知的財産研究室

弁護士高橋淳のブロクです。最高裁HPに掲載される最新判例等の知財に関する話題を取り上げます。

共焦点分光分析

2015-01-07 17:03:21 | 知的財産権訴訟

1 事件番号等

平成25年(行ケ)第10227号

平成26年09月17日

 

2 事案の概要

本件は、特許無効審判請求の不成立審決に対する取消訴訟です。争点は、〈1〉進歩性判断の誤りの有無及び〈2〉明確性要件(平成6年法律第116号による改正前の特許法36条5項2号)違反の有無です。

 

3 特許請求の範囲

  本件訂正後の特許請求の範囲の記載は以下のとおりです。

  「【請求項7】

  サンプルに光を照射して散乱光のスペクトルを得る手段と、前記スペクトルを分析する手段と、光検出器と、前記分析されたスペクトルの少なくとも一つの成分を前記光検出器に通し、前記サンプルの所与の面から散乱された光を前記光検出器の所与の領域に合焦させ前記サンプルの他の面から散乱された光を前記光検出器に合焦させない手段とを具備する分光分析装置であって、前記光はスリットを備えた一次元空間フィルタを通過して第一の次元で共焦点作用をもたらし、前記光検出器の前記所与の領域で受ける光が、前記所与の領域外で受ける光を含まずに、またはこの光と分離して検出され、前記所与の領域は前記第一の次元を横切る第二の次元で共焦点作用をもたらすように形成されており、前記サンプルの前記所与の面の焦点からの散乱光は、前記スリットにおいてスポットとしての焦点に絞り込まれて前記スリットを通過し、前記サンプルの前記所与の面の前記焦点の前または後で散乱される光は、前記スリットにおいて焦点を結ばず、前記サンプルに光を照射するのと、前記サンプルからの散乱光を集光するのとに同一のレンズが用いられ、前記光検出器は電荷結合素子であることを特徴とする分光分析装置。

 

4 裁判所の判断(設計事項に関して)

本判決は、シリンドリカル・レンズの位置に関し、概要、以下のとおり判断しました。

すなわち、甲3には、「凹面鏡で光軸外に集光されることにより生じる非点収差を補正するために、CCDカメラの前に円柱レンズ(図1に図示されない)が用いられた。」との記載があるほか、シリンドリカル・レンズを分光器の内部に配置する構成も周知の事項であるといえ、シリンドリカル・レンズの位置を、スリットの前後のどこに配置するかは、当業者にとって設計的事項というべきものであり、スリットの前に配置する構成をしたことによる格別の効果も認め難い。

 

5 コメント

拙著「裁判例から見る進歩性判断」においては、設計事項として最適(好適)材料又は最適(好適)数値の選択という最適型と公知型があることを示し、公知型といえるためには、同一の目的を達成するための相互に置換可能な複数の技術事項が周知又は公知である場合における特定の技術事項の選択であると整理しました(同54ページ)。本件は、公知型の典型例であるといえます。

 

以上

 

  


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