和泉の日記。

気が向いたときに、ちょっとだけ。

あとがき。

2010-02-18 14:52:47 | いつもの日記。
「ありときりぎりす。」
予定通り全3話、完結しましたー。
小粒のラブコメって感じで、ベタの寄せ集めみたいになっちゃいましたが。
ははん、と軽く笑って読み流して頂ければ幸いです。

・・・と気軽な感じを装ってますが、本作、かなり難航しました。自分的には。
まず、プロットにかけた時間が長い。
ぶっちゃけ、RUMORの初期より長かったです。何だそりゃ。
次に、名前が決まらない。
キャラの名前も、タイトル名も。
特にタイトルは、
「ラブコメ(仮)」~「蟻と螽斯」~「ありときりぎりす。」
と変遷を重ねております。
キャラについては、中身も四苦八苦。
ええい、もうその辺色々踏まえて、苦労の一端をここで公開しちゃる!

◆タイトル「ありときりぎりす。」について
あり=「有田」の「あり」。
努力家タイプの完璧超人で、童話「アリとキリギリス」におけるアリのイメージ。
きりぎりす=「霧島葉桐」の「きり・ぎり」。
努力をしない、天才タイプ。同キリギリスのイメージ。
秋奈のことは、タイトルに含まれていません。ひどっ。
いいんです。彼女はあくまでも脇役なんです。
そんな贔屓と差別に満ちたタイトル。

◆霧島葉桐(きりしま はぎり)について
主人公、めんどくさがり、努力が嫌い、悪いヤツではない。
プロット時の旧名「保科冬馬(ほしな とうま)」。
設定こんだけ。

◆有田恭夏(ありた きょうか)について
メインヒロイン。
努力の人、学年トップ、クールなイメージだが軽くマゾ、徹底的に打ち負かして欲しい
と思っている(自分の努力を否定して欲しい)。
何でもできるタイプだが、恋愛をしたことがないためどう振舞うべきか分からない。
恋愛漫画、小説、映画等を参考書として勉強する→真面目すぎて空回りする。
プロット時の旧名「京都恭夏(みやこ きょうか)」。
・・・今見直すと、設定がいまいち活きてない気がしないでもない。
でも、ズレてはないので良しとします。
設定が全部表に出るとは限らねえんだよ!

◆小坂秋奈(こさか あきな)について
のんびりほんわか、成績は結構優秀、葉桐が好きだが幼馴染特権に甘んじている。
プロット時の名前は現在と同様。
ちなみに、当初の予定ではキャラ名に四季が入る予定だったがボツにした。
秋奈だけは、その名残で「秋」が入ってます。
ボツった理由は、4人いないと意味がないことに気付いたから。
・・・阿呆か僕は。

とまあ、こんな感じ。
ラブコメをやるにあたって、取り敢えずハーレムものを楽しくやりたい、というのが
ありました。
なので、キャラの顔見せ→ドタバタ→ハーレムエンド、という王道的な流れを踏まえて
書いていった次第です。
ベタベタだなーとは思うんですが、こんなの書いたことがないのでびっくりするほど
新鮮でした。
あー、ラノベってこんな感じで書くのかなー。みたいな。

僕の書くこういう作品って、どうでしょうか。
価値ないですかね?
いや、基本、こうドロドロしてたり人がガンガン死んだりする作品しか書いてなかったんで
自分にこっち系の需要があるのか分からんのですよね。
まー、昔からジャンル問わずで書いてたんで、今更何をと思われるだけかもですけど。
今回はちょっと色々チャレンジした感があるので、是非感想を聞かせて頂きたいです。
お時間がある時にでも、お願いしますだー。
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ありときりぎりす。(3)

