to Heart

~その時がくるまでのひとりごと

オール・ザ・キングスメン

2007-04-20 14:54:35 | the cinema (ア行)
          
            善は、悪からも生まれる。
製作年度 2006
製作国・地域 アメリカ
監督 スティーヴン・ザイリアン
音楽 ジェームズ・ホーナー
出演 ショーン・ペン/ジュード・ロウ/アンソニー・ホプキンス/ケイト・ウィンスレット/マーク・ラファロ/パトリシア・クラークソン

1949年、ルイジアナ州メーソン市を舞台に、
のちに時の大統領から“最も危険な男”と言われた、叩き上げの政治家ウィリー・スターク(ショーン・ペン)と、彼に興味を惹かれる上流階級出身のジャーナリスト、ジャック・バーデン(ジュード・ロウ)の物語。

群の出納官で実直だったウィリーは、不正糾弾を契機として州知事への当選を見事果たすが、やがて彼自身も汚職やわいろなどに手を染め始める。
一方のジャックは、貧しい民衆を前に堂々たる演説のウィリーに興味をもち記事にするが、結果的に後押しをすることになり、裕福層を敵にしたとしてクロニクル紙を辞めることに・・・。

ショーン・ペンの演技は、観る者を飽きさせない。
民衆を魅了するカリスマ的政治家の顔。だらしなく女を見つめる一人の好色家の顔。激昂する下品な策略家の顔。
長台詞でまくしたてるシーンの連続なのだが、その迫力は凄い!

しかし、この映画はジュード・ロウの目線で語られていくので、とにかく彼がカッコイイ
壁にもたれて立っていても、ベッドにひっくり返っていても、なにもしゃべらずニヤついていても(笑)
初恋のアン(ケイト・ウィンスレット)との関係ではハッキリしないヘタレなのに、二人のシーンはひと頃のフランス映画のような素敵な雰囲気がある
彼の名づけ親の判事(アンソニー・ホプキンス)とのシーンでは可愛い~とさえ思う(笑)

とくに後半部分は、ジャックを取り巻く人間関係を中心にドラマが展開され、その複雑さを理解しようと字幕を追っていくので
真ん中、後ろ寄りの席だったにも拘らず、首の辺りが疲れてしまった。

とはいえ、政治に終始しているだけではなく、人間ドラマとしての見ごたえも十分の作品だといえるのではないかと思う。
嵐のように人を巻き込みながら、自らも飲み込まれ溺れていくタイプの男。
常にその傍らにいながら、傍観者でいられると思いつつも協力していく抗えない男。
育った環境も性格も信念も、全く違うこの二人の出会い―それは本人だけでなく、周りの人達の人生も影響を受ける・・・

結局、失った物の大きさに比べ、ジャックの得たものは何だったのか―
ひとは自分の人生の傍観者にはなれない、という事ではないか・・・。