色々考えずに、ぼけーっとぼやーっと読むと良いですよ。
ま、僕がそんなのを読みたかったという理由でだけ書いてるんですけどね。
僕としては、その辺が個人的ラノベの定義だったりするのです。
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「少女妄想 (1)」

2008-09-28 18:53:19 | 小説。
9月も半ば――。
もうすぐ秋だというのに、何故こうにも暑いのか。
僕は、今日もそんなことを思いながら、学校へ続く坂道を歩く。
そう、そもそもこの坂道が悪いんだ。
何が悲しくて、朝日に向かって真っ直ぐに登校せにゃならんのだ。
当然、方角的に考えて放課後は夕日に向かって下校するハメになる。
バカだ。この高校を建てた奴は、きっと僕以上のバカなんだ。
その暑さに耐え切れず、さっき寄ったコンビニで買ったジュースを取り出す。
105円のパックを開けてストローを差し入れ、一気に半分ほど飲み干した。
「うん」
僕は清々しい気持ちで、青空を見る。
――全力で不味い。
何だこれ。一気に半分飲んじゃったじゃないか。250mlも。
改めてパックを見る。

夏季限定!納豆ヨーグルト(カロリーオフ♪)

「吐き気がするわー!」
何だこれ。何なんだこれ!信じられねえ!
「何を朝からアタマの悪い独り言を叫んでいる、桐生」
ごん、と後頭部に馴染みのある衝撃。
「おおう、おはようさん。今日もエセ爽やかだな藤岡」
「ああ、おはよう。今日もバカだな桐生」
「挨拶代わりにバカ呼ばわりはちょっと酷くないか・・・」
そんな僕の抗議に、こいつが聴く耳などを持った試しはない。
「あと、ひとつ言っておくが『エセ』に『とても』のような意味は含まれない」
「何だってっ!?」
知らなかった。『エセ爽やか』=『超爽やか』くらいの気持ちで使ってたのだが。
はて――じゃあエセって本当はどういう意味だろうか。まぁ気にしてないけど。
「というか・・・桐生、今日はまた、実にステキなものを飲んでいるな」
藤岡が、僕の手元の液体を見ながら呟いた。
「ああ、これか。僕も今丁度飲んでびっくりしてたところだ」
――すうっ、と、隣で深く息を吸い込む音がした。そして次の瞬間。

「納豆ヨーグルトて。発酵食品に発酵食品を混ぜれば美味くなるとでも?
 っていうか納豆菌と乳酸菌をナメるな!愚弄するな侮辱するな!
 何だこれ、こんなものが本当に売れると思ったのか?バカじゃないのか?
 販売元は何を考えてるんだ。ちゃんと商品開発会議とかしたのか?
 しかもさり気なくカロリーオフか!そうか、OLか!狙いはOLなのか!
 だがどこにそんなニーズがあるんだ。ニッチにも程があるわ!
 夏季限定にしてもハシャギ過ぎなんだよ!ひと夏の過ちってレベルじゃないぞ!
 そういえばもう秋じゃないか、何で今更夏季限定?本気で売る気ねえな!?」

・・・と。
藤岡は、僕が言いたかったことを全て綺麗に余すことなく代弁してくれた。
「嘘をつけ、桐生は『マズイなぁ、ま、いっか』くらいしか考えてないだろう」
「それは違うぞ、藤岡」
「どう違う?」
「マズイなぁ、マズ過ぎて気絶寸前だぜ。今日も空が青いぜ。女子の肌が眩しいぜ」
「・・・すまなかったな、桐生。お前が手遅れになったのは俺にも責任がある」
可哀想な動物を見る目で見られた。侮辱だっ。
まぁ、ここまでが朝のお約束ってことで、ひとまず気にしないことにする。