2010-02-18 14:51:13 | 小説。
昼休み。昨日の一件があって、昼食は3人揃って部室で食うことになった。
で、今まさに食事中。
「はぎりん、これ、はぎりんのお母さん直伝の卵焼きなんだよー」
「霧島君、ハンバーグ好きかしら。作ってきたのだけれど」
「むぅ、薄味の卵焼きから食べないと、分からなくなっちゃんだから!」
「あら、小坂さん。卵焼きなら私のお弁当にもあるわよ」
「違うのー! これはお母さんの味で、特別なのー!」
・・・昼食時とは思えないギスギスした空気。何とかなりませんかね。
胃が痛くなってくる。昼飯どころじゃないな。
一体何がそうさせるのか、二人は俺にお弁当を作ってきていた。
どうやら、これからはずっとそうするつもりらしい。
ありがたいといえば、ありがたいんだけどね。
それにしても、不思議なのは秋奈の方。
有田さんは、まぁその、例の・・・お試し期間中だから。理由はあるんだけども。
それに張り合うような秋奈の態度は、謎だった。
根っから仲が悪い、っていうことなんだろうか。
「ちょ、とにかく、一回落ち着こうぜ? 二人とも・・・」
「私は落ち着いているわよ」
「アキも、べ、別に慌ててるとかそういうわけじゃ」
「いや、少なくとも秋奈はいつも通りじゃないだろう」
もう、どこからどう突っ込むべきかも判じかねる状態だった。
ううむ。
困り果てていると、有田さんが助け舟を出すかのように口を開いた。
「小坂さんは、つまり、私と霧島君が付き合っているのが気にくわないのね?」
・・・助け舟になっていなかった。
「つつ付き合ってる!? ちょ、はぎりんどういうこと!?」
「まだ! まだ付き合ってねえよ!」
「あら、ごめんなさい。確かに正式には付き合ってないわね。だから、暫定彼氏」
「『まだ』? 『暫定』? 何か不純! 凄い不純な感じっ!」
余計に錯乱する秋奈だった。まぁ無理もないかなぁ・・・。
「とにかくっ! 認めないからね、幼馴染としてっ!」
精一杯の強気発言。
「幼馴染は所詮幼馴染でしょ。恋人でも何でもないんじゃなくて?」
秋奈の発言は、虚しく一蹴されてしまった。
うん、秋奈、相手が悪いわ。言い合いでどうにかできるレベルじゃないです。
「いわば自由競争よ。私も小坂さんも条件は同じ。いや、それより先に確認すべきは」
じっと秋奈の目を見る有田さん。
整った顔立ちでこんなことをされると、結構ビビるんだよな。
「そもそも、小坂さんは霧島君のことが好きなのかしら?」
「へ――?」
不意打ちを食らったように、ぽかんとする秋奈。
直後、みるみる顔が紅潮していく。
「私は、霧島君が好きよ。大好き。愛してる」
「ぅああ、あいしてる!?」
「そうよ。だから、霧島君には私が彼女に相応しいか試してもらってる最中なの」
「試すって、そんな」
そこで今度は、矛先が俺に向いた。
「はぎりん、それは何かヒドくない!?」
軽く軽蔑するような眼差し。
「うん、俺もそう思うわ・・・」
「他人事みたいに言わないのー!」
「霧島君は悪くないわ。私が一方的に頼んだことなのだから」
今度こそ、有田さんの助け舟だった。
弁護のほど、よろしくお願いします。
「でも、本気で嫌がってる風でもないし、結構脈ありなのかしらね」
うわあ、ひっくり返された! 弁護になってねえ!
「はーぎーりーん・・・?」
ああ、視線が痛い。どーせ俺は優柔不断のヘタレですよ。
「それで、結局小坂さんはどうなのかしら?」
「ふぇ?」
「まさか、幼馴染だから恋愛にも干渉するだなんて言わないわよね」
ふふ、と妖しく微笑む有田さん。実に挑戦的だ。
何だろう、一昨日秋奈と顔を合わせた時とはまるで別人だな。
それだけ腹をくくった、ということか。
この分だと、そろそろ秋奈は泣き出すんじゃないだろうか――
そんなことを考えて、秋奈の様子を伺う。
「あ、アキは――」
しかし、秋奈は、泣くどころか・・・実に真剣な顔をしていて。

「アキは、はぎりんが好き・・・だよ。子供の頃から、ずっと」

・・・は?
俺のことが、好き? 子供の頃から?
「幼稚園くらいの頃から、もう好きだった。何度も言ったけど、はぎりん鈍いから」
っていうか、幼稚園くらいの頃に好きとか言われても理解できねーだろ。
うわぁ、自分でもびっくりするくらい記憶にねぇぞ。
いやいや。何これ。どういう状況?
このたった数日で、二人の女の子に告白されてしまった。
夢か? これは夢なのか?
「よく言えました」
先生が生徒を褒めるように、有田さんはそう言った。
「これで、本当に自由競争ね。但し抜け駆け出し抜き何でもありの総力戦」
「・・・うん」
そして、二人笑い合う。
あっれぇー・・・? また俺ひとり置いてけぼりデスカ?
結局、妙に打ち解けた二人からそれぞれ弁当を食わされ、両方たいらげるハメになった。
いや、美味かったですよ。美味かったんですけれども、2人前はさすがに多いです。

