僕は自転車(1)

2015-08-22 11:59:11 | 童話
僕は自転車、この家の男の子の自転車。

男の子のお父さんの自転車は古いが、僕は新しい。

もう一つ、お父さんのとは違うところが有る。
僕には補助輪が付いている。

男の子は頑張っているが、なかなか補助輪が外せない。

今日も補助輪を外して、お父さんと公園で練習をしている。

『お父さん、手を離さないでね。』
男の子が乗った僕がグラグラ、グラグラ。
なかなか上手くならない。

お父さんが
『下ばかり見ているからだ、もっと遠くを見ないとダメだよ。』

だけれど男の子は遠くを見ることができない。

『ほらほらっ、前を見て、遠くを見て。』
お父さんの声は聞こえるが、顔が自然に前の車輪の地面を見てしまう。