カリフォルニア大学サンタバーバラ校地理学名誉教授のTommy Dickey氏とBioScent社のHeather Junqueira氏は、
2019年12月から2023年4月の間に相次いで発表された、
新型コロナウイルスの匂いを嗅ぎ分ける訓練を受けたイヌについて発表された29本の査読済み論文を体系的に収集して
――合計すると、32カ国の400人以上の科学者が、147頭のイヌの嗅覚による新型コロナウイルスの検出能力を、
3万1000点以上の匂いのサンプルや直接人間の匂い嗅ぎで検討していたことになります――、
その有用性や安全性、実用性に関する評価を行なったところ、
イヌの嗅覚を用いた新型コロナウイルス検査の感度は、何と、92.3%の論文で80%を超えており、
32.0%の論文では特異度が97%を超え、84.0%の研究で特異度は90%以上だったとのこと。
さらにイヌは、呼気、唾液、気管支分泌物、尿、マスク、衣類などから新型コロナウイルスを検出できること、
訓練を積んだ犬であれば、症状が出る前の患者や無症状の患者の検出も可能であること、
訓練を受けた経験のない新型コロナウイルスの新規変異株感染者や後遺症患者の検出も可能であること、
新型コロナウイルス感染者と別の新しい呼吸器系ウイルス感染者とを区別する能力があることも示されました。
こうなるともはや、イヌの嗅覚を利用した検査の方が、PCR検査や抗原検査などよりはるかに効率的ではないかということになりましょう。
実際、この研究で対象とされたある論文の著者は、
「今や、新型コロナウイルス検査のゴールドスタンダードはイヌであり、RT-PCR検査ではない」とコメントしているとか。
なにしろイヌの嗅覚による検査だったら、とにかく速い。直接匂いを嗅いだら数秒内に感染の有無を教えてくれるのですから。
なおこの研究は、7月17日に、Journal of Osteopathic Medicine誌に掲載されました。
生体の感覚の精妙さを強調するオステオパシー医学の専門雑誌上であるところにも興趣をそそられます。
<文 献>
Dickey, T. & Junqueira, H., 2023 COVID-19 scent dog research highlights and synthesis during the pandemic of December 2019-April 2023, in Journal of Osteopathic Medicine.
2023 July 17; doi: 10.1515/jom-2023-0104. [Epub ahead of print]
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