ジョルジュの窓

乳がんのこと、食べること、生きること、死ぬこと、
大切なこと、くだらないこと、
いろんなことについて、考えたい。

傘寿と金婚式

2005-09-08 | 考えたこと
2005年の春は
忙しかった。

そんな中、
大正うまれの義父の
傘寿のお祝いがあり、

週末、一族が集まった。

私達一家は
直接 義母のグループホームに迎えに行く。




グループホームに着いて
義母の部屋に 皆で入っていった時、

あとから部屋に入った私をみるなり、

義母は 私をじっと見つめ、
「久しぶり。」と言いつつ、
見る見る 瞳を潤ませて 抱きついてきた。

びっくりしたけど、嬉しかった。

私を覚えていてくれただけで嬉しい。

「久しぶりだったね。

 ずっと来なくて、ごめんね。」

どこまでわかっているのかが わからない義母だが、
少なくとも 私の顔の記憶を 
「好き」と「嫌い」のふたつの箱のうち、
「好き」のほうの箱に入れていてくれたのだ。



翌月、
今度は 義父母の金婚式のお祝い。

義弟一家は 実家に寄り、
私達一家は グループホームに寄って
地方都市のホテルで落ち合い、
食事をすることになった。



週末は忙しい我が家だが
義弟の仕事の都合もある。

義弟は 単身赴任も2年目、
かなり遠い所を やってきては
末娘と一緒に 義父母の元を
たびたび訪れている。

同じ関東に住む私達夫婦に
本当は 
もっと義父母の面倒を見てもらいたい
と思っているのに違いない。



我が家はこの日 一仕事を終えてから
グループホームに向かう事になったが
娘と息子には
電車で先に行っていてもらった。

常磐線を降りて しばらく歩く。

亭主の実家より グループホームの方が
ずっと 通いやすい。



亭主と私がグループホームに着いたら、
義母は娘と腕を組み、手を取っていて
機嫌がいい。

抱きつかないまでも、
今度も 手を握るくらいは、と思っていたのに
娘の手を離さなかったので、
ちょっとがっかり(笑)。



美味しい食事をいただいて
カラオケも飛び出して
なかなか 楽しい集いになった。

なかでも義母は カラオケが上手で びっくり。

唱歌をよく覚えている。

孫達は 親も知らない新しい曲を歌う。

親子のデュエットもあり、
珍しくも楽しいショットが撮れた。



帰りは 
名残惜しそうな義父に困りつつ
また それぞれに帰る。

グループホームでは
「おかえりなさい。」と迎えてもらう。

「楽しかったですか?」

「カラオケもしたんですよ。」

「お母さん、お上手でしょう?

 ここでカラオケ大会をした時も
 上手でしたよ。」

「カラオケ、やったんですか?」

「ええ。
 美空ひばりなんか、ずっごく上手。」



なんだ、そうだったのか、と思いつつ、

歌が好きで 上手な義母の
楽しい思い出ができた。

それまでは 恥ずかしがって
あまり 人前で歌う人ではなかったから。



「キンコンシキって、おめでたいの?」

義母の愛情を独り占め状態にしている
義弟の小学生の娘が聞いた。

「おじいちゃんと おばあちゃんの
 ふたりとも生きていないと
 金婚式ができないでしょう。

 それから、リコンしちゃったら、
 金婚式ができないでしょう。

 やっぱり、金婚式って、
 
 すごくおめでたいことなんだと思うよ。」



本当はふたりとも丈夫で元気で金婚式、
というのがいいのだろうが、

結婚して50年、

身体のどこもかしこも
すこしずつくたびれてきて、
ほころびが出てくる。

100パーセントおめでたい金婚式では
なかったかもしれないが
やはり
お祝いをしないではいられない。

義母の機嫌がよいのが 嬉しかった。