川内原発の地元・薩摩川内市と鹿児島県が、仙台原発の再稼働に先週賛成して
週が明けたら、もはや報道は下火に・・・ 諦めムードと『のれんに腕押し』状態!
そういう状況の中で、毎日新聞は特集を組んでいた。
そのまま引用させて頂きます。
特集ワイド:川内原発の再稼働、
鹿児島県知事が同意 地方への差別じゃないか
毎日新聞 - 2014年11月10日 東京夕刊
鹿児島県議会が川内原発再稼働に同意した直後に開かれた反対派市民の抗議集会。
「戦いは終わらない」と涙ぐむ市民も=鹿児島市の鹿児島県庁前で
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特集ワイド:川内原発の再稼働、
鹿児島県知事が同意 地方への差別じゃないか
毎日新聞 - 2014年11月10日 東京夕刊
◇机上の避難計画のまま強行先例に?/周辺自治体住民に怒り
福島の惨事から3年8カ月、再びこの国は原子炉を動かすことにした。新規制基準の下での「第1号」が鹿児島県の九州電力川内原発だ。住民の不安と反対をよそに、薩摩川内市に続き、県が原発再稼働に同意した。住民の胸に去来するのは何か。現地を歩いた。【吉井理記】
錦江湾のど真ん中で、桜島が噴煙を上げる。鹿児島市街はこの日も火山灰で煙っていた。2009年から活発化し、毎日のように小噴火を繰り返している。
灰が舞う中、伊藤祐一郎知事が再稼働に同意した7日、鹿児島県庁前で再稼働に反対する住民ら約400人が抗議集会を開き、「再稼働を許さないぞー」としきりにシュプレヒコールを上げた。だが、もはやあきらめムードが漂う。10月から座り込みを続けてきた住民も「今日で撤収です」と力ない。
「原発事故は立地自治体だけでなく、その周辺の自治体をも破壊することは福島を見れば明らかです。なのに再稼働の地元同意は、県と薩摩川内市だけに限られている。同じリスクを共有する周辺自治体の住民の声は考慮せずにゴーサインを出した。こんな横暴、乱暴はないのに怒りの声が形にならない……」。ため息をつくのは鹿児島大非常勤講師、杉原洋さん(66)だ。地元紙・南日本新聞の元記者で、1979年から2年間、運転前の川内原発を取材した。
再稼働の「同意対象」がどこまでなのか法律の定めはなく、事実上各電力会社の裁量に委ねられている。川内原発の場合は県と薩摩川内市以外の自治体は、避難計画策定が義務づけられる緊急防護措置区域(UPZ、原発から30キロ圏内)にあっても発言権はない。
川内原発の場合、このような自治体は8市町ある。姶良(あいら)市議会は「再稼働に反対し、川内原発の廃炉を求める」意見書を、いちき串木野、日置両市議会は自らも「同意対象」に加えるよう伊藤知事に求める意見書を可決した。だが、ほかの市町ではこうした動きはない。そればかりか、8市町の首長からは「再稼働やむなし」の声ばかりが聞かれる。
杉原さんが薩摩川内に赴任した年に起きたのが米スリーマイル島原発事故。だから当時は周辺自治体も反対の声が強かった。それでも84年の運転開始時には原発の安全性を疑う声は聞かなくなった。
「『のど元過ぎれば……』という側面もあるのでしょうが、むしろこれは構造的な問題です。県知事や国に逆らえない、田舎の事情があるんです」と嘆息した。
事情とは何か。
唯一、市全域がUPZ内にあるいちき串木野市を訪ねた。今年6月、再稼働に反対する住民団体が、約3万人の人口の過半数、1万5464人の署名を集めて市に提出した。市民が不安視するのは事故が起きた際の避難だ。薩摩半島の付け根にある同市は、原発事故の際は南東方向にある鹿児島市や南九州市などに避難することになっている。
しかし統計上、いちき串木野市は原発のある北西からの風が吹く日が多い。つまり南東方面ならどこに避難しても原発の風下にあたるから、放射性物質にさらされる危険があるのだ。さらに避難にはマイカーを使うことになっているが、逃げ道となるのは普段から混雑する片側1車線の国道や県道だけ。
「周辺の自治体の避難計画はどこもそんなものばかり。まともに避難ができない以上、再稼働など言語道断なのですが、市は疑問や反対の声を上げるのを避けている」と首を振るのは、昨年11月の市議選で「再稼働反対」を掲げて初当選した田中和矢さん(62)だ。
同市の今年度当初予算約154億円のうち、市税など自主財源は28%の43億7000万円。7割以上が地方交付税や県や国庫からの支出金などの依存財源だ。「市は国・県の電源立地交付金約9000万円を受け取っています。財政事情が厳しいから、市は絶対に手放せない。反対なんてとんでもない」
県・国の補助金がつく公共事業も多いから「ご機嫌」を損ねたくないし、特に今は県や国が自治体の予算要望をヒアリングする時期で、なおさら反対しづらい。九電は九州に本社がある企業のうちで断トツに売上高が大きく、「地元経済にマイナス」の懸念も強い。
田中さんは旧ソ連チェルノブイリ原発事故の時も「日本の原発は安全」と信じていた。「それがあの事故です。『こりゃ大変なシロモノを故郷に造らせてしまった』と怖くなりました。僕は自民党に近いつもりですが、原発政策だけは認めない」
県の事情も似たりよったりだ。今年度予算7882億円のうち国庫支出金などの依存財源は約7割に上る。ちなみに同県で公選された戦後の知事7人のうち、現知事を含め実に6人が旧自治省などの中央官僚からの転身組だ。
政治的事情もある。ある自治体の公明党関係者は「結局は党本部の意向に従うしかないが、再稼働に賛成した公明党県議も内心は納得していないし、有権者に説明できないと困り果てていたんです。一部の自民党県議も『よりによって何で東京は我々を一番手にしたんだ、基地を押し付けられる沖縄と同じだ』とぼやいていたらしい」と明かす。
杉原さんが付け加える。「より中央から遠く、より弱い県や自治体にしわ寄せがくる『差別構造』としか言いようがない。政府が川内原発を再稼働第1号に選んだのも、東京から遠く国民の関心も低いから、としか思えない。鹿児島だけの問題ではないんです。全国の人が声を上げなければ、より弱い地域・人が犠牲になる構図はなくなりません。それほど『安全』と言うなら、東京に原発を造ってほしいのですが」
川内原発を皮切りに、避難計画が現実的かどうかなど関係なく、全国で原発が動き出すのだろう。
ささくれた心を癒やしたくて、田中さんの案内でいちき串木野市の山奥にたたずむ鎮国寺を訪ねた。脱原発を志す人々が「心のよりどころ」として全国から会いに来るという住職の村井宏彰さん(65)がつぶやく。
「原発で潤う人はいるのでしょう。でも子々孫々にまで災いを及ぼすかもしれない原発を、今、この時代しか生きない私たちが『お金がもうかるから』という理由だけで動かして本当にいいのですか」
山の向こう、遠く川内原発が見えた。この国の人々すべてが考えねば、と思う。
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