北海道や東北では雪が降る前には雪虫が飛ぶという。白くて綿毛に包まれていて、粉雪と見間違うこともあるため、北海度や東北に赴任していたこともあるが、実際に見たことはない。「~津軽は雪ん子舞い飛ぶころよー」と望郷じょんがらで、細川たかしが歌っている。雪虫の名前は数あるが、この雪ん子も雪虫のことである。津軽弁では子(こ)をつける場合が多い。馬っこ、あねっこなどである。雪についても子をつけて読んでいるのかと思っていた。
関東も南岸低気圧が発生し、北上すると大雪をもたらすと言われている。本当のところ雪虫などいないのではないかと疑ってかかっていたが、どうもいるらしい。アブラムシの仲間だそうで、越冬するための産卵が目的で、一週間ぐらいで死んでしまう。オスは口を持たないそうで、子孫繁栄用である。メスも産卵後は死んでしまう。白い綿毛のような蝋物質を身にまとう。アブラムシの種類の中には羽が生える種類もあるようだ。何か哀れっぽい虫であるが、人間には降雪の前触れを知らせてくれる。気象関係の用語の中では虫を指す言葉は雪虫以外にないのも興味をそそる。古くからあるとすれば、雪国の人の観察力を称賛したい。
気温が低くなると様々な自然現象も発生する。ダイヤモンドダスト、ケアラシ、アスファルト道路が凍り付くアイスバーン(一種の蜃気楼だそうである)、ヤマセなども冷気が南下する現象まさに身体が凍り付くシバレる世界である。関東で生活していると、たまには氷点下の気温が下がることもあるが、池に氷が張るのも数日に過ぎない。今年の雪国での降雪は例年になく多いようで、高速道路の通行止めも多くなっている。雪の降らない関東での運転では予想もつかない地吹雪に見舞われることもある。
盛岡で単身生活をしていたころ、冬場には毎日、就寝する前に水道の水抜きが欠かせなかった。台所、トイレ、浴室の3か所である。バルブを開いて空気を入れ、水を地中に埋まった水道管まで落とすのである。これを怠ると蛇口周りの水道管内の水が凍り、体積を増やすので、パッキンを破壊し、日中融けた水が止まらなくなる場合がある。日中は仕事をしているので、気が付かなければ部屋が水浸しとなってしまう。雪国には雪国の気候に応じた生活がある。春を待ち望む気持ちは都会に比べて大きいようである。雪虫の言葉を考えながら、厳しい冬の生活を思い出した。