曽野綾子著 ベスト新書 P113より引用
ISBN978-4-584-12295-2 762円+税
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生涯の豊かさは、どれだけこの世で
「会ったか」によって図られる。
昔、沖縄へ行く飛行機でアメリカ人
の中年女性と隣り合わせたことがあ
りました。私は何も聞かなかったの
ですが、彼女は「私には息子が二人
いる」と語り始めました。長男はマ
サチューセッツ工科大学を出た秀才
で、教授になっている。下の子は、
あまり勉強が好きではなくて成績が
悪く、軍隊へ入って、沖縄で好きな
人を見つけて結婚し、子供が生まれ
た。今日、初めてお嫁さんと孫に会
いに行くのだと、財布から息子夫婦
と孫の写真を取り出して話すのです。
印象深かったのは、彼女が二番目の
息子の事を「勉強は嫌いなんだけど
彼は人間を愛しているのよ」と褒め
たことです。日本にはない表現で、
いい言葉だなと思いました。(略)
その人の生涯が豊かであったかどう
かは、その人がどれだけこの世で「
会ったか」によって図られるように
私は感じています。(略)
何も見ず、誰にも会わず、何事にも
魂を揺さぶられることがなかったら、
その人は、人間として生きてなかっ
たことになるのではないか、という
気さえします。
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▼人生はどれだけ多くの人に出会っ
たかということでしょうか。確かに
人と出会うと何らかの影響を受ける
ことになります。その数が多いほど
その人の人生は豊かになる。もう少
し加えることがあるとすれば、沢山
経験をして優れた判断力が備わって
いて人間味豊かな人と出逢えればこ
んな幸せなことはないと思います。
人間だれしも同じようには成長しな
いもので、長い年月にはその差が実
に大きくなる。更にいえば年月は人
を待ってはくれないということでし
ようか。私自身も心して多くの人と
出会いたいものです。
こめぞう