現在週に8コマ 私立高校2年生と3年生に「情報I」および「パソコン研究」
という授業で情報Iだけでなく「入力練習・ワード、エクセル全般」を教えています。
そこで感じることを不定期にお伝えしていきたいと思います。
<前回の結論>
高校生から①情報Iに対応するのではなく、②プログラミングだけではなく、
「情報I全般を中学からじわじわと身近にしていくこと」が必要
というのが結論でした。
今回は、その「じわじわ」対応の前に、私自身が昔から感じている違和感に関して。
この「情報I」が必須になったその先にどんな世界が子供たちを待ち受けているのかを考えてみました。
現在進行形で話題になっている生成AI、クラウド、メタバースなどを筆頭にIT業界ではキラキラした名称がたくさん目に付きます。情報の必修化とはそういったことを活用できる人材を作るための勉強のような感じがしませんか?
誤解を恐れずにいうならば、それは「ノー」ではないかと思うのです。
じゃ、何のために情報の勉強をするのでしょうか?
それを話す前に今回は日本のIT関連会社を改めて調べてみました。
多くの方にとって「世の中で使われているIT」と、「ニュースなどで有名なIT(ここではキラキラ技術と呼んでおきます)」ではかなり違いがあるのではないかということを、以前から感じていたからです。
将来的に、そのキラキラ技術を使った世の中も来るとは思いますが、実際に子供たちに待ち受けている世界とはかなり違う気がするのです。
皆さんが連想するIT企業とはどんな企業でしょうか?
スマホのアプリやネットショッピングなどをしている企業を思い浮かべるのではないでしょうか。30年以上前ですが、私自身SE(システムエンジニア)になることを告げると大抵の人がゲームを作るんですか?と言ってきました。
この違和感の本質的な原因を長く模索していたのですが、ここにきてこんな資料をみつけました。「日本の産業別エンタプライズ支出予測」
総務省|令和5年版 情報通信白書|データ集 (soumu.go.jp)
どの分野でIT技術がどれくらいの規模で使われているかが
分かりやすくまとまっています。
働いている感覚としては、そうだろうと思っていましたが、
実際に調べると、それを裏付ける資料って有りそうで無いのです。
「銀行の割合が大きい」「ゲームなんかはどこにはいるんだろうか」「ネットショッピングはどこに入るのか」とか、感じませんか?
簡単に説明しておくと、金融関連の情報化投資は実は日本のIT化を牽引してきた歴史があるので、見る人が見れば当然だと感じられるでしょう。スマホのアプリやゲームは「通信/メディア/サービス」に入ります。ネットショッピングなどのIT支出(売り上げではない)は小売りです。
つまりこれを分析すれば、将来子供たちがIT関連の職業に就いた時に、何関連のITに従事するのかということが、ある程度予測できるのではないかと思うのです。
売上等の実績ではなく、あくまで支出の予測ですが、国内の産業全体のIT支出がまとまっている表は初めて見ました。IT関連の全体像が分かるのではないかと考えています。
表のままでは分かりづらいので独自にグラフにしてみました。さらにITで一番イメージしやすいゲーム業界がどれくらいの規模感なのか、この表の中にちょっと強引ですが入れてみました。
なお元にしたゲーム業界の数字はここから持ってきています。
ゲーム業界データ年鑑『ファミ通ゲーム白書 2023』発刊!国内外のゲーム市場を最新データで分析|株式会社角川アスキー総合研究所のプレスリリース (prtimes.jp)
まとめた結果がこれです。
<2022年度の予測値から割合を明確化するために円グラフにまとめました>
- 大まかな傾向を知るための独自資料です。
- ゲーム業界は「市場規模」の数字を通信メディアサービスの中から
マイナスして求めました。 - 「その他」には小売り、医療、運輸、卸売、電力/ガス/水道、
教育、石油/天然ガスが含まれています。
皆さんの感覚と一致しましたか?
業界の人間でなければ金融・製造・自治体・で7割近くをしめる
などということはなかなか想像できないのではないでしょうか。
この構造のトップをひた走るのが、電電公社 ⇒ NTT
そしてそこから分離独立した「NTTデータ通信」です。
そしてIT関連で一番の人気企業は・・・今も「NTTデータ通信」。
昔から変わっていません。
2023年卒 IT業界新卒就職人気企業ランキング│総合ランキング - みん就 (nikki.ne.jp)
ここでもトップです。
つまり・・・(みんながIT関連の仕事に就くわけではありませんが)
今も昔もIT関連の仕事に就くということは、
7割近くの人は金融・製造・自治体のITに携わることとほぼ同意
ということです。
IT関連の会社に就職するのは理系だとよく思われがちです。
でも考えてみてください。
例えば金融のITだったら、当然金融業務のことを知らなくてはいけませんので、文系出身の方が有利になることも多いのです。
(純粋なコンピュータサイエンスだけがITではないということです)
そういう目であらためて情報Iの教科書を見てみましょう。
なるほどこの実態に即しています。
一例をあげると、ソート(並び替え)や二分探索。
代表的なアルゴリズムを理解してプログラミングを作るなどの問題は、
どこの教科書でも取り上げています。
これってまさに金融のお金の集計、顧客管理、
製造業の商品管理などで必ず使うところです。
しいて言うならば、金融、産業、自治体のITという基本構造の上に
今どきのリテラシー、技術を加味した基本知識の塊が「情報I」の姿。
そう考えたほうが実態に近いのではないでしょうか。
「IT」、「ITC」とか「情報」を学ぶというと、
やれAI、クラウドやメタバースなどといった
今どきのキラキラ技術のためのものという印象を受けがちですが、
実は今も昔も金融、産業、自治体などが主流であり、そういった
企業への就職を多くの学生が望んでいるのです。
新しい科目が追加されて大変と思うかもしれませんが、
私はこのようにとらえています。
かつては「特定の人が学べばよい」「社会人から勉強すれば済んだ」時代から「知らないと困る世の中」に変わっていった。
だからこれからの若い人には
「日本の土台を支えているITの知識が必修化される」のだと。
学校で教科書と向き合い、
「情報I」を教えながら毎回毎回そんなことを感じています。
ITは、一般の人がイメージしづらいところも含めて
ありとあらゆるところに浸透しています。
その基本的な素養が広い意味でのプログラミング教育であり、
未来を担う子供たちのサポートするのが「ロボット教室」および
「こどもプログラミング教室」の役割だとあらためて感じています。
キラキラ技術を志す子供たちのための要素はもちろんありますが、
実態を踏まえた情報Iも同時に伝えられる教室を
「ホームコンじゅく鎌倉教室」では目指しています。
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