JUNSKY blog 2015

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取調べの可視化

2007-12-19 23:20:48 | TVレビュー
 冤罪事件が起こる度に、「取調べの可視化」が言われ、日本共産党を含む野党も導入には積極的である。

 その、「取調べの可視化」の盲点を突くドラマが今日放送された。
水谷豊主演のシリーズ刑事もの「相棒」である。
 右京(水谷豊)と薫(寺脇康文)が、刑事のペアとして事件を解決するシリーズである。
 私は、水谷豊が何故か好きにはなれないので、殆ど見たことはないが、今日はたまたま見た。
 第9話「編集された殺人」


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 スナック『椿』を経営する女性(美穂)が夫(友章)を殺害したという容疑で取り調べられる。
 いわゆる長期拘留の取調べで21日間は否認していたが、22日目に自白したという。
 女性弁護士・かおり(松下由樹)は、長期拘留後の自白は、証拠とならないと主張。
 ここは、いつも私が畠山鈴香さんの事件で書いている「日本国憲法」第38条である。
【日本国憲法 第38条 自白の証拠能力
 (1)何人も、自己に不利益な供述を強要されない。
 (2)強制、拷問若しくは脅迫による自白又は不当に長く抑留若しくは拘禁された後の自白は、これを証拠とすることができない。
 (3)何人も、自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合には、有罪とされ、又は刑罰を科せられない。 】

 一方、このスナックに週末だけアルバイトに来ていた「女の子」陽子が検察側の任意聴取で証言するが、これを「可視化」するとして録画され、裁判で公開される。
 しかし、その証言映像は、陽子の証言の中から検察側の都合の良いところだけを“編集”したものだった。ドラマの中で、そういう“編集”は検察の裁量として認められていると言う。

 陽子はその証言で、美穂と夫(友章)の激しい夫婦喧嘩の様子を語りながらも、その証言の最後で、「激しい喧嘩をするほどお互いを信頼しあった仲の良い夫婦であり、美穂が椿を殺すことなどありえない。」と証言しているのだが、その最も重要な所をカットされ、激しい夫婦喧嘩の部分だけが公開されているのであった。

 右京が、そのことを突き止めたのは、その映像で陽子の不自然な動きが、ボイスレコーダーか何かを操作しているためではないかと推測したからだ。
 結局ボイスレコーダーは見つからなかったが、その録音は携帯電話に収録されていたのだった。
 その携帯電話での収録では、上記の最後の重要な証言が記録されていたのだ。

 一方、その「編集ビデオ」を公判廷で見た美穂の父親は、陽子を呼び出し、問い詰める中で激昂して押し倒してしまい、陽子は頭部打撲で死亡する。(ここはTVドラマならではの展開だが・・・)

 証言を意図的に編集することによって、新しい“殺人事件”を引き起こしたと訴えているのである。

 弁護士・かおりは、この『取調べの可視化』について「裁判員制度を見据えたものですね。」と言い、
右京は、「このような編集された映像が裁判員に提示されると簡単に誘導されてしまう」との趣旨の発言をする。

 検察は、『取調べの可視化』に取組んでいるが、警察はこの流れに遅れていることもドラマでの検察官の発言として紹介される。

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 このドラマでは、『取調べの可視化』の危うさの面を開示して見せた。

 全て収録し、全てが開示される条件が無いと、極めて意図的な結果を導くと言うことだ。
 収録した映像を全て公開するだけでは問題は解決しない。
不当な取調べ(暴言や誘導や長時間取調べや被疑者の疲労など不都合なところ)は、初めから収録さえしない可能性が大だからだ。

 『取調べの可視化』を行う以上は、全てを収録するという最低条件が必要である。
 そして、必要に応じてどの部分でも再生され得る保証がなければならない。
検察や警察の都合で“編集可能”という現状では、却って冤罪を助長しかねない。

 時宜にかなった力作ドラマであったと言える。
ストーリーの概要は、 【オフィシャルサイト】 を御覧ください。

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探る/裁判員制度導入まで1年半  asahi.com 2007年12月10日