それから、一週間はあっという間に過ぎた。
朝は秋奈に起こされて、一緒に登校。
昇降口で有田さんと合流。
昼は部室で二人の弁当を頂く。量は、さすがに調節してもらった。
放課後はまた秋奈と一緒に下校。
有田さんとは、教室にいるあいだずっと一緒だった。
好きな食べ物は? 好みのタイプは? 趣味は何?
質問攻めにあいながらも、それって結構幸せなことだよなと思った。
逆に、こっちから質問することも多々あった。
そもそも、何故俺なんかが好きなのか。照れるけれども、聞いて置く必要がある。
「前も言ったけど、頭がいいからよ」
彼女は嬉しそうにそう答えた。
そんなことはないんだけどな。何をどう勘違いしたのか、その思い込みはブレなかった。
「私の『努力』を徹底的に打ち負かしてくれるのは、貴方しかいないの」
意味がよく分からなかった。
それって、どっちかというと嫌なことなんじゃないかなぁ?
唸っていると、理解する必要はないわよ、と言ってまた笑った。
屈託のない、優しい笑顔だった。
秋奈とは、相変わらずだった。
でも、これまでより深く話をしたように思う。
秋奈の気持ちを聞いて、色々と違う見方ができるようになったからかもしれない。
有田さんとは和解したのか、というところも気になったので聞いてみた。
「和解も何も、最初からケンカしてないよー?」
これもよく意味が分からなかった。
曰く、これまで突っかかってたのはお互いの気持ちを知らなかったからだとか。
「よく考えたら、同じ人を好きになるってことは感覚が似てるんだろうねー」
あれだけ険悪だったのになぁ・・・。
やっぱり俺は、馬鹿なのだ。というか、感性が鈍いのか。
ウチの母さんは、秋奈が昔みたいに毎朝迎えに来ることに喜んでいた。
ひとりっ子だからな、ウチ。娘ができたような気持ちなのだろう。
ただ、変な勘ぐりを入れてくるものだから、そこだけはきっぱり否定しておいた。
別に付き合ってるわけじゃねーっての。
・・・というのも、もう俺の身勝手な言い分になるのかも知れないな。
日曜日には、デートと称して3人で遊びに出かけた。
近場の遊園地に行って、帰りにふらっと公園に寄って、それだけ。
私服の有田さんは初めて見たけど、少し抑えめの清楚系ファッションだった。
これがもう、恐ろしくよく似合う。もはや一種の兵器だね、あれは。
たぶん、前もって聞き出した俺の好みに合わせたんだろう。
秋奈はこの時もやっぱりいつも通りで。
その気取らない感じが、逆に安心できた。
よく考えたら、15年もの付き合いだからなぁ。今更180度変わられても困る。
こいつは、このままが一番いいのだ。
――そんな、めまぐるしくも楽しく、充実した一週間だった。

そして、俺たち3人は今、放課後の空き教室にいる。
お試し期間の一週間が終わり、結論を出す約束の日だ。
秋奈は元々の約束に含まれないが、自分ももう無関係じゃないからと同席を希望した。
有田さんもそれを快く了承したため、このような状況になっている。
「この一週間、何だかとても楽しかったわ」
と、夕焼け色に染まった窓の外を眺めながら有田さんが切り出した。
「正直、恋愛なんてしたことがなかったから、勝手は分からなかったけれど」
それでも、とても楽しかった。
彼女は、微笑んでそう付け足した。
「アキも、何だかんだで・・・楽しかったかな」
秋奈も、笑った。
少し前まで、いがみあって張りあっていたのが嘘みたいに。
「だからね、霧島君。私はもう悔いはないわ。答えを――聞かせて頂戴」
落ち着きのなかった告白時とは打って変わって、冷静な声。
なるほど、覚悟は決めてきたということだろう。
「有田さん。それに、秋奈――」
俺は、どうだろうか。
この一週間、二人に振り回されて。
楽しかったのは間違いない。だけど――覚悟はできたのだろうか。
それは、何日も前からずっと悩み、葛藤してきたことだった。
有田さんは、魅力的だ。
綺麗で、頭もよくて、性格だっていい。
恋愛に慣れてないからか、やたら強引なところがあったり、妙に鈍いところもあるけど。
それもひっくるめて、やっぱり素敵な人だと思う。
好きだ、といって差し支えない。
じゃあ、その思いをここで口にするのか?
そうなると、秋奈は。
15年来の幼馴染である彼女は、どうなるんだろう。
秋奈も、僕のことを好きだという。それも、ずっとずっと昔から。
有田さんを選ぶことは、秋奈を傷つけることになるんじゃないか?
そんなことを考えて、それはいくらなんでも秋奈に失礼だと思い直して。
――だけど、それ以前に俺が、今の秋奈との関係を崩したくないと思っていて。
やっぱり、秋奈の隣は居心地がいい。
気取ったことはしなくていいし、虚勢を張る必要もない。
ありのままの俺でいられる。
それって、好きだってこと・・・だよな。
そんな、曖昧な自分の思いが、忌まわしかった。
優柔不断というか、もはやただのダメ人間みたいで。
ああ、もう。
「今まで、こんなこと考えたことがなくて、さ」
ぽつぽつと、ありのままの気持ちを、語ることにした。
それで幻滅されて、嫌われてしまうなら、もう仕方がない。
「だから精一杯、考えた。有田さんのこと・・・秋奈のことも」
二人の視線が、痛い。
「俺はたぶん、有田さんのことが好きなんだと思う。それと、同じくらい秋奈も」
だから――だから。
「有田さんを選んでも、秋奈を選んでも、後味が悪くなりそうで」
そんな、自分勝手な不安。
自己中心的な思考。
「結局、自分も含めて――誰かが悲しい目に合うのは、嫌なんだと思う」
そして、ゆっくり目を伏せた。
断罪の言葉を、待つように。
「・・・そう」
聞こえたのは、思ったよりもはるかに優しい響き。
「貴方が精一杯考えた結果、誰も傷つけたくないということは分かったわ」
そして――
うふふ。
――この場に不似合いな、楽しげな笑い声。

