水耕栽培による家庭菜園日誌

屋上での水耕栽培・人工光源を使った室内水耕栽培および屋外での有機水耕栽培に取り組んでいます。

ティラピア養殖と有機水耕栽培1(H22.8.3~9.15)

2010年09月15日 | 有機水耕栽培
●はじめに
インターネットで水耕栽培を調べているとアメリカでOrganic hydroponic systems という名称でNelson and Pade, Inc.という会社が有機水耕栽培装置を販売しているのを発見。(参照 http://www.organichydroponicsystems.com/) このシステムは魚の糞をバクテリアの作用で有機肥料に変換して野菜を水耕栽培で育てるという栽培方法で同時に魚の養殖も行う一石二鳥を狙ったシステムです。これは大変ユニークな方法のようですがわが国でも鮒を水田に放流してお米の有機栽培を行っている事例もあり共に安全安心な食物の育てる有機栽培法として注目に値すると思います。そこでこの手法を拝借してレタス栽培ができないかトライしてみたいと思います。魚についてはNelson & Pade社の写真から判断してテラピラのようなのでインターネットで調べると熊本の業者が販売しているのを発見。30匹ほど稚魚を分けてもらって飼育することにしました。
   
Melson & Pade社のデモキットとファミリーキット

◆デモキットは100㍑水槽が4台と120×180cmの水耕栽培床で構成、ファミリーキットは400㍑水槽4台と120×180cm水耕栽培床5台で構成され春から秋までの1年でデモキットで魚が50kg、キャベツのような大型レタスが600株、ファミリーキットで魚220kg、レタス2600株収穫可能とのこと。
 

●写真と説明から判断して下図のような構造かと思います。養魚水槽が4台とバクテリア分解槽およびガス抜きタンクと栽培床から構成されているようです。糞やえさの食べ残しは養魚水槽のドレン部分でフィルターを通して回収しているようです。ガス抜きは完全に分解し切れなかったアンモニアガスを空中に放出するためのものなのか、またその構造はどうなっているのか良く分かりません。


●装置の製作
Nelson & Pade社の商品構成から判断して養魚水槽の容量と水耕栽培槽の容量がほぼ等しいということですが飼育魚数が記載されている収穫量から判明してデモキットで4,50匹のようなのでとりあえず180㍑の養魚水槽を購入してテラピア20匹を購入して飼育しようと思いましたが現在17匹とのことなのでこれを購入し取り掛かることにしました。後の装置としては60リットルトロ舟2台をレタス栽培用に使用します。有機物分解槽は適当な容器にフィルターを入れバクテリアも使って分解するようにします。

今年は初めてなので室内水耕で取り組んでみます。魚の量も様子を見ながら増減させていきます。来年は水温が20℃以上に上がる5月から11月の間に屋上で行う予定ですがそのためにも今年は夏から秋にかけての時期ですがテラピアの糞がうまく分解されてレタスの肥料として機能するか、レタスがうまく栽培できるかにポイントをおいて実験したいとおもいます。テラピアは20度以上の水温が必要なようですので冬場は熱帯魚用のヒーターで水温を管理することになります。

■問題点 ただインターネットを見た中で最も重要な点であると思うのですが装置の中のフィルタータンクの詳細が分からないことです。ろ過・無機化・ガス抜きを行うタンクがどのようになっているのかということですがこの装置が正にこのシステムの心臓部であるわけですからこれが分からないとうまくいかないことになります。
The individual filter tanks (clarifier, mineralization and degassing) demonstrate all of the scientific principles of aquaponics, make operation easier and increase productivity.

フィルターは備品にフィルタースクリーンとあるのでろ過フィルターを使っているのですがどのようなフィルターなのかは分かりません。次の無機化はバクテリアによる糞の分解(無機化)を意味しているのでしょう。ガス抜きdegassingタンクはどういうことでしょうか。その構造も良く分かりません。また魚が大きく育ちますので大量に放出される糞尿をどのように効率よく分解しているのかが不明です。バクテリアを使ったろ過フィルターで簡単に即効的に大量に分解することはなかなか難しいと思うのですが。考えられることは有機肥料による養液栽培技術を開発された野菜茶業研究所の解説にあるような「投入した有機物を速やかに分解する微生物生態系」といえる分解タンクを作っているのでしょうか。
この辺はトライしながら検証するしかありません。


●飼育の開始
8月4日 装置完成 水はり、カルキ抜きを行う
8月6日 テラピア17匹が入荷しましたが3cm~5cmとかなり小さいのでもう20匹位は放流しないと糞の量が足りないのでは。

 
 

8月12日 テラピアの状態です。まだ体長が3~5cm位ですので金魚のえさを与えてまず大きくすることです。食欲が旺盛なので成長も早いことでしょう。


8月17日 追加注文したテラピアが10匹入荷。早速水槽に入れるが前回のテラピアが如何に大きくなったかが一目瞭然。食欲がすごいので大きくなっても当然ですが。
EC値を測定するとまだ0.4である。これではまだ肥料不足なのでせめて0.8になってからレタスを植えつけようと思います。それまではしっかりえさをやって魚を大きくします。

8月23日 テラピアも飼育後2週間ほどになりかなり大きくなってきていますがまだ糞の量も少ない。この状態ではまだ糞は分解できていませんので肥料としては役立ちませんがとりあえず栽培床にチシャを20株ほど定植しました。
 

