花追い放浪記

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ツリガネニンジン

2021-10-27 | コウの花図鑑

昨年、近場でツリガネニンジンらしき植物を見つけたので、今年も観察に出向いた

ツリガネニンジンとサイヨウシャジンの違いに、花冠の形状が挙げられるので、下図に各地で観察したものを掲載した

真ん中のツリガネニンジンが、今回観察した自生地のもので、他は九州各地で撮影したサイヨウシャジンと思われる植物である

サイヨウシャジンの花冠は、先がすぼまる壺型で、ツリガネニンジンは釣鐘型と言われている

下図のごとく画像を並べてみると、気が付いた事がある

雨乞い牧場、竹田市、霊山、そして今回のツリガネニンジンは、大分県産なのだが、九州のその他の地域のものが典型的な壺型であるのに対し、大分県産は、先がすぼまらず、釣鐘型のように見える

n数が少なすぎて、これをもって傾向を判断する事は科学的ではないが、花冠の形状だけに着目した場合、大分県産のものはツリガネニンジンに近い傾向があるのでは? と感じてしまう

 

ただ、ツリガネニンジンの特徴とされる、萼片の突起に着目してみると、今回観察した自生地の個体以外には見られない

花柱の長さに関しては、いずれの個体も長いものだが、ネットでツリガネニンジンの画像を確認すると、サイヨウシャジンと比較して短い傾向があるものの、バラツキが大きく、これによる判断は難しいのではないかと思われる

なんだかスッキリしないが、今回観察したものは、花冠が釣鐘型で、萼片に突起があるという、2点の特徴を有する事からツリガネニンジンであろうと考える

九州においては、ツリガネニンジンは非常に稀な物だと思っている

 

ツリガネニンジンは、山菜のトトキとして親しまれ、春の若苗が食される

また、根は沙参と称する生薬として用いられ、鎮咳、去痰の効能を示す

ツリガネニンジンは、酸性土壌に分布する傾向が強く、貧栄養土壌に対する適応力が高いとの事

 

学名:Adenophora triphylla (Thunb.) A.DC. var. japonica (Regel) H.Hara

和名:ツリガネニンジン(釣鐘人参)

キキョウ科 ツリガネニンジン属

撮影 2022年10月 大分県

初版 2021年10月27日

記事アップロード 2022年11月17日

画像アップロード 2022年11月09日

 

以下 アーカイブ

記事アップロード 2021年10月27日

画像アップロード 2021年10月27日

 

10月に見つけた野草の花(大分県)

ツリガネニンジン(釣鐘人参)

 Adenophora triphylla (Thunb.) A.DC. var. japonica (Regel) H.Hara

 

キキョウ科 ツリガネニンジン属

花 期 8~11月

生育地 山野、岩場、海岸

分 布 北海道~九州

RL指定 環境省カテゴリ:なし 大分県:なし

 

九州は自生分布に含まれているが、似ているサイヨウシャジンが大半で、ツリガネニンジンは稀なようだ

 

花の撮影時に萼を確認しているが、ツリガネニンジンの特徴である萼片の突起を確認できたのは、過去に1度だけなのだ

先日、近場の林縁に群生を発見し、萼を確認すると突起が見られ、花冠の形状もツリガネニンジンに当てはまるものだった

花柱に関しては花冠から長く飛び出ていたが、ツリガネニンジンの花柱は必ずしも花冠と比較して短いとは限らないようだ

 

ツリガネニンジンは萼片に突起(小鋸歯または鋸歯と表現されている)が1~2個あるそうだ

過去、長崎県や佐賀県で萼片の突起を観察した限りでは、前述のごとく1例しか確認できておらず、今回で2例目となる

(下図は今回観察した個体群の萼と、過去撮影したサイヨウシャジンの萼を比較したもの)

 

今回確認した個体群は、萼片の突起と花冠の形状からツリガネニンジンであろう

尚、ネットの画像を確認したが、ツリガネニンジンの花冠の形状は変異が大きく、必ずしも鐘型である訳ではない

また、花柱が花冠の長さと同程度花冠から出ている事も普通であるようだ

 

ツリガネニンジンは、草丈30~100cm程の合弁花類、キキョウ科の多年草

根生葉は円形、基部は心形で、柄を持ち、花期には枯れる

茎葉は茎を中心に4~5枚輪生し、線形~楕円形、鋸歯があり先が尖る

茎に輪生または互生する枝に数個ずつ花をつける

花冠は淡い青紫色で鐘型や壺型、先は5浅裂する

萼片は線形で鋸歯が1~2個ある

花柱は花からやや突き出すか、花冠と同じ長さ出ている

 

輪生する茎葉

今回観察した大分県東部では、長崎近辺と比較してツリガネニンジンが多く自生しているのかもしれない