・・・さて、楽しい朝の挨拶のせいで紹介が遅れてしまった。
当たり前のように学校への坂道を並んで歩くこの男は、藤岡という。
真面目な優等生で、2年の今では生徒会長などという雑務をやっている阿呆だ。
そして、またの名を――
「突っ込み番長」
「誰が突っ込み番長だ。金剛番長の『僕の考えた番長』にでも投稿する気か」
「ああっ、僕はまた思ったことを声に出してたのかっ。どこから聞いてた?」
「『またの名を――突っ込み番長』」
「ほっ。阿呆、は聞かれてなかったらしいな。ギリでセーフだ」
「・・・何故だろう、もはや怒る気にもならん」
――テヘッ☆
星を飛ばして可愛く誤魔化してみた。無言で2発殴られた。2発て。
とまあ、このようにそこに突っ込み対象がある限り手を抜かないヤツなのだ。
「というか、だ」
藤岡は、視線を例のブツに再度移して、言う。
「そのパッケージを見て金を払うお前もどうかしているぞ」
「そうなんだよなぁ。何で僕はこんなものを買ったんだろう?」
実際、コンビニのジュースコーナーから清算して店を出るまでの記憶がない。
どうも駄目だな。新商品とか期間限定とか、そういうのを見ると意識が飛ぶ。
「新し物好きも、そこまで極まれば病気だな」
「うるせぇよ。病気とか言うな」
言いながらたまには殴り返そうとしたが、見事に避けられた。
そういえばこいつは割とスポーツもできる子だった。
ちっ、完璧超人め。
幼稚園くらいの頃から一緒にいるが、僕とのこの明らかな違いは何だろうか。
頭も良い、運動もできる、顔も(少しだけ)良い、女子にも(かろうじて)モテる。
身長も(目測で僕より5ミリくらいは)高い、家も(庭に池がある程度に)金持ちだ。
・・・最後のは、括弧で括っても言い逃れできないほど客観的な事実だな。
ちなみに、その池では錦鯉が泳いでたりする。今は特別関係ない情報だけど。
ちっ、改めて、マジで完璧超人め。
本気で妬ましくなってきたぞ。何て嫌なヤツなんだ、コイツは。
いつか闇討ちしてやる。背後からナイフでグサリと殺ってやる。
「畜生、精々月のない夜は気をつけるんだな!」
「意味が分からねえよ。自分の思考が漏れてる前提で話すな!」
――今度は、口から出てはいなかったらしい。
というか、正直その突っ込みはどうなんだ。的確過ぎやしないか。
時々、こいつは本当に突っ込みのためだけに生まれたんじゃないかと思うよ。
「時に、桐生」
急に、真面目なトーンで藤岡が僕に声を掛ける。
「今日も、昼食は生徒会室か?」
「あぁ、そのつもりだけど。駄目か?」
生徒会室には、ポットとお茶っ葉がある。つまり、タダでお茶が飲めるのだ。
「いや。まぁ、別に構わないんだが・・・」
何だろう。妙に歯切れが悪いが・・・例によって、気にしないことにする。
「じゃあ行く」
「いや、そこは空気を読めよ」
露骨に嫌そうな顔をしてそんなことを言われた。
だって、たった今その口で別に構わないって言ったじゃんよ!
「ふぅ。ま、そうだな。別に構わないと言えば構わない、か」
そんな意味不明なことを呟きながら、藤岡は歩みを速めた。
教室に着いたのは、割と遅刻ギリギリな時間だった。
多分、僕ひとりで歩いてたら遅刻になってただろう。
こういう時、真面目なヤツと一緒に歩くと時間計算までしてくれて便利だと思う。

――そして数時間後、昼休み(授業中の記憶ナシ)。
朝の宣言通り、生徒会室の長机で母親お手製の弁当に箸をつけながら、言う。
「何で?」
「うん?どうした、桐生。弁当に何か不味いものでも入っていたか」
「いや、弁当は美味いよ」
「そうか、さすが納豆ヨーグルトを一息で250ml飲むおとこ
「そうじゃねえよ、ってかさり気なくウチの母さんが料理下手みたいに言うな」
何を隠そう、僕は結構なマザコンだ。富枝(母)を悪く言うヤツは許さないっ。
「で、何でここに蛍村ほむらさんがいるのさ?」
ようやく、僕はその疑問を口に出すことができた。
そう――生徒会室には、先客として同じクラスの蛍村雪子がいた。
僕は取り敢えず見なかったことにして弁当を食べ始めてみたが、駄目だった。
生徒会室なんて一般生徒は滅多に近寄らないんだから、気になって仕方ねえ。
「――それは、ボクも同じ思いだ。何故、桐生夏生がここにいる?」
別に怒る風でもなく、実にクールに、蛍村さんは言い放った。
何でこの娘は、こんな誤解を受けかねないキツい言い回しをするかね。
いや、別にキツく言ってるわけじゃないのは声色ですぐ分かるんだけどさ。
「僕は、昼飯は大体ここで食ってる」
「そしてタダの茶を飲んでいる」
藤岡が茶々を入れる。
お。茶々を入れるだって。我ながら上手いこと言うね。
「なるほど、なるほど。それならば得心がいく。実に分かりやすい」
・・・今、なるほどって2回言った!
あと、『得心』って何?まぁ、気にしないんだけどさ。
「ボクの方は、この生徒会長に直談判があってね。図書室の書庫の件で」
「――と、いうことだ。桐生は気にせず飯を食ってて良いぞ」
「・・・気にせず、と言われましても」
気にしない方がどうかしてると思わなくもない。
「気にしないのは桐生の得意技だろう?」
「ほう、そんな特技があったのか、桐生夏生。やるじゃないか」
「何か変な方向で理解されている!」
いや、間違ってはないけど!間違ってないからこそ困ることもあるんだな。
そこで、僕はふと閃く。そうか、これが朝あんな顔をしていた理由か。
そりゃ真面目な話の横で僕が美味そうにお手製ラブ弁当食べてたらヤバイよなぁ。
「ええと・・・僕は、ここにいてもいいの?」
「構わない」
と、蛍村さん。
「おめでとう」
と、藤岡。意味が分からんが、『必殺・気にしない』を発動。
「今の生徒会長の台詞は『新世紀エヴァンゲリオン』の最終話に出てくる――」
「蛍村、すまん、ごめんなさい、何でもないんです、許してください」
「どうしてだ?桐生夏生は明らかに分かっていないぞ。それではパロディの――」
「いいから!出来心だったんです!本当にすみませんでした!」
・・・こんなに平謝りする藤岡は初めて見た。やりやがるな、蛍村雪子。
まぁ、僕は結局最後まで意味が分からなかったんだけどね。
「・・・で、だ。話を戻す――というか、始めるが」
ひとつ咳をして、藤岡は生徒会長の顔になる。
仕方ないので、僕は引き続き昼飯を食うことにした。うおっ、卵焼き美味ぇ。
「ええと――書庫の本が増えすぎてるって件だな」
「そうだ。いくらなんでも、直ぐに廃棄しろというのは早計だと思うのだが」
――やはり、それなりに真剣な話題らしい。二人の声は真面目そのものだ。
いや、蛍村さんの声は、いつだって真面目なのだが。

