花追い放浪記

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備忘録 AF-S DX NIKKOR 18-55mm f/3.5-5.6G VR IIのテスト

2019-01-12 | 写真
近頃登山に携帯するカメラについて、いろいろと考えているが、いまいち結論が出ない

登山において、せっかく美しい風景や珍しい野草の花を撮影するのならば、できるだけ綺麗に撮りたい

しかし、手持ちの機材で対応する場合、高画質=重くてかさばる という図式に当てはまってしまい、高画質を求めれば求めるほど疲労度が増してしまう

ニコンのミラーレスZ6など購入すれば、一気に解決するかとも思ったが、結局高性能のレンズを使う場合、ミラーレスといえども重くてかさばってしまうのだ

手持ちの機器で対応する場合の選択肢は4つ考えられる

①OLYMPUS XZ-2 + クローズアップレンズ

②ニコンD5300 + キットレンズ(18-55mmズーム) + クローズアップレンズ

③ニコンD5300 + 24mm単焦点レンズ + 60mmマクロレンズ

④ニコンD750 + 24mm単焦点レンズ + 50mm単焦点レンズ + 90mmマクロレンズ

普段の散歩代わりの近場登山の場合は①でもいいかと思えるが、やはりその性能には妥協しなければならない点が多い

②の場合、ボディのD5300については、フルサイズには劣るものの、ダイナミックレンジや高感度耐性はまぁまぁ

それに、APS-Cの一眼にしては、非常に軽量でコンパクト

問題はキットレンズの性能なのだが、これまで使用した感じでは、周辺の歪曲収差が大きく、テレ端付近の画像が非常に眠いという印象をもっている

MTF曲線を見る限り、テレ端の性能は良好だし、ネットでの評判は非常に高いレンズなので、私の感想は気のせいなのか確かめたくなった

このキットレンズは、非常にコンパクトで軽量なので、登山用レンズにはもってこい

テレ端でクローズアップレンズNo.3を使用すれば、撮影倍率は0.5倍程度確保できるので、なんとか野草の撮影にも対応できる

この組み合わせで、そこそこの画質が得られるのであれば、登山時の疲労を軽減できるのではないかと考えた


という事で、このキットレンズの性能を評価する為、新聞の株式欄を撮影し、24mm単焦点と比較してみた

キットレンズのAF-S DX NIKKOR 18-55mm f/3.5-5.6G VR II


フルサイズ用の単焦点と比較するのは、あまりに酷かもしれないが、まぁいいか

撮影条件は、新聞の株式欄を焦点距離の22倍の距離から撮影し、同条件で撮影した24mm単焦点と比較する

なぜ焦点距離の22倍かというと、解像度の評価で用いられる条件らしいからだ

比較に使用したAF-S NIKKOR 24mm f/1.8G ED
かなり評価の高い単焦点レンズ


絞り以外の条件を同一とする為、スピードライトで天井バウンスを行い光量を確保し、シャッタースピードは1/60 ISOは400で統一した

また、当然三脚とレリーズを使用

画像はRAWファイルをLightroomに取り込み、Adobeカラープロファイルを適用しただけ

レンズプロファイルも適用していない

ボディはNIKON D5300
もう10万ショットをゆうに越え、老朽化しているのです



キットレンズの画像評価

①絞り開放で撮影し、画像中央を等倍に拡大したもの
※画像をクリックすると拡大します



おや、24mm単焦点より解像しているように見える!
画像を8倍に拡大してみよう
※画像をクリックすると拡大します



単焦点レンズは色収差が出ているのかな? 滲んで見える
やっぱりAF-S DX NIKKOR 18-55mm f/3.5-5.6G VR IIの方が解像感がある

両者開放といっても、実際のF値はキットレンズ3.5に対して24mm単焦点は1.8
その明るさは約2段も違うところでの比較なのだ
つまり、同じ開放でも、24mm単焦点は4倍も明るい
やはり恐るべし単焦点レンズ

②同じく絞り開放で、画像周辺を等倍に拡大したもの
※画像をクリックすると拡大します



絞り開放では、周辺減光が顕著で、暗い画像となってしまった
予想通り、キットレンズは全く解像しておらず、歪曲収差が酷い
ただし、24mm単焦点はフルサイズ用なので、周辺の収差の大きい部分を切り捨てている事を考慮しなければならない

