涙の一粒は思いがけない重さだった。
夜、床に入ってうとうとしかけた時、突然消えてしまった友人のことを思った。
半年の闘病は、勿論知っていた。お見舞いもした、手紙も出した。でも突然なんです。「何で・・・」
ご本人の気持ち、どんな思いの半年だったのか考えたくはない。入院する2か月前、食事に誘われ、鎌倉の和食屋さんで歓談した。考えたら熱心な誘いでした。ランチではなく、お酒を飲みながらの夜の会食。
不思議な事に、その日のことは記憶が薄いのです。どんな話をしたのか?雨だったのか、晴れだったのか。記憶にあるのは彼女の美しい横顔です。
「カウンターしか空いてなかったけどいいわよね?」いつもの通り、私はいつもおぜん立ては人任せ。「近くで話せるじゃない」と私。コロナ下なのに。
音楽はバロックが好き、文楽が好き、フランス語が堪能、おしゃれ・・・、何を言っても、もう再び話すことも出来ないのですね。
その現実に行き着いた時、胸の奥の深いところから涙がゆっくり瞳にたどり着き、一粒、こぼれ落ちた。