ナミエガエル(Limnonectes namiyei) Namiye's frog
クロイワに遭遇した後。またしばらく歩くと、辺りにフワリと優しい花の香りが立ち込めた。見上げると、淡い紫色をしたセンダンの花がまさに満開だったのだ。地面にも散らばる花の様をライトで照らしてゆくと、突如巨大なカエルの影が浮かび上がった。
ナミエガエルだ。
前回の沖縄では豪雨の中見つけたナミエを何とか撮ろうと近付いたら一瞬で跳んで消えてしまった。しかもついでに体はずぶぬれ、という苦い思い出だった。
このクラスのカエルともなると、俊敏性こそないものの跳躍のパワーは凄まじく、一度跳ばれたら指をくわえて見送るしかなくなってしまう。だからまずこいつの存在に “こちらが初めに気付く” 必要がある。さらに跳ばれぬよう、細心の注意を払って接近し撮影の体勢をとらなければならない。
このナミエガエルの迫力ときたら本当に大したもので、その顔つきはイクチオステガを彷彿とさせるほど。
ナミエガエルと言えば図鑑に載っている写真、瞳孔が小さくなったいわゆる「可愛げのない」イメージがあったけれど、そんなことはなかった。ライトを当てればすぐに可愛くない顔になってしまうけれど、暗がりの中では案外可愛らしい顔をしているものだ。
「実は図鑑で見るよりずっと可愛い」というのはクールガエル属全体に言えることで、これは可愛くないと誤解している人がいたら是非実際に見てみて欲しい。私がボルネオで見たL. kuhliiも、台湾で見たクールガエルも、皆一様に「憎めない」容貌だったのは間違いない。
ヒメアマガエル(Microhyla okinavensis) Ornate narrow-mouthed toad
リュウキュウカジカガエル(Buergeria japonica) Ryukyu Kajika frog
【Okinawa Is.(沖縄本島) Japan/13th April, 2012】
クロイワトカゲモドキ(Goniurosaurus kuroiwae kuroiwae) Kuroiwa's ground gecko
数年前まで、1人で夜の森を歩くのはハブの居ない宮古島の森が精一杯だった私だけれど、今では夜のやんばるの森でさえ1人で歩くようになってしまった。
夜のやんばるの森は、昼の暑さとはうって変わってヒンヤリと涼しく、本当に歩きやすい。
長靴の歩みをふと止めて耳を澄ませば、沢の流れる音に混じってハナサキガエルの跳躍するカサッツ、カサッツという音がする。
気配を感じて数メートル先を照らしていたライトを足元に向けると、クロイワトカゲが私の目の前を素早く横断するところだった。
【Okinawa Is.(沖縄本島) Japan/13th April, 2012】
ヒメハブ(Trimeresurus okinavensis) Dwarf lancehead snake
霧雨の夜。
夕暮れ時から数時間だけ仮眠をとろうと思って寝たら、うっかり深夜まで寝過ごしてしまった私は、慌てて外にとび出した。
気温がそこそこあり、地表が湿った絶好の活動条件なら、ヒメハブの姿を見るのはそう難しくない。
アマミタカチホを見た時もそうだったけれど、鬱蒼と木々の茂る林道をひたすら歩いても成果が無い時は、逆に適度に開けた斜面沿いの道を攻めた方が良い結果になることが多いように思う。
撮影する中で、私がヘタッピなのが原因の大部分を占めるのだけれども、それでも少しも気に入った表現が出来ないとやはり外部ストロボを持たなければならないと強く感じた。
ハナサキガエル(Rana narina) Okinawa tip-nosed frog
種にもよるけれど、例えばハナサキガエルに関しては、このぐらい“反った姿勢”がありのままの姿。
少しでも警戒しようものなら前脚の張りを緩めて防御姿勢をとろうとするし、少しでもライトを当てようものなら瞳孔が小さくなる。
【Okinawa Is.(沖縄本島) Japan/12th April, 2012】
ニホンヤモリ(Gekko japonicus) Japanese gecko
ニホンヤモリは身を隠すのが割りと上手で、姿を目にする機会はそう多くなかった。
秋に、アパートの駐輪場に灯る光へ集まってきていた個体も、私が写真を撮らせてもらおうと忍び寄るとすぐにアイビーの茂みへと姿を隠してしまったのだった。
ところが、ヤモリの探し方を聞いてからというもの、これが面白いように見つかるようになった。
例えば私が研究室から構内にある購買へお茶を買いに行く時。100m足らずのこの往復の間に、ヤモリを2個体は見つけられるようになったのだ。
4人くらいで購買へ向かう時には、ヤモリのいそうなポイントの前で立ち止まってジャンケンをする。
そして、このジャンケンで負けた人は「ヤモリチェック」をする。
見事当たればニホンヤモリが居て大はしゃぎ。何も居なければ残念。そしてハズレは、集団越冬するクサギカメムシの成虫達か、ヨコヅナサシガメの5齢幼虫達。
メカ的な怪しさのあるヨコズナサシガメに至っては、全個体が半分シンクロしながら奇妙なウェーブをしているものだから、ハズレ感が満載である。
一見地味なニホンヤモリ。けれど、例えばカメラのレンズを通して見ると、これが中々どうして格好いい。虹彩はカジカガエルのそれのように巧妙な岩肌模様。ツブツブな質感の顆粒状鱗は大小様々で、形も丸いものから多角形なものまで色々ある。そして、ラブカの項でも述べたけれど、ヤモリもまた口角付近が上に「ニッ」と上がっていい顔をしている。
私が少しヤモリから目を離すと、一瞬どこにいったか分からなくなった。実はヤモリ自体は少しも動いてなかったのだけれど、この体色が高度な保護色になって私の目を数秒欺いたのだった。さすが、隠れ身の達人だ。
【2011/11/12/神奈川 Kanagawa,Japan/Nov.2011】
ニホンアマガエル(Hyla japonica) Japanese tree frog
妖しい魅力のある「透明骨格標本」。
まるで、どこかの物語に出てくるタイムトラベルに失敗してしまった被験者のような姿だ。
この標本は硬骨を赤紫色、軟骨を青色に染色してある。
【2011/08/24/神奈川 Kanagawa,Japan/Aug.2011】