③f8.0まで絞り、画像中央を等倍に拡大したもの
先ずは、画像中央部
※画像をクリックすると拡大します



f8.0まで絞ると、単焦点の色収差も消え、解像感はほぼ互角

④f8.0まで絞り、画像周辺を等倍に拡大したもの
※画像をクリックすると拡大します



やはり単焦点と比較すると見劣りするが、大健闘
なぜなら、先程述べたように、24mm単焦点はフルサイズ用なので、周辺の収差の大きい部分を切り捨てているので、割り引いて考える必要があるのだから


ここまでのまとめ
ワイド端におけるAF-S DX NIKKOR 18-55mm f/3.5-5.6G VR IIの性能は、画像中央部ではAF-S NIKKOR 24mm f/1.8G EDに匹敵する

画像周辺部の歪曲収差、解像性はAF-S NIKKOR 24mm f/1.8G EDと比較して劣る

ただし、f8.0程度に絞れば、かなり改善が見られ、AF-S NIKKOR 24mm f/1.8G EDとの比較から、かなり能力は高いと考えられる

だが、ここまではあくまでワイド端(18mm)での評価

問題はズームした場合の画像なのだ


1.絞り開放にて、ワイド端とテレ端の比較

ワイド端は焦点距離の22倍の位置で撮影したが、テレ端の場合はワイド端と撮影範囲がほぼ一致する距離で撮影を行った

そうしないと、正確な評価ができないからだ

①画像中央部の等倍画像
※画像をクリックすると拡大します



実写時の印象通り、テレ端の画像はとにかく眠い

8倍に拡大して確認すると、解像が著しく劣るような印象はないのだが・・・

参考までに、Lightroomでテレ端の画像のホワイトバランスと露出をワイド端と合わせた上で、コントラストと明瞭度を調整してみた
※画像をクリックすると拡大します



コントラストを+20 明瞭度を+30まで上げると、ほぼワイド端と同等の解像感が得られた

②画像周辺部の等倍画像
※画像をクリックすると拡大します



テレ端はワイド端に比べ、解像度、歪曲収差とも明らかに勝る

2.f8.0まで絞って、ワイド端とテレ端の比較

①画像中央部の等倍画像
※画像をクリックすると拡大します



やはり、テレ端はワイド端に比べ、眠い

②画像周辺部の等倍画像
※画像をクリックすると拡大します



テレ端はワイド端に比べ、眠いが、8倍に拡大してみると、ワイド端は色収差が大きく出ている

また、歪曲収差はテレ端の方が優れている

【結論】
AF-S DX NIKKOR 18-55mm f/3.5-5.6G VR IIは安価なキットレンズにしては、解像感に優れ、画像中央部の性能は単焦点レンズに迫るもの

画像周辺部の画質に関しても、f8.0程度に絞れば、十分な性能を有しているといえる

だが、ズームした場合の画像に関して、実写の印象どおり眠く、解像感が十分ではない

歪曲収差に関しては、当然テレ端の方が優れている

テレ端の解像感に関しては現像時のコントラスト、明瞭度の調整で対応可能であるが、レタッチ耐性に劣るのは痛い

結論としては、構図の自由度は制限されるが、解像感の悪化するズーム使用を止め、ワイド端をメインに使用する事にする

またその際、周辺画質の悪化を避ける為、f8.0程度まで絞って使用する方が懸命であろう

テレ端を使用せざるを得ないマクロ撮影においては、キレを求めるのは難しいと思われるので、割り切って使用するしかないであろう

という事で、ワイド端において明るい場所で、風景をメインに撮影する分には十分であろうが、暗い林内等での撮影や、野草のマクロ撮影では割り切りが必要だと考えられる


尚、今回のテストで一つ注意しなければならない事は、像面湾曲の影響が除外されている事である

素人の簡易なテストにおいて、撮影チャートの平面とカメラのセンサー面の平行を正確に取る事は不可能である

その為、画像周辺を評価するにあたり、本来画像中心部でピントをあわせた上で周辺の画像を評価するべきであるが、前述の如く、チャートとセンサーの平行が正確にとれない為、画像周辺部のピントズレの影響が懸念される

よって、今回は画像周辺部を評価するにあたり、画像中心部ではなく、画像周辺部でピント調整を行っている

この事で像面湾曲の影響が排除され、画像周辺部において正確なレンズの評価とはなっていない


MTF曲線はこんな感じ

※画像をクリックすると拡大します



数値だけ見てみると、ワイド端よりテレ端の解像感が高く思えるのだが・・・

私のレンズ、ひょっとしてハズレを引いてしまったのかな?