「とはいえ、置き場がないのは事実だ。新刊本を入れないわけにもいかないだろう」
「それはそうだが、書庫には価値の高い本も埋もれている。それも捨てるのか?」
「何も、一切合財捨てるわけじゃない。本当に要らないと判断したものだけさ」
「その判断は誰が、どうやって行う?それに相応の時間もかかるぞ」
「そうか――なるほど確かに、俺がやるわけにもいかんしな」
「だろう?だから、この話は少し待って欲しい」
「うぅん・・・ま、そうだな、じゃあ少し条件を出そう」
「条件?」
「処分する書籍は書庫の20%、期限は2週間。廃棄の判断は、蛍村に任せよう」
「む。確かに、直ぐでない点は評価できるが。それでも、期間的に辛いぞ」
「だろうな。だから、そこの暇人を下僕に付ける。好きに使え」
「ほう、桐生夏生か。ううむ、だが・・・しかしだな――」

・・・何か今、名前を呼ばれた気がする。
が、気にしない。
今の僕にとって大切なものは、目の前のミニハンバーグ以外の何物でもないのだ!
「大丈夫、このバカは使えるバカだ。ちゃんと『取ってこい』もできるぞ」
「人を犬みたいに言うのはやめてくれないか!」
――さすがの僕も、犬扱いには我慢が効かなかった。
ふっ、我ながら若いぜ・・・。
「何だ、ちゃんと聞いているじゃないか」
言って、藤岡はニヤリと嫌らしく嗤った。この野郎。
「じゃ、桐生。よろしく頼む。蛍村もそれで構わんな?」
「むう・・・2週間だな、分かった。やむを得まい・・・落とし所だろう」
「ちょ、おまっ、僕抜きで話をまとめるなっ」
僕は慌てて抗議したが――やはり、藤岡の耳に届くことはなかった。
「では、早速行くぞ。桐生夏生」
「え?マジで?今から?・・・どこに?」
「書庫。図書室の隣だ。なに、カギはボクが持っているから心配するな」
そんな心配してねぇよ。
「では、時間的な心配か。確かに、向こう2週間、放課後まで拘束することになるな」
それは大いに問題だ。だが、それでもない。僕の心配事は――ただひとつだ。
「取り敢えず落ち着くんだ、蛍村さん」
「ああ――すまん、急かしているつもりはないのだが。この時間も惜しくてな」
「うん、その気持ちは分かるけど」
嘘だけど。終始何の話か分かんねーよ。
「その前に、大事なことを聞きたい。これはとても、重要なことだ」
僕は、蛍村さんの細い両肩を強く掴む。そして、その両目をしっかりと見据える。
「む――何か、重要な問題があるのだな。良いだろう、心して聞こう」
強い意思が伝わったのか、蛍村さんは僕の視線をがっちりと受け止めてくれた。
そして僕は、最大の懸念事項を口にする。僕の心を悩ますのは、いつもひとつ。

「蛍村さん――それって、このミニハンバーグ食った後でいい?」
「――そうか、桐生夏生。キミは、本当に全力で掛け値なく、バカなんだな?」

っていうか、フルネームで呼ぶな。
今頃になって僕は、心の中でそう突っ込んだ。
タイミングが最悪だ、と突っ込み番長に怒られたような気がした。
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