奏~かなでうた~詩

自作詩を書いています。自分の心と向き合いながら。

万葉の空に

2012-11-10 | 詩詠~うたうたい





万葉の丘に佇み
暮れゆく晩秋の空を眺め
古人(いにしえびと)の息遣いに
そっと耳を澄ます

名残の夕日が
空を雲を朱色に染める

ここより眺める夕暮れ空は
どこか神聖な空気を纏い

山を森を水面(みなも)を家々を
今日を感謝に生きた者を
苦悩のうちに暮らす者を

すべてを包み込んでゆく


この空は
古人(いにしえびと)が見た
空と同じだろうか

人の世は変わり
乱れ汚れたが
この空の色は
太古のままだろうか

美しき心を求め
美しき景色を求め
されど
美しきものを
汚してゆくのが
人間といふもの

それでもこの空は
その美しき天蓋で
世界を抱擁する


古人(いにしえびと)が眠る
この丘に佇み
静かに落ちる
夕日を見つめる

あたたかなその朱色が
冷えた心を満たしてゆく

古人(いにしえびと)の魂に
抱かれているような安堵に
日々の不安も恐怖も
ふっと和らいでゆく


戻らぬからこそ
束の間だからこそ
貴いと思ふ

万葉の空は
無限の慈悲に満ちて……






<写真/奈良大和路・崇神天皇陵より>


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