リュウキュウヤマガメ(Geoemyda japonica) Ryukyu black-breasted leaf turtle
沖縄本島3日目。
島に接近していた台風は朝になってもその勢力を少しも弱めることなく、暴風雨も止む気配が無かった。
このように外を歩くことも叶わぬほどの天候のおかげで、朝はとびきり暗い林内で数個体のヤンバルクイナと、地面から垂直上方向にフライングキャッチをするホントウアカヒゲの雌を見たぐらいだった。
そんな時でも、かねてより逢いたかった生き物に会えたことで私の気分はすぐ上々になった。
ひと気の無い道で、荒れ狂う森をものともせずに闊歩していたのは、まさにリュウキュウヤマガメだったのだ!
しっかりと主張する3列のキール、赤味を帯びた体色、背甲後縁のパンクな刻み目、鎧を装着したような脚...どこもかしこも、なんて魅力的なカメなのだろう。
加えて今は背甲が雨に濡れることでその輝きが3割ほど増している。そのためか、リュウキュウヤマガメ自身も心なしか生き生きとして見えた。
この後かなり早めに空港へ戻った私達であったけれど、受付で飛行機が何ごとも無く運航されることを聞いて呆気にとられてしまった。
そこで私達は最後に、サトウキビ畑へと向かった。畑のウネに目を凝らしながら農道をゆっくりと進むと、ミフウズラの雄が固まってこちらを見ているのをいとも簡単に見つけられた。
気が付けば雨は止み、分厚い雲の間から一筋の光が差していた。
もしもう2、3日滞在していれば、この台風の落し物であるハシブトアジサシが見られたかもしれなかった。また次の機会に期待したい。
【2011/06/25/沖縄本島 Okinawa Island,Japan/June 2011】
ホルストガエル(Rana holsti) Holst's frog
夜の森。この日は残念ながら台風が沖縄本島に接近していたため、例の100円シャワーを浴びている時から吹き荒れる暴風によって木々が激しくざわめいていた。シャワーの後、私達が車に乗り込みドアを閉めた瞬間・・・まるで何か仕掛けがしてあったかのように凄まじい豪雨が突然降り出した。バケツをひっくり返したと言うよりも、車で滝に突っ込んだと言った方が近いかもしれない。
適度な雨ならばむしろ好機。雨が降ればカエルが良く出るというもので、私達が雨の中で鎮座するホルストガエルを見つけるのは時間の問題だった。
ホルストガエルの貫禄ときたらまぁ大したもので、奄美で見たオットンガエルといい勝負。覗き込む私に対して一瞥もくれないものや、むしろどうだと言わんばかりに胸を張ってみせるものまでいた。
一度はカメラを持ち出せるほどになった雨足は、ナミエガエルやアカマタ、リュウキュウアオヘビが姿を現す頃には森の唸りに加えてどうしようもないほどに強くなっていった。
【2011/06/24/沖縄本島 Okinawa Island,Japan/June 2011】
バーバートカゲ(Plestiodon barbouri) Barbour's blue-tailed skink
昼下がりの森。この日初めて歩く林道は予想以上にアップダウンが激しくて、休まずに歩いていたらすぐに汗だくになってしまった。
何kmか歩いてやっと1羽姿を見せたホントウアカヒゲは、すぐに谷の向こう岸へ行ってしまった。けれど、がっかりしていた私は次の瞬間にはうつむいた頭を勢い良く起こしていた。
対岸にある花の咲く木からした声を、聞き逃す筈も無かった。「キョッ、キョッ」という声!
重なり合う葉の隙間からその姿を捉えると、それは声を聞いて思い描いた姿と一致した。腹が妖しくブラッディなドクターペッパー色をした、ノグチゲラだ。しかも頭の赤い雄だったのだ。
ノグチゲラはしばらく鳴きながら餌を探した後、木々を飛び移りながら森の中へ消えていった。その後もドラミングや鳴き声を含めるならば5個体以上のノグチゲラを確認できた。
しばらくして林道を歩く私の前を何かが横切ったと思ったら、それは小さなバーバートカゲだった。このバーバーは見た目からは想像も付かないような機動力で私から見て左手の斜面にいたカマドウマの1種を捕らえ、また右の縁に駆け戻った。
私がしばらく観察していると、その食事の一部始終を見せてくれた。
飲み込む瞬間。飲み込むと言うより自分の体に押し込むといった感じで。
体をくねらせながら、胃袋に収納する。
最後に、満足気な舌なめずり。“ペロペロ”
夕食はゴーヤチャンプルー。
本州ではなかなかないほどの安値で、実に素晴らしい完成度の一品だ。ラフテーが入っているところがこの店のポイント。
【2011/06/24/沖縄本島 Okinawa Island,Japan/June 2011】
リュウキュウカジカガエル(Buergeria japonica) Ryukyu Kajika frog
夜の渓流は真っ黒で、何だか吸い込まれてしまいそう。森の奥まで続くその黒い流れを見ると、理由のない怖さが背筋をなぞる。
でも、そんな沢を手に持ったライトで照らせば、まるで突然「天の川」に変わったかのように無数の星が煌き出す。その正体はエビの目だ。どんな暗闇でも何か生き物さえ見つければ、先に述べたような怖さはいとも簡単に吹き飛ぶというもの。以前、道もよく分からないマレーシアの森を深夜に歩いていてもまさにそうだった記憶がある。
沢に突き出た石の上、絶好のソングポストで鳴いていたのは、綺麗なレモンイエローをしたリュウキュウカジカガエルの雄だった。彼の軽快で大きな鳴き声が沢の対岸の岩盤に反射して、黒い川面を滑るように響き渡るのがわかる。
ヒメアマガエル(Microhyla okinavensis) Ornate narrow-mouthed toad
森のいたる所からする「ギリリ ガララ...」という声は、カエル型のギロ(木製の打楽器)の背中をゆっくりなぞった時の音にそっくり。この声の主はヒメアマガエルだ。小さい上に色彩が枯葉によく溶け込むから見逃しがちだけれど、ひとたび跳ねれば小さい割りにかなりのジャンプ力を誇るためその存在に気付くことが多い。
このヒメアマガエルの背中の模様には、なんだか宝の地図でも隠れていそう。
【2011/06/23/沖縄本島 Okinawa Island,Japan/June 2011】
クロイワトカゲモドキ(Goniurosaurus kuroiwae kuroiwae) Kuroiwa's ground gecko
下ばかり見て歩いているとリュウキュウオオコノハズクはさっぱり見つからないけれど、その代わりコイツに出逢える。のっしのっしと自慢の尾を振りながら堂々と歩く、クロイワトカゲモドキの雄だ。私がもうほんの少し早く見つけていれば、画面に雌雄のクロイワが写った画になったのに、と思うと少し残念。
瞳孔の細くなった時も厳つくてクールだけれど、この瞳孔が丸くなった時の顔ときたら、なんとラブリーなことか!
林道沿いからハナサキガエルやリュウキュウアカガエルが跳ねていく中、今度はオオトモエが私の照らすライトの周りをハタハタと飛び始めた。近くにとまってくれないかとライトの光を調節してみたけれど、そのまま森の中へ飛んで行ってしまった。
こちらは別個体。青いアイシャドウがお洒落だ。
【2011/06/23/沖縄本島 Okinawa Island,Japan/June 2011】