御守殿の硬い「滝川」がチョイ悪の「七之助」に襲われ、嫌よ嫌よも好きのうち、といった内容で、中々若手には踊りにくい日本舞踊です。やっぱりUさんくらいにならないと、、、でも普通のプラチナ世代は痛い所があったりして年寄り染みるのですが、Uさんは奇跡と言いたい位の元気さ、若さ。普段のさっぱりとした江戸っ子のUさんなのに、舞台ではぐっと色っぽくなるところが日本舞踊の良さなんですね。
地唄をお願いした間々田昇岳さんは序幕「青海波」を踊った西川正一郎さん。長い鯉男会の歴史の中でも日本舞踊を踊って、地方にもなった方は居ないです。父鯉男の元で内弟子として日本舞踊を修行し、後にお母様の後継者として筝曲の家元になられた経歴のなせる業です。賑やかな楽曲の中でじっくりと聞かせる地唄は良いものです。
鯉男会では何十年ぶりでしょうか?動きが少なく、じっと思いつめた腹芸とも言うべきものですから、大変難易度の高い日本舞踊です。京風のお座敷で上げ鬢の芸者姿でベテランのkさんが挑戦です。普段から鯉男門弟随一の上品な方ですから、ピッタリでした。
当日開幕前でないと位置調べという実際の舞台での立ち位置や花道を歩いてみるという事は出来ません。そしてそれらが済むと照明の調整です。今回お月さまを使うのはこの日本舞踊だけです。くっきりにするか、ぼやかすか照明さんとも話し合い決めました。衣装、鬘、小道具、大道具、照明、誰に地方をお願いするか、など会主のセンスが問われます。
第1回、2回と出した「秋の色種」ですが、虫の音のところが歌が無い三味線だけなので曲を良く解っていないと踊れませんし、綺麗だけれどさらりとしているので盛り上がりをつくるのが難しく、敬遠されていた演目です。難しさの割りに地味という事です。ですから独り立ちや浴衣浚いなどでは勉強になるのでよくお稽古する日本舞踊です。長唄を8年習った鯉匠にはうってつけながら、柔らかく踊るのが大変で、其の分良い勉強になったと思います。
トンボというのは前転のことです。主役が合図をするとぽーんと返ってくれます。これは普通の舞踊家は無理なので、歌舞伎の役者さんを頼みます。当然日当をはらってコストは掛かりますが、派手になり、主役がぐっと引き立ちます。今回のからみさんは若くてトンボのきれがよく尚且つ親切!こちらの振りだと二人同時に舞台でとんぼを返るところがないから、こうして増やしましょうと自ら振りを替えて返ってくれました。写真でみると二人が息を合わせて返ってくれている事がよく分かります。