オグロシギ(Limosa limosa melanuroides) Black-tailed Godwit
日曜日。うららかな春の日差しに誘われて、干潟を訪れた。
この日は小潮で、満潮の時に到着したにもかかわらず、干潟の一部は既に露出していた。
脛まで浸かる水位を優雅に歩くセイタカシギ達は、今年は少し多めに渡来しているようだ。
思い返せば、大学に入って最初に先輩に連れて行ってもらったのはこの干潟だった。まさにこの時期、このセイタカシギ達が歩く区画で、目の前で美しく結ばれたセイタカシギのペアを見て、心底感動した記憶が蘇る。
潮の動かない間、シギチ達は皆休息中のようで、無数のハマシギの群れやダイゼン、メダイチドリ等のほとんどは僅かに露出した干潟部に集合して、顔を背中にうずめていた。
一方、一匹狼のホウロクシギは満潮でも構わず歩きまわっている。
私はまず、逆光で強風の吹きつける岸から水面を見て、採餌中のコガモを片っ端からチェックした。
この条件化での捜索はなかなか困難なもので、風でぶれるスコープや双眼鏡を見過ぎてめまいを起こした。こうして船酔いしたかのように気分が優れなくなってきたところで、やっと側胸に縦白線がビシッと入る亜種アメリカコガモを見つけた。
これを見つけると、不思議と優れなかった気分が回復するものだ。
潮が引き始めて干潟部がどんどん広がり始めると、さっきまで休んでいたハマシギやダイゼン達が分散して採餌し始めた。
しまった、早くしないと。干潟部が拡大すればするほど鳥が探しにくくなる。
今までどこへ行っていたのか、6羽ほどのオオソリハシシギが姿を見せた頃、干潟部はもうかなり拡大していた。澪の側に佇むさっきのホウロクシギも、満腹だといわんばかりに休息体勢をとった。
スコープを使って遠くばかりを探した後に、ふと手前側を見ると、換羽中のユリカモメが飛び交う中に1羽のシギが顔を隠して休息していた。
見た瞬間、すぐさまピンときた。コイツだ。
するとまもなく目を覚ましたそのシギは、まっすぐにシャープな嘴を見せてくれた。
今日一番見たかった鳥、オグロシギだ。
まだ冬羽のオグロシギは、嘴の形や尾の色もさることながら、体形がオオソリハシシギに比べて明らかに華奢で、特に頸は際立って細長い印象を受けた。
オグロシギが飛翔時に見せる白い翼帯もはっきりと見ることが出来た私は、満足して家路についたのだった。
【2012/04/01/千葉 Chiba,Japan/Apr.2012】