接客業をしているかぎりは、お客様のご要望にできる限り沿うように努力していきたいといつも思っていますが、どうしても許せない我儘もあります。
この前のことですが、とても神経質なお客様がみえました。
店の正面のカウンターには、カゴに入れて急須口と、煎茶を入れて使うシルキーパックを置いています。
売れるたびに補充していて、それぞれ4つか5つほど出ています。
その日いらした女性は、シルキーパックを指差して、これだけしかないのかと尋ねてきました。
私は、「ありますよ」と言って、補充用の小箱に入った6組のシルキーパックを見せました。
一袋には30枚ほどのパックが入っているので、みなさん一袋ずつお買い上げになり、そんなに出るものではありません。
一体何袋必要なのかと思っていると、女性は何も言わずいきなり箱の中のパックを一つ一つ神経質そうに持ち上げては下ろし、全部を触った後に、一番下にあった一袋だけを取り、それをくださいと言って買って行きました。
お金はちょうどでお釣りがいらなくて、レシートも受け取らず行ってしまいました。
私は、とても嫌な気持ちになりました。
カウンターには、消毒液も置いてあります。
そこまでして店頭にある品を避けて、仕舞ってある品を触るのであれば、手指の消毒は必ずするべき礼儀ではないでしょうか。
以前のように、新型コロナウィルスが蔓延していない時代なら、そのくらいは大目に見てサービスすることも構わないと思います。
でも今の時代、これでは他のお客様に迷惑がかかってしまいます。
そして、他の従業員の話を思い出しました。
前にまるっきり同じシチュエーションで買って行った人がいたという話を聞いていました。
他のスタッフが対応した人と同じ女性の可能性大です。
こういう人を潔癖症と言うのかなあと思いました。
そして、潔癖症というのは、自分のことしか考えられず、他の人はどうでもいいのでしょうか。
小さなことですが、商品は商品です。
しかも、煎茶を入れてお湯をさしたり水に浸したり、つまり絶対にウィルスが付着してはいけない品です。
もちろん、ビニールの袋に包まれてはいますが、そのビニールにウィルスが付着していれば、開ける時に中のパックにウィルスが移る危険性があります。
潔癖症の女性もそれを心配して仕舞ってあるほうのパックの一番下になっているものを取ったのでしょうけれど、なぜ、自分の手指の消毒はしなかったのでしょう。
そこなんですよね。
他のことはまるで気にしない、他人のことはどうでもいいという行動。
私は、次にこの女性が来たときは、ストックは出さないことにしました。
他のお客様は、商品が新品できれいであることを疑わず買ってくださるのに、すでに一人の潔癖症のひとの手垢にまみれている状態であったら、申し訳なくてお出しできません。
ストックに、出さないようメモを付け、日誌に理由を書いて、他のスタッフに徹底してもらうことにしました。
すると、Oさんの時にこの潔癖症の女性が現れて、同じ質問をしたそうです。
Oさん、忠実にストックは無いと答えると、女性はそんなはずはない、前に来たときはその辺から箱を出していくつか入っていたと食い下がるので、Oさんは、売れないから返品してしまったと伝えたそうです。
でも、女性は、店中探せだの、覗き込んで取り寄せは出来るのか訊いてきました。
Oさんは、取り寄せは出来ますが、お幾つ必要なのかと訊くと、やはり一つだと言う。
一つでいいならここにありますが、とカゴの中を指すと、それでは駄目だと言う。
そして突然、手を大きく振り回して、空気中の見えない何かを払いのける仕草を始めたそうなんです。
しかも無言で。
しばらく手を振り回した後、Oさんに向かって店長なのかと訊いてきたので、Oさんは、違うので店長から説明の電話を入れますから、連絡先を教えていただけますかと言ってみたそうです。
すると、女性は、もういい!と怒ったように行ってしまったそうです。
Oさん曰く、目がすわっていて、無表情で、カウンターの中にまで入って来そうな勢いでとても怖かったとのこと。
もしかしたら、ただの潔癖症のかたというわけでは無かったのかもしれないね、と話し合いました。
このかたも、自分がウィルスを付着させるかもしれないということに関しては、まったく考えないのでしょうか。
こちらも商品の管理はしっかりしていくつもりなので、買う方のマナーも考えでもらわなければならないと思います。
私も、他の店舗へ行けば消費者側にまわります。
他のお客さんの迷惑にならないよう、商品に無闇に触れないよう、買うものにだけ触れるように気を付けています。
コロナの時代だからこそのマナーだと思いますが、コロナに関係なくても、必要なマナーですよねえ。
思いやりのあるお客様にはこちらからもどんなことにでもお応えしようと努力しますが、他人のことはどうでもいいという迷惑なひとには、厳しくなってしまう私なのです。