森の時間 SINCE 2002

Le Temps Du Bois

秋色ー日本の森林文化を思う

2005年08月17日 | 森林・自然・環境教育

木陰で森の風に涼む。ふと空を見上げると秋の雲。R0012270

いつの間にかススキに穂がつき、ヤマハギは可憐なピンク色の花を咲かせ、草むらにはマツヨイグサの黄色が乱舞している。そして、耳を澄ませば、風の音に隠れていた蟋蟀があちらこちらで鳴いている。マツヨイグサの仲間は全て外来種。高原に良く見られるのはオオマツヨイグサ。夕方薄暗くなったころ、折りたたまれていた花びらがだんだんほぐれ、見ている前でふわーと開く。オオマツヨイグサはアレロパシー(多感作用)が強く、他の植物が育たない。高原の奥でも在来種が危険に晒されている。日本の原風景が消えてゆく。

R0012245 R0012265 R0012267R0012246短い一生を終えた蝉が静かに横たわる。大きさと外観からすると、カナカナと鳴くヒグラシ(蜩)だと思う。

夏の生き物のざわめきは日毎に遠く聞こえるようになり、豊穣な秋が赤や黄色の衣装をまとい始めている。秋はすぐそこまで来ている。 「小さい秋、小さい秋、小さい秋見ーつけた♪」 

四季に生き、四季を愛でた日本人の自然感覚は、自然の恵みを無駄なく利用し再生する日本特有の文化を形成していた。

文明によって森林が破壊され地上に頼るものはない荒廃した地域から、ユダヤ・キリスト・イスラムの一神教が生まれた。天上の絶対神のみを頼り、自然は克服の対象になった。日本には、折々の四季があり、1.3億人が暮らせる水を供給する森林がある。森林の価値・機能は75兆円という試算があるらしい。これは日本の国家予算の規模だ。しかも再生する資源だ。

戦争で焦土と化した日本は、奇跡的な復興を成し遂げ、経済大国になった。それを実現してくれたのは、森林が提供してくれた水資源と、稲作農耕文明で培われた「一所懸命」、辛抱強い日本人の精神。日本中どこにいても、何でも欲しいものが手に入る便利で豊かな社会になった。しかし、陽の部分があれば陰の部分がある。経済至上主義の陰で、国土、自然、森林、生態系が破壊されていた。道路は舗装され、沼・湿地は埋められ、雑木林は産業廃棄物の捨て場になり、川・渓流はコンクリートで固められた。どこまで便利で豊かになればいいのでしょう。日本は、日本人はこの先を何を目指すのでしょう。

森の文化を形成した日本人の遺伝子は、現代の我々の体にも受け継がれている。国土が破壊されても、日本の豊かな四季は繰り返し、生き物も躍動している。

日本人の自然感覚を呼び起しましょう。

森を守るということは、日本の国土を守るということ、日本そして日本人のアイデンティティーを守るということ。

そして、それは日本を守る『力』だと思う。

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