「つまり貴方は、ハーレムエンド、、、、、、、をご希望なのね」
「そうじゃねえよ!」

間髪入れずに否定した。
何だよハーレムエンドって!
え、それってあれですか。正々堂々二股宣言ってことですか!?
いやいや、それはダメだろ! 常識的に考えて!
「どうして? 豪胆で素敵じゃない。二人の女を侍らせたいんでしょう?」
有田さんは、どこまでもどこまでも、実に男前だった。
正直、その発想はなかった。
「ありえねえだろその展開! どんなギャルゲーだよ!」
「あら、常識に捕らわれちゃだめよ。世の中、幸せならそれでいいんだから」
「その常識は捕らわれてていいと思うよ!?」
むしろ捨てちゃダメなタイプの代物だと思う。
と、そこでこの間ずっと押し黙っていた秋奈が口を開いた。
「あ・・・アキも、はーれむえんど、いいと思う。せっちゅーあん?」
「えええええ!?」
この場における最後の良心、秋奈様がそんなことを仰るとは!
そして、何と何の折衷案だというのか!
まったく、こんな世の中に誰がした!?
・・・俺かも知れない。
「ほら、小坂さんもそう言ってるし。ここはひとまず、妥協しちゃいなさい」
「妥協、って・・・はぅ!?」
ふにょん。
右腕に、有田さんが絡みつく。
ちょちょちょ、何か、柔らかいモノが当たってるんですけど。
これはアレですか、おバスト様ですか。ありがたやありがたや。
ってそうじゃなくて。
「あ、ずるいっ、アキもー」
言って、空いた左腕に絡みつく秋奈。
こっちは、うん。何とも懐かしい感触。発育はあまり良好でないらしい。
「えへ。これからも、ずっと一緒だよー? はぎりん」
「ハーレムの主になる以上、二人とも平等に可愛がってくれなきゃね」
「か、可愛がる・・・えへへ」
秋奈は軽くトリップしている模様。
ってか、こいつら本気でそれでいいのか!?
「ま・・・マジ、ですか」
「大マジよ」
「まじですよー」
とびきりいい笑顔で、そう答える二人だった。
二人がいいんなら、もう俺から言えることなど何もないんだけどね。
いいのかな、これ・・・。

夕日を受けてオレンジに染まる教室。
下校時刻を告げる校内放送が流れるまで、俺たちはくだらないことを話していた。
俺たち、っていうか、主に女子二人ね。
気が付けば、すっかり仲良しになってる二人。
俺の方が嫉妬する日も遠くないかも知れない。
取り敢えず――今の会話の流れだと、今週末には映画に行くことになっている。
そのあと、ウィンドウショッピングをして、夕食を食べて。
動物園にも行きたいねー。
あら、水族館も捨てがたいわよ。
そんなことを、嬉々として語らっていた。

「聞いてる? ぼんやりしてちゃ駄目よ、霧島君」
「そうだよー、あくまでもメインははぎりんなんだから、ね?」

この二人の勢いには、当分振り回されっぱなしなんだろうな。
早くも、少し気が滅入る俺だった。
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