to Heart

~その時がくるまでのひとりごと

夕凪の街 桜の国

2007-08-06 02:39:45 | the cinema (マ・ヤ行)
製作年度 2007年
上映時間 118分
監督 佐々部清
出演 田中麗奈/麻生久美子/藤村志保/堺正章/吉沢悠/中越典子

昭和33年広島、皆実(麻生久美子)は同僚の打越(吉沢悠)から求愛されるが、彼女は被爆した心の傷と、自分が生き残った罪悪感に苦しんでいた。やがて、皆実に原爆症の症状が現れ始める。半世紀後、皆実の弟の旭(堺正章)は家族に黙って広島へ向い、父を心配した七波(田中麗奈)は、後を追う内に家族のルーツを見つめ直す。 (シネマトゥデイ)

                 
『夕凪の街』
原爆投下から13年後の広島
雨漏りのするバラックの家でミシンを踏む母と暮らす平野皆実は倹約家
水戸の親戚の家に疎開したまま養子になった弟、旭に会いに母を連れて行くため
ちいさな建築会社に勤めながら倹しく生きていている。
そんな彼女を襲う13年前の記憶―何処からか聞こえる自分を呼ぶ苦しげな妹の声

彼女は思っている
―わたしはこちら側に居ていいのだろうか・・・
―この街の人たちは、皆どこかヘンだ・・・
生き残ったひとたちはみんな、あの日のことを語らない。
身体にもこころにも酷い傷を抱えながら。

誰かに聞いてもらいたかったこころの叫びを、同僚であり、想いを寄せる打越に伝え
初めて安堵する。
「生きとってくれて、ありがとう」


                 
『桜の国』
それから50年後、平成19年の東京
皆実の弟旭は家族に黙って家を出る。
その後をつける娘の七波は、偶然会った幼馴染の東子とともに広島まで行く事になる。

父の足跡をみつめながら七波は思う。
―東子には遇いたくなかった
―どんなにつらいことがあっても、前を向いて生きてかなきゃいけないのはみんな同じ

いつか目を背け、忘れたフリをしてきた祖母の事、母親の死の原因。
そして、自分も弟も、その血を受け継いでいる子供なのだということ。

そして、物語は終っていない――

そう、これはとても静かな反戦の映画、反核の映画。
そして、その時広島に生きていた全ての家族の悲劇を知る物語。
『夕凪の街』のキャストはよかったです。
おそらく、復帰後、直ぐの作品になる吉沢悠くんの昭和っぽさ。
凛とした中にも儚さを感じさせる麻生久美子さん。
彼女のセリフが、短いけど、ひとつひとつが哀しい。こころに刺さります。

『桜の国』への導入部分にも違和感がなく、田中麗奈ちゃんが達者なところをみせています。
セリフが少ないのでほとんどその佇まいと表情で、さばさばとしていながらも屈託のある現代女性を自然にみせていました。

どこかで、今なお苦しんであるいは亡くなっている被爆者や家族のことを思い出させ、
伝えてくれる、大切な物語だと思います。