夫はどこへ行くにもカメラを持参しては、風景やそこに居合わせた人達を撮っていた。
旅先で見知らぬ人から声をかけられ、カメラに向かって微笑む人々。
了解を得て、氏名や住所を聞いて、出来上がった写真を送ったりもしていたようだ。
個人情報に厳しい今では考えられない事だ。
いや、しかし、お父さん、整理している私は大変よ。
多分、定年してからのんびりと整理しようと思っていたのね、きっと。
疲れちゃって散歩に出て空を見たら、刷毛ではいたような雲。
夫が写した38年前の霧ヶ峰高原の夏空。夫が空だけを撮るのは珍しい。