●装置の問題点と改善
8月26日 かなりの糞がたまってきたのでそろそろバクテリアを入れて効率よく分解させるフィルターが必要です。いいフィルターが無いか近くの熱帯魚屋さんに相談。水槽はベアなので大型のエーハイムのフィルターが要るだろうとのことですが購入するとかなり高価なようなのでそれなりのフィルターを自作することにしました。溶液も糞でかなりにごってきたので急がないと魚が死んでしまう可能性があります。

8月29日 バクテリア分解槽とガス抜き槽を自作して設置。ガス抜き槽の詳細は分からないので水中ポンプを置いて溶液吸い上げ装置とした。いずれも45㍑のゴミ箱を使用。フィルターとしてはセラミック・活性炭・ろ過粗めマット・ろ過マット白の4層で構成。水を入れ替え、バクテリアとして熱帯魚屋さんお勧めの「バイオスコール」を使用。これでうまく無機化してくれると思うのですが。養魚槽にたまる糞は定期的に網で掬い取ることにします。また対照実験として化成肥料を使っての栽培も行ってみたいと思います。装置としては下図のようになりました。養魚槽と分解槽は25mmのエスロンでつないでいるのですが水中ポンプの吸い上げに追いつかないので念のためにホースでサイフォンを作り差し込んでいます。昨日からの水の入れ替えや水中ポンプの吸い上げ量が大きすぎて養魚槽がオーバーフローして魚が外に飛び出すなどが原因で残念ながら魚が5匹ほど死にました。

 
 

8月31日 ガス抜きとフィルターが良く分からないので再度装置の解説を確認するとフィルタータンクは栽培床からの根やその他の固形物が養魚槽に流れ込まないようにするろ過装置のようです。また特別なバクテリアフィルターは要らないとも書かれています。栽培床から流れ出た溶液は最下部に取りつけた下水sumpタンクに落ちそこから水中ポンプで養魚槽へ送り出すシステムになっているようです。説明文は次の通りです。
Filter tanks
Removing the solids in raft culture allows a grower to stock the fish tanks more densely, resulting in higher production of both fish and vegetables.
Solids capture is one of the most important processes in a raft aquaponic system. If solids are not effectively removed, you will have problems with waste build-up which will cause toxicities in the water, the plumbing will become clogged with waste and the plant roots will become coated with fine solids, which reduces the plant’s ability to uptake the nutrients.

The filtration components in raft aquaponics prevent these problems and a complete system clean-out is not required in raft aquaponics. In fact, it is discouraged because it reduces the population of beneficial bacteria and disrupts the planting cycle.

One of the most critical factors in designing a clarifier for your system is the size and required rate of water flow. The flow rate has to be fast enough to meet circulation requirements of the system and yet slow enough to allow the solids to settle out.

A bio-filter is simply a place for the beneficial bacteria to colonize. These bacteria convert ammonia to nitrite and nitrite to nitrate. In raft aquaponic systems, a separate bio-filter is not usually used because the rafts, tank walls and all other surfaces in the system provide sufficient area for the bacteria.

Degassing Tank
A degassing tank is a tank which allows the release of gasses into the air.

pH Adjustment Tank
In any aquaponic system, it is sometimes necessary to adjust the pH of the water. This needs to be done slowly so the fish or plants are not shocked by a rapid change in pH. In lager systems, there is usually a separate tank where the base or acid is added in small amounts, slowly diluted and then enters the system water stream.
In smaller systems, one of the other tanks, such as the degassing tanks or the raft tanks, can be used for pH adjustment as long as accommodations are made for the slow addition of pH changing additives.

Water Pump(s) and Sump
A water pump is used to continually move the water throughout the system. In many systems, there is also a sump tank. This is the lowest point in the system. The water gravity-flows into the sump from the raft tanks. The water pump, located in or adjacent to the sump, pumps the water into the fish tanks and throughout the rest of the system. The size of the pump you use will be directly related to the size of your system.

この説明に従うと装置は次の図のようになるようです。魚の糞も養魚タンクのドレンから分解タンクに落としてそこで分解しているようです。ろ過フィルターでは魚に被害が出ないようにフィルターで浄化した後養魚タンクに送っています。次回製作時の参考にさせていただきます。


9月3日 レタスの発育状態ですが本日段階では両者に差は無いようです。
 

9月7日 やはり差が出てきました。化成肥料で育てているレタスは大きく色も濃くなってきています。
 

写真では良く分かりませんがテラピアもかなり大きくなり相変わらず食欲旺盛です。


9月9日 バクテリアの繁殖状態が良くないようなので近所の熱帯魚屋さんに相談する。まだろ過剤がきれい過ぎて十分にバクテリアによる分解が進んでいないとのこと。原因は分解槽内部でろ過剤が詰まっていないので溶液がすきまを素通りしているためとのこと。セラミック・活性炭・ろ過綿2種をきっちりと積み重ねるようにしなおす。これで1週間ほど様子を見ることに。
野菜の発育が良くないので液体肥料を少し足しても魚に影響がないかどうか尋ねると養魚槽にコケが生えないようであれば問題ないとのことなのでEC値が現在0.3なので0.6になるまで少し液体肥料を加え、魚の様子を見ることにする。
 

9月15日 完全に生育状況に差が出てきました。やはり魚の糞の量が少ないこと、完全に分解されていないことなどが原因でしょう。少し肥料を入れてこの状態ですからまだまだ無理ということです。