Light in June

文学やアニメ、毎日の生活についての日記。

エストニア最新作品集

2009-03-26 00:51:39 | アニメーション
ラピュタ阿佐ヶ谷で「エストニア最新作品集」を観てきました。ところが、ちょっとしたハプニングが。上映が開始されてスクリーンに映し出されたのは、カスパル・ヤンシスの「ウェイツェンベルグ・ストリート」。あれ?これって「エストニアの作家たち」のプログラムにあった作品じゃないの?まさか二つのプログラムに同じ作品が収録されてるってことはないよな。ということは、間違って上映されてるの?頭の中を色々な想念が駆け巡りましたが、とりあえず次の作品で間違いかどうかを最終的に判断することにしました。このカスパル・ヤンシスのアニメーションはけっこうおもしろいので、これを観終えてからにしようと思ったのです。

果たして次の作品も「エストニアの作家たち」の中にあったウロ・ピッコフの「人生の味」でした。これが始まるとすぐにぼくは真っ暗な部屋から脱け出しました。一応手持ちのパンフレットでプログラムを確認して、上映作品が間違いであるということを確信。受付へ急ぎました。「いま「エストニア最新作品集」が上映されているはずなのに、「エストニアの作家たち」がかかってますよ」と指摘すると、受付の人はさすがに驚いたみたいで、事務室みたいなところへ入ってゆきました。やはり間違いだったらしく、これから「エストニア最新作品集」をかけ直しますとのこと。ぼくはもう一度スクリーンの前に戻りました。途中まで流されていた「人生の味」はいきなりストップし、係りの人の謝罪とともに「エストニア最新作品集」が始まりました。これで一件落着。

それにしても、間違った作品がかかっていることをぼくの他にも知っている人がいたはずです。実際、上映後にそんな会話を耳にしました。ところが誰も行動を起こさなかった。あの時点でぼくが間違いを指摘しに行かなければ、最後まで別の作品が上映され続けていたかもしれません。そんなに受身で大丈夫なの、と心配になります。ぼくが特別行動的だというわけでは決してないのですが、何に対しても「ま、いいか」という精神ではいけないのでは、と疑問に思います。ミスをしたのはラピュタ側ですが、ミスをそのまま見過ごしてしまうのもやはり罪ですよね。報告することで傷口を広げずに済み、取り返しのつかない事態を避けられました。しかしこんなことってあるんですね。ちなみに、上映終了後にお詫びとしてラピュタの無料招待券をもらいました。ちょっと得しちゃいました。せっかくだからもう一本観てみようかなあ。

なんか作品のレビューを書く余裕がなくなってきました。少しだけ触れます。
カスパル・ヤンシス「マラソン」はおもしろかったです。このヤンシスという作家は注目ですね。今回のエストニア特集で最大の収穫でした。犯罪者がマラソン選手に紛れて警察の手から逃れる、というのが基本ストーリーなのですが、それに様々な滑稽な出来事が絡んで、ユーモア溢れる佳品になっています。

それと印象に残ったのは「ドレス」(イリナ・ガリン、マリ・リース・ヴァソフスカヤ)。ちょっとシュヴァンクマイエルを思わせる作風です。人体が何百年もの間に埃や黴に覆われていく様子、というのはこの作品を観てのぼくの個人的な直感なのですが、腐敗したようなヴィジュアルが退廃的で且つ廃墟のような神秘的な美しさをも湛えていて、目を瞠るものがあります。少し不気味なので好みではないのですが。