それとも、岩にぶつけたり、落としたりした際、精度に狂いが生じたのか?

それはなんとも検証のしようがない


ついでに実写サンプルを比較してみよう

以下の風景をAF-S NIKKOR 24mm f/1.8G EDとAF-S DX NIKKOR 18-55mm f/3.5-5.6G VR IIでそれぞれ撮影し、画像の中央と左下部分を比較してみよう


尚、AF-S DX NIKKOR 18-55mm f/3.5-5.6G VR IIは焦点距離を24mmに合わせてある

①f4.5画像中央 
※画像をクリックすると拡大します



②f4.5画像周辺
※画像をクリックすると拡大します



③f8.0画像中央
※画像をクリックすると拡大します



④f8.0画像周辺
※画像をクリックすると拡大します



⑤13.0画像中央
※画像をクリックすると拡大します



⑥13.0画像周辺
※画像をクリックすると拡大します



いずれもAF-S NIKKOR 24mm f/1.8G EDの優位性が確認できるが、あくまで等倍まで拡大して見た場合の比較なので、実際小さなパソコン・モニターで鑑賞する程度であれば、AF-S DX NIKKOR 18-55mm f/3.5-5.6G VR IIでも十分な画像かもしれない

絞りは、f4.5よりf8.0に絞った方が解像するが、f13まで絞ると回析の影響なのか? 解像が若干低下するようだ

⑦f8.0 vs f13.0 画像中央
※画像をクリックすると拡大します



⑧f8.0 vs f13.0 画像周辺
※画像をクリックすると拡大します



f8.0付近で撮影するのが懸命だろう


次に、マクロ性能の検証も行っておこう

AF-S DX NIKKOR 18-55mm f/3.5-5.6G VR IIにケンコーACクローズアップレンズNO.3を装着し、最短撮影距離付近で新聞の株式欄を撮影

比較はTAMRON SP AF60mm F/2 Di II LD [IF] MACRO 1:1 撮影範囲が上記と一致する距離から撮影し比較する

三脚、レリーズを使用し、スピードライトで天井バウンス

シャッタースピードは1/60 ISOは400で統一

①絞り開放での比較
撮影画像を等倍に拡大しています
※画像をクリックすると拡大します


※誤)テレ端(18mm) → 正)テレ端(55mm)

実力の差は明らかで、TAMRON SP AF60mm F/2 Di II LD [IF] MACRO 1:1はきっちり解像している

②f8.0まで絞って比較
撮影画像を等倍に拡大しています
※画像をクリックすると拡大します


※テレ端(18mm) → テレ端(55mm)

TAMRON SP AF60mm F/2 Di II LD [IF] MACRO 1:1は紙の繊維1本までくっきりと解像していて、等倍まで拡大しているとは思えない画像

この画像と比較されるとさすがに可愛そうな感じである

AF-S DX NIKKOR 18-55mm f/3.5-5.6G VR IIでも、小さめのモニターで鑑賞する程度では十分な画像なのかもしれない

この大きな差は、マクロレンズの性能もさることながら、ズームレンズのテレ端でのコントラスト低下、ACクローズアップレンズの光学性能、それに無限遠で収差を最適化しているズームレンズは近接の収差が比較的多い事等が原因ではないのだろうか?

一応最大撮影倍率の測定も行っておく


AF-S DX NIKKOR 18-55mm f/3.5-5.6G VR II + ACクローズアップレンズNO.3の最短撮影距離で金尺を撮影

横幅23.6mmのAPS-Cセンサーに約46mm分の目盛りが入っているので

最大撮影倍率は 23.6 / 46 = 0.513倍 という事になる

ハーフマクロレンズ相当という事だ