安満岳は2018年、「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」の構成遺産として世界遺産に登録された
安満岳への公式な登山道としては、南側の鯛ノ鼻方面からの登山道と東側坊方町方面からの登山道があるのですが、その昔、西側の春日集落の信者が使ったキリシタン参道と言われる道もあったようだ
詳細な登山ルートは全く不明なのだが、春日の棚田を散策していると、その登山口に昔の登山道として紹介されている
情報を収集してみると、今ではルートは途中で消失し、藪こぎが必要との事であったが、昔道に思いを馳せ、登ってみたくなった
安満岳について調べてみると、この山は神、仏、キリシタンの三位が存在する平戸島の聖地であるらしい
元々安満岳は、平戸を護る霊山で、豊漁や航海安全祈願の信仰の山として知られ、安満神社(白山比咩神社)と今は廃寺となった西禅寺があり、後に教会も建てられていた痕跡が残るという事
領民や潜伏キリシタンにとっては山岳信仰とあいまって聖地として参詣することが喜びとされていたとの記載がある
参照 達人Navi平戸
登山口の春日集落については、安満岳と同じく構成遺産として登録されている場所である
平戸島の西岸にある人口70人ほどの小さな集落で、納戸神を有する家屋、美しい棚田、石祠、墓地遺跡、およびこれらを結ぶ里道から構成されている。
アルメイダ神父の書簡では「(春日の)教会は清潔で荘厳な場所にあり、海と陸の眺望がはなはだ美しい」ことが書かれており、450年以上昔から今と変わらぬ美しい眺望があったことが分かるとの事
春日集落の潜伏キリシタンは、19世紀のキリスト教の解禁後もカトリックには復帰せず、かくれキリシタン信仰を継続したため、集落に教会堂は存在しないとの事である
参照 達人Navi平戸
安満岳への公式な登山道は、いずれもショートルートで物足りないものであるが、春日集落からのキリシタン参道は、海に近く、標高の低いところからのロングルートなので登りがいがありそうだ
今回、正式なルートではないので、ログは拡大して見る事ができないよう配慮した
標高差は530m程 距離は約11Kmであった
さて、春日集落ののどかな棚田を見ながら、標高を上げていく
キリシタン参道の登山口にはこのようなものがある
この切り通しから、昔道へ入る
最初は明確な道が続いている
谷へ降りて渡渉するのだが、このあたりから踏み跡が不明瞭となってくる
山深い場所なのに、石積みが見える
後で、1970年代の航空写真を見てみると、ここには4段ほどの小さな棚田が確認された
水が滴る岩場を通過
岩場の上へ登っていくと、電柱が倒れていた
とても山深い場所に感じられるのだが、昔は人の営みがあったのであろう
電柱の先をしばらく進むと、完全に踏み跡は消失し、藪こぎ状態
急斜面の尾根に登り上がり、しばらく喘いでいると、昔道に出くわした
ここを道なりに登っていくと、苔むしたコンクリート? の細い道へ出た
直ぐに山へ入る道があったので、そこに突入してみるも道は途中で消失し、すったもんだの末、もとの道に戻ったようだ
山野集落の小さな車道を横切り、山頂方向に向かう昔道へ入った
ここは明確な登山道の様相で非常に歩きやすい道であった
ずいぶん歩いているうちに、白い人工物が見えたので、近づいて見るとテントのようなものであった
反対側に回り込んでみると、正規登山道の合流地点である鳥居のところだったのである
見慣れた石畳を登って行く
この石畳の裏には般若心経が書かれており、昔は裸足で通った道であったらしい
白山比賣神社に到着
ここは台風で倒壊し、現在はプレハブとなっている
神社裏手の荘厳な雰囲気の場所
展望岩に到着
登山口の春日集落が見える
あそこから登って来たんだぁ~
大展望を満喫しながら、軽い食事をとった
奥の院様にも立ち寄る
ここは、キリシタンの神様が鎮座する霊地として信心を集めてきたところだそうです
2019年に入ってろくなことがないので、今後の幸運の訪れを願ってお参りし、下山する事にしました
午前中、今一不機嫌であったお日様も、顔をだしてくれて木漏れ日が心地よい
途中このような展望もある
帰りは、さばくさらかしを経由する
急斜面に切り開かれた昔道は、少し荒れているが、それほど苦労はしない
木々の間から中江ノ島が見える
中江ノ島は、潜伏キリシタンにとって殉教地として信仰され、お水取りが行われていた聖なる島
春日の棚田も見えてきた
そのうち、雄大な眺めの展望岩に行き着いた
海がとても美しい
今、降りてきた方向も見える
再び林内を進んでいくと
さばくさらかしに到着
長崎県では時津町のものが有名だが、平戸にもあるのだ
一見、どこがさばくさらかしなのだ? と思われそうだが、横から見ると、少し納得
落ちてきそうな感じがしないでもない
ここから先はまだ長い
途中の炭焼き場
道の突き当りに、新しいコンクリートの道ができており、作業者に伺うと、水道関係の道だそうな
春日集落に行くのだったら、この道から県道へ出たほうが無難だと言われたが、舗装路を歩いてもつまらない
ここから急旋回し、荒れ果てた昔道を下っていったのだ
無事、春日の棚田に戻ってきた
さばくさらかし付近の岩場が見える
馬洗い川で手を洗わせてもらった
昔この周辺では牧畜が盛んで、このくぼみで馬を洗ったという事だ
棚田を下っていくと、シマカンギクが咲いていた
春日集落の観光パンフレットには海岸には、春日神社、力石、まる石の海辺という観光スポットがあると書いてあるので行ってみよう
海岸に向かう道の先には民家があり、その敷地のように見える細い通路を通る必要がある
ちょっとそこを通るのははばかれるようなところで、その通路で作業をされている御婦人と目が合ってしまった
そこで踵を返すように引き返すのはかえって怪しまれるので、ご挨拶し丁重にお断りして通してもらったのだが、その御婦人は明らかに不機嫌な態度で、挨拶も返してもらえなかった
やっぱりまずい事をしたかなぁ~
ここの住人にとっては、見ず知らずの観光客が自宅の直ぐ脇の狭い通路を行き来するのはどう考えても愉快な事ではない
これを参照して下さい
であるなら、こんなところを観光パンフレットに載せるのは反則ではないのか?
御婦人の態度は、どう見てもそれを了承しているようには見えないのである
帰りもお礼の言葉をかけたのだが、御婦人の怒りは収まっていないようで、やはり憮然とした態度であった
ごめんなさい、もう二度と近寄りません
皆さんも、ご迷惑なのでここには立ち寄らない方が懸命だと思います
海から上がっていく道には、早くもシロバナタンポポが咲き誇っていた
車道に登ると、彼方に安満岳の勇姿が見えた
幻のキリシタン参道を歩いて、あそこまで登ったのだと感慨にふけったのでありました
終わり(^O^)/